今日はコウモリ

今日、市内の方が「コウモリみたいなもの」を博物館へ持ち込まれました。
一週間ほど前に室内に入ってきて飛び回っていたものの外へ出てくれず、隠れてしまったと思ったら今朝、部屋の隅で見つかったそうです。

すでに死亡していたので、引き取らせていただくことに。
種類はアブラコウモリでした。もっとも普通に生息する種類ですが、小さな哺乳類なので標本は手に入りにくく、あまりありません。

アブラコウモリの飛膜は指の間から腕、胴、後ろ足、そして尾へとつながっています。バットマンのマントのように手で持ち上げて腕の下に伸びていると思われていますが、だいぶ違いますね。そのため、飛膜の上方に出ているのは第1指(親指)だけです。

貴重な資料が文字通り舞い込んできて、とてもラッキーな気分になりました!
(生物担当学芸員 秋山)

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蛹ならば・・

先日、カイコの幼虫期のオスメスをどう見分けるかについて書きました。
はっきり言って分かりづらかったと思います。でも、蛹になるとわりあいわかりやすくなります。
やはり最尾部を見ます。こちらがメスです。

そして、こちらがオス。縦の模様の入り方や、幼虫期のポイントだった腺がより明瞭になっているのがわかります。

と、ここまで書いておいてなんですが、大きさを見れば一目瞭然です。

左がメス、右がオスです。もちろん、栄養状態などによって大きさは左右されます。でも、同じ品種を同じタイミングで、同じ容器で育てたものであれば、大きさが逆転することはまずありません。メスはお腹に400個以上の卵を持っていますから、大きさが二回りくらい違うのです。
確実に採卵する場合は、こうして繭を切って前もって蛹を出しておきます。ちなみにこの蛹は、品種「乞食」です。
(生物担当学芸員 秋山)

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秋の里山

今日は相模原植物調査会のみなさんと、津久井方面の里山へ調査に行きました。
このところの雨と晴天の繰り返しで、キノコがいろいろと出ていましたが・・・

先日、ニュースで中毒事故があったと報道されていたテングタケです。幼菌は卵からかえったようなかわいらしいキノコなのですが、代表的な毒キノコです。
沢へ下りると、ハンミョウがいました。真夏の虫のイメージですが、まだまだ体の光沢は健在です。

コカマキリの写真を撮っていたら「んだオラァ」と睨まれました。

ヤマホトトギスが咲いていました。なんだかこの花を見ると「お嬢様」と言いたくなります。

調査を終えて森から出ると、空には高積雲の波状雲が広がっていました。

秋も深まってきました。
(生物担当学芸員 秋山)

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産んでます

一昨日羽化しだしたカイコ在来品種は、今日もぞくぞくと成虫が出ています。
小石丸を交尾させた後離しておいたら、午後遅くに産卵をはじめました。

こういうの、苦手な方には申し訳ありませんが、実際に見ているととても神秘的な光景です。

ところで今日、秋の展示準備としてこんな写真を撮影しました。これは、クワの葉です。そして、この写真は写っている葉っぱの量に意味があります。

カイコが一生で食べるクワの葉の量を表しています。だいたい25グラムと言われています。カイコを育てたことがある人は、おそらくこの写真を見て「たったこれだけ?」と思うでしょう。5齢になってからの食べる勢いからすると、少なく思えます。
もちろん、25グラムには葉柄や葉脈は含まれません(食べ残すので)。また、特に若齢期は葉のほとんどの部分を食べ残します。だから、実際にカイコ1頭あたりにあげる葉の量というと、この何倍にもなるでしょう。
カイコを飼うには、やっぱりクワの確保が一番重要な要件なのです!
(生物担当学芸員 秋山)

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え!いたの?!(クモ)

先日、博物館の前庭でヒメグモの網にかかっていたもの。どうも形が気になったのでとっておきました。
これが、後日確認してみると、なんと、マメイタイセキグモの死骸でした!

手前が頭胸部で奥側が腹部です。多分、写真では形が良くわからないとは思いますが、腹部にたくさんのこぶ状の突起があるのが特徴です。
と、言ってもピンとこない方が多いと思います。
いわゆる「投げ縄グモ」の一種で、網を張らずに粘球のついた糸を回転させてガを捕らえるという習性を持ちます。
見つかる頻度も低く「珍品」と言える種なので、まさかこんなところでお目にかかるとは思いませんでした。できれば生きている個体に会いたかった!
しばらくは博物館前の木立ちが気になって仕方がない、という事になりそうです。(学芸班 木村)

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「あれもこれも世界初!日本の太陽系探査」終了。


タイトルのとおり、7月11日から2か月以上続いた企画展が、今日が終了しました。写真は、閉館後の博物館前の看板です。
考えてみれば「はやぶさ」の帰還カプセルと「イトカワ」微粒子を同時にこれだけ長い期間展示したのも「世界初」だったわけですが、それだけにスタッフ一同、気が休まる暇がなく、正直言って「あー、こんな展示始めなきゃ良かったかなあ」と一度ならず思った事もありました。
それとはまた別に、「人類の宝」に等しい貴重な資料でも、毎日のように眺めていると、親しみに似た感情を感じてしまうものです。おこがましい、とは思いつつ、展示が終わる事に一抹のさびしさを覚えます。
しかし何より、長い期間にわたり、快く資料を提供してくださった皆さん、そして展示に足を運んでいただいた多くの皆さんには感謝しなくてはいけないと思います。ありがとうございました。

残るは撤収作業です。気を引き締めて、無事に完了しなくてはいけませんね。(学芸班 木村)

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小石丸のモフモフ

今朝、乾燥させずに残しておいた繭から小石丸の成虫が羽化していました。こちらはオスです。

手乗りカイコ!ほんとうにかわいらしいモフモフさんです。
二頭羽化していましたが、ちょうどオスメス一頭ずつでした。メスの容器を開けると、それまでおとなしく指に捕まっていたオスが突然翅をばたつかせながら動き回ります。

メスが誘引腺からフェロモンを出しているのです。オスの触覚がそれを敏感に感じ取っているのでしょう。近くに置くと・・

メスの周りをくるくるとまわり、あっと今に交尾となります。

数時間このままにしておき、午後にはそっと引き離してメスには産卵していただきます。実際に飼育してみて、小石丸は繭は小さいものの、とても元気でクワの食いつきの良い品種だということがわかりました。採卵して来年も育ててみようと思っています。
(生物担当学芸員 秋山)

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カイコ大好きミニサロン

今日は毎月恒例の「生きもの大好きミニサロン」を実施しました。
室内でじっくりカイコのお話をきいていただこうという内容でしたが、今週は運動会の学校も多いようで朝からお客さんは少なめ。人が集まるかな~と心配でしたが、お店を開いたとたんに・・

成長が遅めで最後までクワを食べているow btsを出しておいたのがよかった!やっぱり生きてモサモサ食べているカイコは人気です。

おそるおそる手に乗せてくれたお子さんもいました。

ちょうど、昨日から作り始めてまだ中が透けて見える繭もじっくり観察。

いろいろな繭や品種のお話などしたのですが、やはり金色の繭はみなさん興味深そうに見ていました。

そして、在来品種小石丸の繭と、f1雑種の大きな繭の大きさの違いにびっくり。

くびれた在来品種の繭を見て、和菓子の繭玉饅頭や繭最中の形の理由がわかったとすっきりされたようすの参加者もいました。
短い時間でしたが、カイコの魅力をお伝えできたようです。
(生物担当学芸員 秋山)

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金色の繭

先日ちらっと書いた品種「乞食」の繭がぞくぞくとできてきました。
中国大陸系の品種には黄色い繭を作るものが多く、野生原種と言われるクワコの繭も黄色です。でも、その色はレモン色くらいと表現するのが適当といえる色です。これがクワコの繭です。

「乞食」が繭をつくりはじめて、その繊維の色にちょっと驚きました。そもそも品種名が「金色(こんじき)」から転訛したというのがよくわかります(転訛の方向性はやっぱり理解できませんが・・)。

光の反射もありますが、まさに金色。作り始めてから1日経ったものが下の写真です。

薄い繭をつくる品種でもあり、雑に扱うとすぐへこみそうだし、くびれの部分が特に薄くて引っ張ると本当にちぎれてしまうそうです。
純白の繭の小石丸(右)と並べてみると、その色が際立ちます。

繭が貧弱で実用的ではなさそうですが、これはちょっとプレミアム感漂う品種です。
それにしてもこの品種名はなんとかならないものかと、ちょっと頭を抱えています。
(生物担当学芸員 秋山)

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黒いイソウロウ(クモ)

今年は博物館の前庭で色々なクモに出会います。

写真はクロマルイソウロウグモと、同じ網(既に壊れていたので何の網かは不明)で採集した卵のうです。

アップにしてもただ黒いだけ。
体長はメス3mm、オス2.5-3mm(写真はメスです)と小ぶりですが、自分では網を張らず、ヒメグモ、カグヤヒメグモなどの網に侵入、宿主を襲って食べてしまう、という習性を持ちます。

さらには、宿主の卵のうの近くに待機し、出のうしてきた子グモも平らげてしまうという極悪非道ぶりには開いた口がふさがりませんが、それも長年の進化の過程で培われた生き物のひとつのあり方ですから、肯定も否定もするものではありません。
というわけで、今一緒に写っているのは自分の卵のうではありません。
どうやら博物館の庭ではまだ見かけた事がないシロカネイソウロウグモの卵のうのようですが、こちらはジョロウグモなどの網に侵入し、餌をかすめ取るという、比較的穏やかな(?)習性のイソウロウグモの仲間ですが、どうやら最後にとんでもないやつに目をつけられてしまったようです。それにしても、敷地内にまだまだ色々な種類のクモがいそうで、今後の観察が一層楽しみになってきました。(学芸班 木村)

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