繭繭繭

交雑品種は一部の成長の遅い品種をのぞいてすっかり繭になりました。

日本鳥学会へ参加する前に「まぶし(繭をつくらせる格子状の道具)」に移しておいたものはすっかりこんな感じに。
興味深いのは、交雑品種は楕円体の繭をつくるものと、くびれ繭をつくるものが混じることです。そして、やはり繭自体が少し大きめです。

日本在来原種としては珍しく黄色い繭をつくる品種乞食も、もうすぐ繭になりそうです。違った色合いの繭ができるのが今から楽しみです。
(生物担当学芸員 秋山)

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緑色のヒメグモ

博物館前の茂みをガサゴソしていたら、小さな緑色のクモ。
「おっ、これはもしや越冬前のアオオニグモ幼体か?生態解明か!?」
と色めきたって採取してみると…

何か違います。オニグモ科ですらありません。

実はこれ、以前にも紹介したヒメグモ(ニホンヒメグモ)です玉のような夫婦(クモ)
アオバハゴロモのような緑色の餌を食べると、体色が緑色っぽくなるという報告はあるのですが…これ、いくらなんでも緑が濃すぎます。

因みにヒメグモのノーマルな色はこんな感じです。

探したら近くにも緑色のやつがいました。一体、何を食べてるんでしょう?ぜひ現場を押さえたいものです。(学芸班 木村)

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月に因んだ名前のクモ

今年は9月27日が「中秋の名月」。それに因んでというわけではないのですが、今日見かけたのは「カグヤヒメグモ」。
メス4.5-5.5mm、オス2.3-3mm。平地から山地まで住む、比較的普通の種ですが、ちょうど今の時期、木の葉の裏で卵のうをガードしているのが見られます。

卵のうと母グモ。

館内に来ていただいて白撮影。
やや地味なので、オオヒメグモと間違えやすいのですが、どことなくやさしいイメージがあります。
それでこんな名前がついたのでしょうか。好きなクモの和名のひとつです。(学芸班 木村)

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日本鳥学会2015年度大会

今、日本鳥学会2015年度大会参加のために兵庫県立大学神戸商科キャンパスに来ています。

コンパクトながらとても落ち着いた良い環境のキャンパスです。
口頭発表、ポスター発表と日本の鳥類学の最先端研究がひしめいてとても強い刺激を受けることができます。そんな中、今日は高校生によるフレッシュな発表を重点的に聴くことにしました。こちらは、スズメが砂を摂食することの意味に興味を持ち、中学生の頃から研究を始めた生徒さんの発表です。

糞内容物の分析に加えて、近くの博物館で鳥の解剖や剥製作りをするグループに属して筋胃内の砂粒も調べたとのこと。私たち動物標本クラブの活動ともダブります。
総会の前には高校生の発表14組へ奨励の表彰が行われました。必ずや、大学生になってもこの学会へ戻ってくる生徒さんがいるはずです。

「学びの収穫祭」もがんばろうと決意あらたにしました。
今日の午後は学会記念シンポジウム「官民学の連携によるコウノトリ野生復帰事業の推進」が行われました。

地元豊岡市から全国へ広がりつつあるコウノトリ野生復帰も試験放鳥から10年が経ちました。おりしも千葉県野田市で放鳥された個体が神奈川県内へ移動しているという情報も入っていて、興味深く聴きました。そして、やっぱりこうした保全事業は地元がどれだけやる気になるか、ということがキーワードでした。
大会は明日までです。たくさんディスカッションして、いっぱい情報を仕入れて帰ろうと思います。
(生物担当学芸員 秋山)

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オス?メス?

先日、カイコの授業に行った田名北小の生徒さんから質問が来ました。
「ボクが育てているカイコはオスですか?メスですか?」
恐れていた質問です。じつは、カイコの幼虫期の雌雄の見分け方はとても難しい。終齢になるとだいぶ見やすくなりますが、はっきりしない個体も多くてとてわかりにくいのです。
いちおう、見分け方は最尾部の腹側を見ることになっています。下の写真はオスです。

こちらがメス。尾脚の形は閉じているか開いているかの違いで雌雄とは関係ありません。

さっぱりわかりませんね。識別点に矢印を入れてみました。こちらがオスです。真ん中のくぼみの奥に腺が見えます。

こちらがメスです。くぼみには腺がなくて、そのまわりに4つの腺があります。

どちらの腺もはっきり見えない個体がいて、迷います。蛹になると同じ部分の模様で比較的わかりやすいのですが、蛹は繭の中です。羽化させて採卵する場合は繭を開いて確かめておきますが・・。
さらに言うと、カイコに尾部の腹側を見せてもらうのも至難の業です。そもそもこういう姿勢をとてもいやがるので、じっくり観察できません。接写機能の優れたデジタルカメラが出てきて、だいぶわかりやすくなりました。
(生物担当学芸員 秋山)

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頭も赤い!

先日ご紹介したカイコ在来品種の変異系遺伝子を持つow btsも、ほかの品種や交雑品種と比べるとちょっと成長が遅めですが、立派に終齢(5齢)を迎えました。
おもしろいのが、脱皮するたびに眼状紋や三日月紋が薄くなり、とうとう終齢ではほとんど見えなくなってしまいました。

そして今更気付いたのですが、頭が硬化した最尾部と同じような赤茶色であることです。通常はベージュなので、両端が赤っぽいなんとも不思議な姿です。さらに体は蝋質の半透明。つくづく、おもしろい姿です。

こちらは交雑品種の熟蚕(繭を作り始める状態のカイコ)です。owの蝋質の半透明とは違って、飴色の半透明です。

次々と繭を作り始めています。春蚕のf1とは大きさでは比べようもありませんが、かわいらしいくびれ繭がたくさんできそうです。
(生物担当学芸員 秋山)

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多摩川の河原を歩く

今日は相模原植物調査会の野外調査会でしたが、いつもとちょっと趣向を変えて、多摩川の河原の植物と植生を観察しに行きました。

私たちの主要なフィールである相模川中上流に一番近い地域を流れる大河川なので、相違点などを知ることは大切です。時折こうして他地域へ行ってみるようにしています。
小田急線和泉多摩川駅から歩いてすぐの左岸(狛江市)は、昭和49年の大水害の現場です。

名作テレビドラマ「岸辺のアルバム」(山田太一脚本)のモデルとなり、社会に大きな衝撃を与えた水害でしたが、今は「多摩川決壊の碑」が静かに事件の記憶をとどめています。
さて、やはり大都市に隣接した河川です。数多くの外来植物を観察しました。でも、相模川ではまだ見られていないもの、数がとても少ないものがあり、みなさんとても興味深そうに歩き回りました。写真はヒメクマツヅラです。県内ではまだ多摩川以外の河原で見つかっておらず、相模川では見られない外来植物です。

こちらは時折市内の相模川でも見られる外来植物ヤノネボンテンカです。

外来種ではありませんが、左のカヤツリグサのなかまはカンエンガヤツリです。相模川にはなぜか分布していない植物です。右は外来種のメリケンガヤツリで、ご丁寧に並んで咲いていました。

晴天であればバテてしまったのではないかと思いますが、幸いにも雨にはならない程度の曇り空、たくさん歩いて帰途につきました。そして、相模川とは微妙に異なる植物のようす、とても参考になりました。
(生物担当学芸員 秋山)

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博物館実習、終了

昨日、歴史分野と民俗分野の博物館実習生も展示を完成させました。

パソコンで原稿を作成し、プリントアウトしたものを糊付きスチレンボードに貼って、解説パネルを作りました。

解説パネルを移動式展示ボードに虫ピンで打ち付けて完成です。展示ボードの場所によっては全くピンを打ち込むことができず、悪戦苦闘しながら展示を完成させました。

博物館実習生の展示は自然歴史展示室の出口の前にあります。博物館にお立ち寄りの際は、ぜひ、ご覧ください。

これで今年度の博物館実習は全て終了しました。

実習自体は終わりましたが、これから、実習生の所属する大学へ書類を発送する業務が残っています。

(地質担当学芸員 河尻)

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ゴマダラチョウ


今朝見かけた蝶。ゴマダラチョウです。
幼虫はエノキを食べるので、先日紹介した外来種、アカボシゴマダラの影響が懸念されている種ですが、博物館周辺では時々見かけます。

全身白黒で地味なのかと思いきや、複眼と口吻が黄色くて、なかなかカッコイイです。
蝶って意外にメカっぽいな、と時々思います。(学芸班 木村)

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カイコの授業 1年生

今日は市内の田名北小学校へカイコの授業に行ってきました。今回はなんと1年生の授業です。
博物館で在来品種を育てていることを人づてできいたカイコ好きの先生から熱望され、一方で博物館ではちょっと手に余る数を育てていたのでこれ幸いとご提供し、授業も、ということになりました。

1年生なので、カイコという生きものに興味を持ってもらうようカイコのかわいらしさや、ふしぎな性質などを中心にお話ししました。また、食べるクワの葉の形のおもしろさなど取り入れたのですが、ちょっと難しいかなと思いきや、そんな心配は無用でした。1本の木から採集したさまざまな形の葉っぱをラミネート加工したものを見せると、「えーーっ!」「うっそーーっ!」とすばらしいリアクション。

それから、上の学年になるにつれて増える「虫は絶対ニガテ」という自我がまだあまりないせいか、成虫の写真のかわいらしさに目がハートマークになっている子がたくさんいたのが印象的でした。
授業終了後に、自分が担当しているカイコのことが心配で質問に来てくれた生徒さんもいました。

こちらが想像していたよりもはるかによく内容を吸収してくれたようで、楽しく充実した授業になりました。
ところで、博物館の小石丸、ぞくぞくと繭をつくりはじめています。これぞ、真正の「くびれ繭」です!

まだまだモリモリ食べている交雑品種もいて、クワの葉の調達とまぶしの用意などで大忙しです。
(生物担当学芸員 秋山)

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