もうすぐ繭

今日は休館日ですが、カイコに休みはありません。8月下旬から育ててきた小石丸やそのほかの在来原種のカイコも5齢になり、まもなく熟蚕になりそうです。
からだがなんとなく透き通りはじめてきました。

ところで、ちょっと遅れて育て始めた品種に乞食というのがいます。なんとも書くのが憚られるような名前ですが、品種名なのでしかたがありません。
この品種は黄色いくびれ繭をつくるそうです。中国原産品種には黄色い繭が多いのですが、在来品種では珍しいですね。その色を「金色(こんじき)」としたところから転訛したそうですが、なにもそんな名前に転訛しなくても・・と思います。そして、中国原産品種には眼状紋のない、いわゆる「姫蚕(ひめこ)」が多いのですが、この乞食も姫蚕です。

全体的に色も少し黄色っぽい感じがします。
一方で、小石丸×青熟という交雑品種も育てていますが、こちらは眼状紋も三日月紋(背中に出る三日月形の紋)もとてもはっきりしています。眼状紋は原種のクワコそっくりです。

カイコを育てていると、いろいろと小さな発見の連続です。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: オカイコサマ | もうすぐ繭 はコメントを受け付けていません

葉っぱかと思ったら…

博物館の前で「なんか良い被写体(この場合、ほぼクモを意味します)はいないかなあ、と木の枝を眺めていた時、ちょっと変な感じの葉がありました。
ちょっとじゃまだったので、つまもうとしたとたん…飛びました。
正体はこれ。

クツワムシです。体が大きいので、目の前で飛んだ瞬間はかなりびっくりしました。
絶妙な擬態なので、どうせなら隠れている姿を写真に撮りたいものですが、次に出会っても多分、気づかないだろうなあ、と思います。

こちらはワカバグモの幼体。うん、これならすぐわかります。探す時の目の使い方も違うのかも知れませんね。(学芸班 木村)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 葉っぱかと思ったら… はコメントを受け付けていません

宇宙のワクワクを思い出しました

今日は「宇宙ってすごい! 宇宙の“なぞ”と“ふしぎ”のおはなし」(中央地区 宇宙教室実行委員会「子どもと大人共に学ぶ宇宙教室」公開講座)を開催しました。

講師はJAXA宇宙科学研究所の大川拓也さん。

子どもたちに積極的に参加してもらうため、お題を予め用意して、その中からいくつか選んでもらいました。

参加者と対話しながらの進行です。

有名な「ドレイクの方程式」を使って、宇宙人と交信できる可能性の説明。

子どもたちにブラックホールの絵を描いてもらっているところ。

様々な話題を色々な方法で説明してくださるので、あっという間に、講演時間の1時間30分が経過してしまいました。
こんなふうに「基礎的だけれどどこにもまとめて書いてない話」をわかりやすく説明してもらう機会はとても貴重だと思います。私も久しぶりに宇宙にワクワクした子どもの頃を思い出しました。

大川さんのお話は、来月も聞く機会があります。今度はプラネタリウムで見る宇宙の姿&天体望遠鏡で星空観察。次回も中央地区 宇宙教室実行委員会「子どもと大人共に学ぶ宇宙教室」の公開講座という形で開催します。事前申し込み制ですが、ぜひご参加ください。(学芸班 木村)

カテゴリー: 今日の博物館 | 宇宙のワクワクを思い出しました はコメントを受け付けていません

マルバアサガオ

ヒルガオ科のご紹介もクライマックスに近づいてきました!(勝手に盛り上がっていますが・・)
今回はマルバアサガオです。

あれ?これアサガオ!?
そうなんです。本種に限らずアサガオのなかまで時折見られる「切れ咲き」という変化咲きの一種で、栽培下でもよく見られます。たいてい、付近の花がまとまってこんなふうに変化しています。

アサガオは江戸時代から断続的に大ブームが巻き起こっている園芸植物です。今、入谷の朝顔まつり(朝顔市)は比較的オーソドックスな鉢植えの販売が中心ですが、かつて、地元の栽培業者が競ってこうした変化朝顔を高値で取引していたそうです。
ちなみに、上の写真のような切れ咲きなどは変化朝顔の初歩の初歩で、珍しくもなんともありません。本格的なものになると幾重にも変化が重なり、ほとんどアサガオの原型をとどめていないようなものもあります。
さて、横道にそれましたが、オーソドックスなマルバアサガオはこちらです。

西洋系のアサガオとして園芸用に持ち込まれたものと考えられていますが、野外で雑草化しているのもよく見られます。名前がマルバアメリカアサガオと紛らわしいのですが、やっぱりここは萼片の形を見てみると・・

短く切れた萼片と、何よりこの独特の色合いが特徴です。

紅色から濃い青、紫までバリエーションがありますが、いずれも濃厚な色合いに曜(花弁に放射状に入る5本の筋)が同系色で妖しい雰囲気を醸し出しています。秋咲きで、10月下旬まで花を楽しめます。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | マルバアサガオ はコメントを受け付けていません

大雨のあとの河原

今週降り続いた雨の影響、特にカワラノギクの保全圃場のようすを見に、相模川の河原へ行ってきました。
河原へ下りる道にはヒガンバナが咲き始めていました。

河原が一面冠水したものと思って行ったのですが、あまり増水しなかったようです。上流のダムの放水量がそれほど多くなかったということでしょう。

水際の一部がまだ水に浸かっていたものの、高水敷は流れの痕もなく先週までとほとんど変化がありませんでした。

カワラノギク群落のような河原特有の植生の場合、数年に一度程度は水をかぶって砂礫もろとも流されることが必要です。そうして植生遷移が振り出しに戻り、肥沃な土壌が堆積したところに群落が再生します。人間にとっては脅威となる大雨による河川の増水ですが、自然界ではそれも生態系の中に組み込まれている事象なのです。
帰りに、カイコのためのクワを採って帰ろうと枝に手をかけると、ヤブツルアズキのつるに花が咲いていました。

栽培のアズキにもっとも近い野生種と言われています。
気温はともかく、いつの間にか秋になりました。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 大雨のあとの河原 はコメントを受け付けていません

マルバルコウ

なかなか降り止まない雨が午後、ちょっとだけやみました。すかさず自転車を走らせて、博物館の近くの道端で写真を撮りました。

ヒルガオ科のご紹介シリーズ、今回はこのおばけのように看板を覆った植物です。マルバルコウと言います。このようすが撮りたくて、雨雲レーダーを時折チラチラ眺めて雨の切れ目を狙っていました。
花を拡大すると、さすがはヒルガオ科です。漏斗状の五角形の花弁に、このなかまには珍しい朱色が鮮やかなかわいらしい花です。

雨にも映えて、しかもこのお天気なのにしっかり花が開いています。

すぐ横に、次にご紹介しようとしているマルバアサガオもありましたが、午後ということもありますがそちらはすべてしわくちゃにしぼんでいました。
それにしても、旺盛な繁殖力です。

じつはこのマルバルコウ、畑に入るととんでもなく猛威をふるい、農家の方々を困らせます。先日ご紹介したマメアサガオコヒルガオもそうですが、ヒルガオ科の雑草はほぼすべて、畑の強勢雑草です。
じつはこのマルバルコウ、近縁のルコウソウは朝顔市などでも売られることがある可憐な園芸植物です。花はそっくりですが、朱色ではなく強烈な緋色で、葉が糸のように細く切れ込みます。
ルコウソウはあまり野外にはびこらないのですが、なぜかこのマルバルコウは秋の代表的な雑草となっています。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | マルバルコウ はコメントを受け付けていません

ow bts

何かの暗号のようなタイトルですが、これは、カイコの変異型遺伝子の名称です。その変異型遺伝子を持つカイコがこれです。

おそらく、何も言われずに見れば普通のカイコとなんら変わりなく見えると思います。違うのは、うしろの方です。

じつは私も今回の日本在来原種を育てる中で初めて見たのですが、幼虫最尾部に茶色の皮膚硬化が見られるタイプの変異なのです。なんだかエビのしっぽみたいですね。さらにもう一つの特徴は、体が半透明だということです。言われてみれば、通常のカイコの強い白と比べると、ちょっと下が透けて見えているような色です。

タイトルのow btsとは、「waxy oily(ow ろうのように透けて見える)」と「brown tail spot(bts 茶色の尾斑)」というそれぞれの形質を表す略号なのです。
こうした変異形質は、遺伝子の変異が目に見える形として出ることから、遺伝学の材料としてとても重要です。蚕遺伝学の世界ではこれに「日本錦」という名前も付けられているそうです。
今回このような日本在来原種を育ててみて、改めてこうした優良教材を使った遺伝学の実験や実習ができるのではないかと考えています。カイコの世界、奥深いです。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: オカイコサマ | ow bts はコメントを受け付けていません

ガスくん蒸

先日は館内の有害生物調査についてブログで紹介されていました。
これはIPM(Integrated Pest Management=総合的有害生物管理)の一環として行われているもので、点検、調査、清掃、防除等を総合的に組み合わせた管理方法です。今、さらに対処・防除方法の一つである収蔵庫のガスくん蒸を実施しています。

なにやら収蔵庫前に大がかりな配管やチューブが設置されています。毎年実施している定期くん蒸は資料をビニールで被覆してガスを入れる簡易なものですが、今回は大規模です。一部の収蔵庫においては文化財害虫の完全な防除が必要です。10数年ぶりに、こんな大規模なくん蒸を実施中です(写真はガス投入前のものです)。

一昔前までは、博物館資料の脅威となる文化財害虫に対して薬剤によるガスくん蒸一辺倒と言ってよい害虫防除をしてきました。しかし、人体や地球環境への影響などから、薬剤による防除の比率をできる限り下げることが現在の博物館においても趨勢となり、当館でもIPMを取り入れています。
しかし・・当館のような総合博物館ではさまざまな来歴の新規収蔵資料を受け入れているため、薬剤による防除を完全にゼロとすることができません。毎年定期的に、必要最小限の薬剤量となるようにガスくん蒸を行っています。また、空調設備も老朽化し、収蔵庫の室内環境の安定化も難しいことから、このように収蔵庫ごとくん蒸する必要も生じます。
資料を永久に保存・管理するための措置ですが、今後も点検清掃をこまめに実施して、できるだけ薬剤の使用を抑えたIPMを目指していきたいと思います。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 今日の博物館 | ガスくん蒸 はコメントを受け付けていません

実り

ダブル台風が近づいていて、活発な秋雨前線の影響もあってしばらくまたぐずついたお天気が続きそうです。
そこで、先週土曜日の晴れ間にちょっと訪ねた里山で見つけた、実りの写真をいくつかアップします。
こうべを垂れる稲穂の季節です。これから田んぼはさらに黄金色を強めていきます。

ナスは花が咲きながらしっかり実っています。

水路をのぞくと、アメリカザリガニが水の中からファイティングポーズ!

次の晴れ間はいつになることやら・・。でも、低い空のダイナミックな雲がいろいろと見られそうで、それはそれで楽しみです。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 実り はコメントを受け付けていません

プラネタリウム宇宙ライブショー

今日は、プラネタリウム宇宙ライブショー「太陽系の秘境を訪ねる」を開催しました。

講師はJAXA宇宙科学研究所の大川拓也さん。
平たく言えば、プラネタリウムでの講演会なのですが、スペースシミュレータを使って、宇宙の「秘境」を訪ねて歩いているかのような演出を施しています。

登場したのは、小惑星イトカワ、冥王星、土星の衛星エンケラドス、小惑星ケレス、火星の衛星フォボスなど。
いずれも最近、探査機によってクローズアップ画像が得られたものばかりで、最新の映像を元に、まさに「ライブ感たっぷり」にお話ししていただきました。

実は大川さんには9月12日(土)にも、地下の大会議室で講演をしていただく予定があります。
題して 「宇宙ってすごい! 宇宙の“なぞ”と“ふしぎ”のおはなし」
相模原市中央地区 宇宙教室実行委員会が開催する「子どもと大人共に学ぶ宇宙教室」の1コマを公開講座とするものです。
これも面白そうです。
事前申し込み制ですが、ぜひご参加ください!(学芸班 木村)

カテゴリー: 今日の博物館 | プラネタリウム宇宙ライブショー はコメントを受け付けていません