ハサミムシ?いいえ、カメムシです。


これは、博物館の前のヤブランの葉にとまっていた虫です。
一見してツノカメムシの仲間だな、とわかるのですが、にょっきり生えた2本の赤いしっぽのような突起が、まるでハサミムシのハサミのようです。
名前は「ハサミツノカメムシ」。
なんだ、そのまんまじゃん、という名前ですが、わかりやすくて良いと思います。よく見ると、肩の突起も赤くてなかなかかっこいい感じです。
ミズキを好む昆虫で、しっぽのような突起はオスの特徴です。

因みに腹側から見るとこんな感じ。この突起でメスの腹部を挟むのだそうですが、なぜツノカメムシの中でもこの仲間だけそんな事をする必要があるのか、実に不思議です。
こんな風に変わった形の生き物を見つけると、ちょっと得をした気分になります。(学芸班 木村)

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コヒルガオ

今日もしつこくヒルガオ科植物のご紹介です。雑草中の雑草?とも言えるコヒルガオです。もう時期はだいぶ過ぎてしまいましたが、まだ少し路傍で咲き残っています。

ヒルガオ科のなかで、ヒルガオのなかまとアサガオのなかまはちょっと違うグループに属します。花はそっくりですが、苞葉(ほうよう)と呼ばれる花に付属する葉の形や付き方が大きく異なります。アサガオ(下の写真)はほとんど痕跡くらいしかなくて萼片が露出しています(写真の萼の下に2枚ぴろっと出ている小さな葉)。

ヒルガオのなかまは、大きな2枚の苞葉が萼を包んでいます。

さて、上の写真で苞葉のすぐ下の茎に縮れたひだがあります。これはコヒルガオの特徴で、とてもよく似たヒルガオにはこのひだが無いので、これがほぼ唯一の識別点となります。図鑑を見るとほかにも葉の形や苞葉の大きさなどいくつか識別点が挙げられていますが、私が観察してきた限り、ほとんど役に立ちません。ちなみに現在路傍で見られるのはほとんどがコヒルガオで、典型的なヒルガオはあまり目にすることがありません。
さて、コヒルガオはなかなか個性豊かで、こんな色の濃い花も見かけることがあります。色の濃い花には五角形の角が立ついわゆる「桔梗咲き」がよく見られます。

ところで、コヒルガオはめったに種子を実らせません。もし、こんなふうに実っているところを見つけたらかなりラッキーです。ぜひ探してみてください!

種子をつけないのになぜ雑草としてこんなにあちこちで見られるのかフシギですね。それは、根っこの断片があればそこからどんどん成長していくからです。街路樹の植栽時の土に根のカケラでも混じっていたりしたら、そこから成長します。さらに地下茎が伸びてまわりに広がっていくので、見渡す範囲のコヒルガオがすべて地面の中でつながっていた、なんていうこともあります。強勢雑草なので、畑ではとても嫌われています。
(生物担当学芸員 秋山)

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オーシャンブルー

リゾートレストランのようなタイトルですが、大好きなヒルガオ科のご紹介第2弾です。
梅雨明けくらいから盛んに咲き始め、とても花数が多くて長く咲くアサガオです。この特徴的な色は街中でもよく目立ちます。

グリーンカーテンとしてもよく利用されていて、宿根性(多年草)です。花は大輪で、特徴的なのは萼片です。アサガオや昨日ご紹介したアメリカアサガオのように萼片の先が長く伸びず、短く切れています。

琉球列島に分布するノアサガオの品種として改良されてきました。栄養状態と日当たりさえ良ければ何メートルにもつるが伸びます。
よく、ヘヴンリーブルーと混同されますが、ヘヴンリーブルーは普通のアサガオと同じく一年草で、まったく別の種類です。そちらはまた日を改めてご紹介します。
(生物担当学芸員 秋山)

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ロケットエンジン、はじめました

さがぽんもつぶやいていましたが、企画展「あれもこれも世界初!日本の太陽系探査」も開催2カ月めに突入し、今日から新たな展示が加わりました。
これです。

「ペネトレータ」(月に打ち込んで月の内部を探る装置)のロケットモーター(ロケットエンジン)です。
今まで展示していた「ペネトレータ」は実物大模型ですが、これは本物。
実際に使用するために製造したものの、計画が中止となったため、燃料を装填する前の状態で保管されているそうです。
しかも「ぜひ触ってください」というラベルまで貼ってあります(提供者のご厚意です)。

というわけで、初日から大人気。

さわったり…


のぞいたり…

こんなの、滅多にできない経験です。
皆さんもぜひ「ホンモノに触れに」来てください。 企画展は9月27日(日)まで。もちろん「はやぶさ」の地球帰還カプセルと小惑星「イトカワ」の微粒子展示も、やってます。これも滅多に見られるものではありませんので、お見逃しなく!(学芸班 木村)

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マルバアメリカアサガオ

野生の植物にそれほど強い好き嫌いは無いのですが、個人的に大好きなのはヒルガオ科です。ちょうどこれからヒルガオ科の季節となるので、このなかまを順次ご紹介していきたいと思いますが、その第1弾です。
通勤途中の道端、駐車場のフェンスにハート型の葉がみっしりと絡みついていました。

よく見ると薄い水色の小さなアサガオの花が咲いています。真夏の炎天下にちょっと涼しげな気持ちの良い花色です。

これは、マルバアメリカアサガオと言います。アメリカアサガオの葉に切れ込みが無い品種なのですが、どうも最近はこちらの品種をよく見る気がします。ちなみに、アメリカアサガオはこんな感じで、ふつのアサガオの葉の切れ込みとちょっと違って丸い感じです。

これらのアメリカアサガオと、園芸用に育てられるアサガオとの違いは、葉の形、花の大きさともう一つ、萼片の形です。こちらはふつうのアサガオです。萼片がすっと伸びています。

アメリカアサガオやマルバアメリカアサガオは、この写真のように萼片の先がくるっと反り返ります。

花はかわいらしいのですが、アサガオと比べるとずいぶん小さくて一度に咲く花の数もぱらぱら、という感じです。園芸用にわざわざ移入したとは思えません。飼料用の輸入穀物に混じって入ってきた外来雑草と考えられています。
(生物担当学芸員 秋山)

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雄大雲

昨日今日と、台風14号の影響で湿った空気が入ってきています。昨日は驟雨(しゅうう)が降りました。こんな時、雲好きはそわそわします。
驟雨の後に晴れ間が出ると、多層にわたって雲のカタログが空に広がるからです。こんなお天気の典型的な雲、雄大雲です。

積雲が発達してもくもくと立ち上がり、いわゆる入道雲(雄大雲)となります。下層の層雲などが重なって見えたりすると、なんだか油絵の風景画のような質感の空となります。

雄大雲は驟雨を伴うものの、どちらかと言えば穏やかな雲です。真夏の空を象徴する雲と言えるでしょう。しかし、見た目はよく似ているものの、急激に(目に見えて)上層へ発達してあたりを覆う積乱雲には要注意です。雷を伴う最高に危険な雲です。もっとも、これらの雲の真下にいるときはそれが積乱雲か雄大雲かというのはよくわかりません。天候の急激な変化、湿った強い風、稲光や雷鳴などで、積乱雲と判断するしかありません。そんな時は不用意に外へ出ず、外にいるなら屋内へ避難しましょう。
(生物担当学芸員 秋山)

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オオヒメグモのツーショット

今日は休館日でしだ、ちょっとだけ出勤しました。
この時期、成体のクモが少ないので俗に「夏枯れ」などという事もあり、さすがにめぼしい被写体が見つからず、「どこにでもいる普通種」のオオヒメグモの写真を撮りました。
こうしてオスメス仲良く並んでいるところは意外に見ないので、記録としては悪くないと思います。


…でもふと、何でオス(小さくてオレンジ色がかった方)が網の真ん中寄りにいるんだろう?、という疑問が頭をもたげました。普通、オスがメスの網を訪ねてくるので、この配置はちょっと不自然です。
もしかしたらメスがオスの求愛を拒否して中心部から退いてしまい、取り残されたオスがそのまま所在なさげにしているところなのかもしれません。オオヒメグモの求愛行動を見る機会があったら、メスがどんな振る舞いをするのか、気をつけてみたいと思います。(学芸班 木村)

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蝉時雨の季節

博物館お隣の樹林地では蝉時雨がピークとなっています。アブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシ。たまにクマゼミ。朝夕、ほかのセミが鳴かないタイミングを狙いすましたかのようにヒグラシ。
地面を見ると、なるほど、セミの幼虫が這い出してきた穴が無数にあいています。

こちらはアズマモグラの穴。同じようなシチュエーションですが、さすがに大きいですね。

さて、ぬけがらも木の枝葉や遊歩道のロープなどにたくさんぶら下がっていますが、そのほとんどはアブラゼミです。たまに細身で色の薄いツクツクボウシも。

ヒグラシと似ていますが、より色が薄いので肉眼でもわかります。
オスの成虫が近くでジワジワ鳴いていました。完全な保護色でわかりにくい写真ですが・・。

ぬけがらでは意外と識別しにくいのが、アブラゼミとミンミンゼミです。大きくて茶色いぬけがらを「アブラゼミばっかり」とよく見ずにいると、結構ミンミンゼミが混じっています。
識別ポイントでわかりやすいのは、触覚です。まずはアブラゼミ。毛が多くて、7節あるうち付け根から3番目が長めです。

ミンミンゼミはこちら。毛が少なめで付け根から3番目の長さは前後の節と変わりません。

横に並べてみると、右のアブラゼミの方が色が濃いのがわかります。ミンミンゼミはちょっと白味が入っています。慣れると肉眼でもなんとなくわかりますが、個体差も大きいのでやっぱり触覚を拡大してみないと決め手が出せません。

夜8時前後に歩けば、羽化中のセミも観察できます。

成虫で生きられるのは1週間ちょっとです。セミたちのラストスパートをじっくり見届けてみませんか!
(生物担当学芸員 秋山)

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天文・宇宙好きの若者がいっぱい?

今日は、県内のとある施設の主催で「高校生天文教室」のみなさんが見学に来ました。

天体観測室~天文展示室~企画展とフルコースで、お向かいのJAXA相模原キャンパスも見学して来たという充実ぶりです。
天体観測室では昼間の金星を見てもらおうと思ったのですが、お天気がおもわしくなく断念(かわりにうしかい座のアークトゥルスを見る事はできました)。

おそらく「宇宙でお腹いっぱい」だったと思うのですが、さすが宇宙好きらしく、最後まで飽きずに説明を聞いてくれました。特に真昼の天体観測室は非常に暑くて大変だったと思います。私もつい、写真を撮るのを忘れてしまい、企画展まで行ってようやく思い出す始末でした

というわけで企画展会場にて。

「イトカワ」の微粒子を観察。楽しそうです。「宇宙博でも見ました」という子も。

この中から、将来、天文や宇宙の仕事に進む人が出るのでしょうか?印象に残る見学になっていれば良いな、と思います。

印象に残るといえば、こちらは今夜の星空観望会のひとコマ。口径40cmの望遠鏡で土星を見ているところです。「絵みたい!」「きれい!」と歓声をあげる人がとても多かったので、案内役としても嬉しくなりました。夏休み期間のためか、子どもたちの参加が多かったのですが、この中からももしや天文学者が…と想像すると、楽しくなります。案内やその準備が多くせわしなくはありましたが、充実した日でした。(学芸班 木村)

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子ども鉱物教室「鉱物のふしぎ」2日目

はじめまして。今回は地質分野の学芸員実習生の4人がブログをアップします。今日は小・中学生を対象とした子ども鉱物教室「鉱物のふしぎ」という教育普及事業を行いました。

前回は7月31日にミョウバンの結晶づくりを行いました。今回はその育てた結晶の観察と鉱物の硬さ比べをしました。

講師は相模原市立博物館学芸員の河尻さん。また、ボランティアで相模原地質研究会の方、相模原青陵高校地球惑星科学部の方々にご協力していただきました。

午前中に私たち4人は教室の準備を行い、午後2時から教室が始まりました。

前半は前回育てた結晶の観察をしたり、結晶が育っていく様子を映したビデオを見ました。中でも、河尻さんが半年育てた大きな結晶を見せると、子どもたちから驚きの声が上がりました。

後半は6種類の鉱物の硬さを調べました。

鉱物どうしを擦り合わせて、どちらに傷がつくかで硬さを比べました。6種類全体の硬さの順番を決めるのには皆さん苦労していましたが、親子や友達と相談しながら楽しそうに取り組んでいました。

私たちも参加者の方々と交流できて、とても良い経験になりました。

首都大学東京 武原
東京都市大学 野中
日本大学 小沢
日本女子大学 加瀬

 

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