民具整理をしてみよう!

こんにちは、令和5年度民俗担当の博物館実習生です。

実習5日目の8月17日に、民俗担当学芸員と民俗資料整理のボランティア「福の会」の方々のご指導のもと、民俗資料の整理を行いました。

午前中は資料の収蔵庫への配架作業、午後は資料の受け入れ作業にあたりました。
受け入れ作業とは、寄贈していただいた資料を調査して、管理しやすいようにデータ化することです。

今回は、資料を隅々まで観察して資料カードに情報をまとめました。
資料それぞれに番号を振ることで、わかりやすく保管することができます。
プッシュフォンなどの電話機から江戸時代のおふだ、明治時代のちょうちんまで、民俗分野の特徴である幅広い資料を扱うことの難しさを体感しました。

資料カード作成の様子

 

下の画像は、資料カードに張り付ける写真の撮影の様子です。
きれいに画角に納め、資料が細部まで確認できるように写すことを特に意識しました。

写真撮影の様子

 

資料整理中には「福の会」の皆さんが、電話は手作りのものではないのに「民具」と言えるのか、話し合っていらっしゃいました。
私自身も「民具」の在り方について改めて考えさせられましたが、すぐに結論を出すには時間がかかりそうです。

民具の捉え方は、時代の変遷とともに変化していくのではないでしょうか。
今後も民俗専攻の学生としては、考えていきたいテーマです。

 

今回の資料整理を通して、民俗資料の扱い方を学び、資料の膨大さと情報管理の重要さを痛感しました。
また、資料の管理と市民に還元する活用の両立も、ボランティア活動によって成り立っていると気づきました。

ボランティアの方々が培ってきた技術や知識を間近で見て、少しでも吸収することができたかと思います。
今後の実習では展示を作る作業に入るため、これまでの内容を活かして取り組んでいきたいです。

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可憐だけどちょっと迷惑な花

博物館の正面入り口へのアプローチ脇に、小さな花をたくさん咲かせている植物があります。

そよそよと風に揺れる花穂には小さな花が

とても小さな花なので、拡大してみると・・

小さいけど美しい花

ピンクと白のツートンカラーが美しい花ですが、名前はちょっと物々しく、ヌスビトハギ。その理由は、こちらの果実にあります。

ヌスビトハギの果実

代表的な「ひっつきむし」の一つです。表面の細かい鈎(かぎ)状の毛で、ピッタリと衣類に密着する、マジックテープ式のひっつきむしです。落としたつもりでも、室内に入ってから膝の裏側など手で探るとたいてい幾つかひっついたままだったりします。名前の由来は、盗人(ぬすびと)が気づかぬうちに果実がひっつくから、あるいは、果実の形が盗人の足跡に似ているから、といった説があります。いずれにしても、この可憐な花をまったく無視した命名がちょっと気の毒ですね。
“ハギ”と名が付くとおり、また、葉を見てもマメ科であることがわかります。

ヌスビトハギの葉 3枚で1枚の葉を構成する、三出複葉です

お隣の樹林地では、ナラ枯れなどで日差しが届くようになった林内を中心に、ヌスビトハギが増えています。来月あたりから、樹林内をうかつに歩くと着ている服にびっしりとヌスビトハギがひっついてしまう季節になります。
(生物担当学芸員)

 

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ミシマサイコ

相模野台地の古地名である柴胡の原(さいこがはら)とは、江戸時代後期にこの地を旅した渡辺崋山が遺した『游相日記』に記されています。秋、台地を一面、黄色く染めたと言われるほど咲いていたミシマサイコも、現在はまったく見られません。江戸時代中後期に、生薬である柴胡の原料として根を掘り取られたことや、秣場(まぐさば:牛馬の飼料を育成した草地)から雑木林へと土地利用が変遷したことなどにより、相模野台地から姿を消したと思われます。そんなミシマサイコが今、市内の各地で咲いています。

ミシマサイコの花

これは、相模原柴胡の会などが古地名にちなんだミシマサイコに親しんでもらおうと、各所で栽培したり、種子を配布しているためです。ミシマサイコはセリ科の多年草で、花期は8月~9月です。とても小さな黄色い花がまとまって咲きます。

1つの花は2ミリメートルほどしかありません

南区下溝の横浜水道相模原沈殿池近くの栽培地でミシマサイコの写真を撮っていたら、たくさんのカメムシがついているのに気づきました。

アカスジカメムシ

赤と黒のストライプがとてもオシャレです。アカスジカメムシといい、セリ科が大好きなカメムシです。接近中の台風の影響で時折強い風が吹く中、なんとかアカスジカメムシの写真も撮ることができました。
(生物担当学芸員)

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【GO!北条】北条五代ゆかりの地を巡るデジタルスタンプラリー

8月が半分ほど過ぎましたが、まだ夏は終わらない!ということで、相模原市立博物館では様々な夏のイベントを実施しています。(各イベントの詳細はこちらをご覧ください。)

その中で、本年は戦国時代に関東一帯で権威を振るった北条氏(後北条氏、小田原北条氏とも)が北条姓を名乗ってから500年を記念する年ということで、「GO!北条〜北条五代ゆかりの地を巡るデジタルスタンプラリー〜」を開催中です。

GO!北条〜北条五代ゆかりの地を巡るデジタルスタンプラリー〜

当館と小田原を本拠とした北条氏、何か関係が?と思われるかもしれませんが、北条氏の祖・伊勢宗瑞(いせそうずい)は、本市域を含む相模国(さがみのくに)を支配した際、1512(永正9)年8月に当麻(たいま)に制札(せいさつ)を出しています。制札とは、自軍の乱暴狼藉(らんぼうろうぜき)の禁止を保証した文書のことで、このことから当時、当麻が宗瑞の支配下にあったということがわかります。
実物は無量光寺文書(非公開)として本市有形文化財に指定されており、当麻山無量光寺(南区当麻)で大切に保管されていますが、当館ではこの制札をはじめ、多数の北条氏文書の複製をご覧いただくことができます。

展示を見ながらスタンプゲット!

ところで、伊勢宗瑞は五代続く北条氏初代の人物ですが、一般には北条早雲(ほうじょうそううん)の方が聞き馴染みがあるのではないでしょうか。実はこの「北条早雲」とは、宗瑞が亡くなった後に広く知られるようになった呼称で、生前は自らそのように名乗ったことはなかったと言われています。
「北条」を称するようになったのは二代・氏綱(うじつな)の頃、ちょうど今から500年前の1523(大永3)年のことです。今回のデジタルスタンプラリーは、これを記念して北条五代観光推進協議会が主催し、北条氏文書(複製)を常設展示している当館もチェックポイントとして“ゆかりの地”に名を連ねているのです。

当館の半径200m以内でスタンプの取得が可能です。

スタンプラリーではありますが、“デジタル”スタンプラリーのため、台紙は持ち歩き不要です。お持ちのスマートフォン等で参加登録をして、1都1府4県、計38か所にあるゆかりの地のチェックポイントでスタンプを取得すると、集めた数に応じて先着や抽選で豪華賞品をゲットするチャンスがあります。
参加方法やチェックポイント、賞品等の詳細は小田原市の公式ホームページをご確認ください。また、当館エントランス及び自然・歴史展示室「郷土の歴史」内の北条氏文書展示エリア付近にもポスター・チラシを掲示しています。(※チラシはなくなり次第、配布終了します。)

当館の展示ガイド「カタログポケット」をご利用いただくことで、解説付きの展示観覧も可能です。デジタルスタンプラリーは令和5年10月31日(火)まで開催していますので、この機会に北条氏ゆかりの地巡りに挑戦してみてはいかがでしょうか?

(歴史担当学芸員)

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若竹園でミニ展示解説会

本年1月の大河ドラマ「どうする家康」放送開始に合わせて当館で開催したミニ展示「相模原にもあった!?徳川家康ゆかりの地」を、家康大河ドラマイヤーの2023年中に市内各所で巡回展示しています。

こちらのブログでもお知らせしたとおり、8月は南区若松の老人福祉センター若竹園で出張展示を開催中ですが、8月5日(土)、これに関連して展示を担当した歴史分野学芸員が展示解説会を行ってきました。

まずは講義形式で

この講座では、事前申込みされた市内在住・在勤の60歳以上の方10名にお集まりいただきました。
まずは展示で取り上げた史跡や伝承地について、講義形式で紹介します。途中、クイズや展示の制作秘話なども交えながら和やかに講義を終え、終盤は展示会場の1階ロビーに移動してパネルを前に解説を行いました。

熱心にご覧いただいています。

地域の歴史に興味を持って講座に応募された方が多く、展示解説の合間にも活発な質問や意見が飛び交います。

実習生インタビューの様子(※写真はご本人の許可を得て撮影・掲載しています。)

ところで、当館では今月から‟学芸員のたまご”が学芸員資格取得のために必要な「博物館実習」を行っています。この日は実習の一環として、講座の最後に施設と受講者の方のご協力のもと、歴史分野実習生3名による突撃インタビューを実施しました。
講座の中で印象に残ったことなどを伺うと、「大河ドラマの主人公・家康と地域に関連があることを知って、身近に感じることができた。」と、近くにある史跡や伝承地を意識するきっかけになった方もいらっしゃったようです。
自ら取材内容を考え、受講者の新鮮な声を聞くということは、実習生にとって大きな学びになりました。インタビューにご快諾いただいた皆さま、ありがとうございました。

これからも、見れば地域の歴史がちょっと身近に感じられる、そんな展示や講座を目指したいと思います。

(歴史担当学芸員)

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葉っぱに笑顔

8月12日、博物館お隣の樹林地を歩いていると、ミズキの葉に笑顔がたくさんありました。

葉の裏に笑顔がいっぱい!

アカスジキンカメムシの幼虫が、集団で葉の裏にとまっていたのです。上に向かい合っている美しいカメムシは、成虫です。

ひと足先に羽化した兄弟?それとも親?・・成虫(上)と幼虫(下)の関係は不明です

幼虫は背中に笑顔を背負い、成虫は「歩く宝石」と称される美しさ。カメムシと言えば独特のにおいですが、アカスジキンカメムシのにおいはあまり強くなく、顔をしかめたくなるようなものではありません。

においもあまり臭くありません

相模原市内では、木の多い場所でわりと普通に見られる昆虫です。これだけの美しさを誇る虫ですが、タマムシなどと違い、標本にするとこの光沢感が無くなり、くすんでしまうのが残念なところです。
(生物担当学芸員)

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ホウジャクの産卵

8月11日、博物館駐車場のフェンス沿いを歩いていると、ホウジャクが飛んでいました。

ホウジャク

一見するとハチドリのように見える蛾なので、蜂雀(ほうじゃく)という名が付いています。他の蛾の仲間と異なり、昼間、ホバリングしながら盛んに花の蜜を吸います。ところが、飛んでいる場所には花など咲いておらず、何をやっているのかなとしばらく観察していると・・

ヘクソカズラの葉裏に産卵するホウジャク

産卵でした!ホウジャクの幼虫はヘクソカズラを食べます。果たしてホウジャクが飛び回っていたのは、フェンスに絡みついたヘクソカズラのまわりです。ホウジャクが飛び去った後に葉裏を覗いてみると・・

真珠のようなホウジャクの卵

真珠のような卵がついていました!ホウジャクはとても美しい蛾なので、それだけでも見られるとちょっと嬉しいのですが、この宝石のような卵を見ることができて、とてもラッキーな気持ちになりました。
(生物担当学芸員)

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ゴミを背負う虫

博物館駐車場のクワの木を見ていたら、葉の上をゴミが動いていました。

葉の上を動くゴミ

おやおや?と思って接写してみました。

ゴミの下には脚や口器が見えます

さらに拡大すると・・・

正体は、クサカゲロウ類の幼虫でした

クサカゲロウの仲間の幼虫です。背中の鉤(かぎ)状の毛で、植物片や捕食した虫の死骸などをひっかけて背負って行動します。ゴミにカモフラージュしているのでしょうか。
しかし、撮影した際も、かなり活発に動き回っていて、せっかくゴミに似せても虫であることはバレバレです。
こんなふうにカモフラージュしている虫もいれば、サクラの幹にはこんな虫が歩いていました。

ヨコヅナサシガメの幼虫

ヨコヅナサシガメの幼虫です。樹脂で作った人形のような光沢があり、こんな色合いでは目立ってしまうように思います。カモフラージュなのか、警告なのか、一筋縄では理解できないような色あいや形の虫たちです。
(生物担当学芸員)

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砂を顕微鏡で見てみよう

こんにちは!令和5年度地質分野学芸員実習生です。

8月4日に実習実験室で「いろいろな砂を顕微鏡で見てみよう」を開催しました。

神奈川県の河川の砂から全国の海岸の砂、海外の砂、南極の砂まで様々な砂を顕微鏡で観察してもらいました。

砂はただ見ただけでも色や粒の大きさが様々ありますが顕微鏡をのぞくとどうやら別の世界が見えたようです。

「わぁー!お母さんすごいよ!みてみて!」とかわりばんこに顕微鏡をのぞいていきます。

キラキラしている石や、貝殻のかけら、とげとげした生き物の殻など砂の中には様々なものが見えました。

みんな集中して顕微鏡をのぞく場面も。

こちらは鳴き砂体験コーナー。

キュッと音が鳴る不思議な砂ですが、鳴らすには少々コツがいるようです。

うまく鳴らすことができると拍手が!

最後には記念に砂カードを作成しました。

サハラ砂漠の砂、沖縄の砂、由比ヶ浜の砂の中から一つ選んでカードを作ってもらいました。

どうやらサハラ砂漠が人気のようです。

実際に作ったカードはこちら。↓

みんな喜んで持ち帰っていました。

皆さんも河原や海岸に行ったときに砂に何が入っているか観察してみてください。

たくさんの方にご来館いただき、ありがとうございました。

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放送大学の資料映像を収録

8月6日、博物館2階の市民研究室がスタジオに早変わり!

市民研究室でのインタビュー

これは、放送大学の2024年度前期の講座「コミュニティと教育」の第10回「地域社会の学習拠点としての施設」の中の資料映像を収録しているところです。この回を担当する青山学院大学コミュニティ人間科学部の大木真德准教授が、当館の市民学芸員のお二人から話をうかがっているところです。
市民学芸員はこの日、3日間にわたるクイズラリーの最終日でした。運営の様子も撮影。

景品の交換の様子を撮影

参加者の声も取材されていました。

的確なコメントをいただいています!

また、学芸員からも、博物館におけるボランティアの存在やその意義についてコメントしました。
撮影に加えて照明・録音、ディレクターがそれぞれ配置された万全の撮影クルーが、丸1日かけて収録していました。

本格的な撮影クルーによる取材です

大学教育としてのクオリティをしっかりと意識した、綿密で丁寧な映像制作の現場を見ることができました。
放送は来年6月頃の予定です。
(生物担当学芸員)

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