アリのミルクカップ

博物館駐車場のフェンスにはいろいろなつる植物が絡みついています。つる植物好きにとっては見本園のようでとても楽しい!
今、咲き始めのつる植物、ヤブカラシです。

均整のとれた掌状複葉(しょうじょうふくよう=手のひら状の複葉)がとても美しいのですが、これをアマチャヅルと間違える人がたまにいます。これを煎じても甘いお茶にはなりません。
さてその花は、一つ一つが小さいけれどなかなかの造形です。早速アリたちが集まっています。

よく見ると、花の色がオレンジとピンクの二色あります。でも、アリが集まっているのは・・

オレンジの方です。ピンクの方は・・

アリはいません。ヤブカラシの花は、咲き始めがオレンジです。じつは、ご紹介する順序が逆ですが、咲き始めはこんな感じです。開いた4枚の花弁は緑色であまり目立ちません。しかも、おしべとともにすぐに脱落してしまいます。

おしべや花弁が脱落した後も、花盤にしみ出した甘い蜜がたくさん出ています。この時は柱頭(めしべの先)の出番です。すくっと伸びて、ムシたちが運んでくる花粉を待ちます。花柱が受粉して花が蜜を出さなくなる頃、花盤の色はピンク色にかわります。一つの花の寿命は短いのですが、たくさんの花が時間差で咲くうえに、ヤブカラシは真夏まで、長いつるに次々と花をつけ続けます。アリさんたちのミルクカップはまだまだ営業が続きます。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | アリのミルクカップ はコメントを受け付けていません

Yの字!(クモ)

いつもの通勤路。今日はあまり時間がないので足早に通り過ぎながら視線を走らせる植え込み…

円網のつくり始めの「Yの字」になった糸が目に入り、通り過ぎかけたところで何か変な事に気づきました。
あれ?真ん中の糸が集まるところががやけに白い??
改めてよく見ると…

マネキグモの幼体でした(腹側から見た姿です)。体長2-3mmほどですが、既に第1脚に特徴的な黒と白の斑が見えます。前の2本の糸はそれぞれ第1脚と第2脚の2本の脚で持っています。これ、新発見(?)かも。今度よく調べてみなくては…ふと目にした拍子にちょっとした宿題が出てしまいました。
でもこういう宿題なら、楽しいですね。(学芸班 木村)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | Yの字!(クモ) はコメントを受け付けていません

教科書のようなマント群落

博物館お隣の樹林地は、一部分が遊歩道など整備されて出入りできるようになっています。しかし、かなりの面積を占めるのが、フェンスで囲まれて立ち入りが制限されている区域です。そんな一画で下の写真のような風景を見ることができます。

道路際で年に2回ほど草刈りされる区域の向こう、樹林地の中心側の林縁です。日当たりの良さからクズが盛大に絡みついています。まるで、スカートの裾のようです。森林生態学の用語でこのような林縁を「マント群落」あるいは「そで群落」と呼びます。手前はススキやオギが高く伸びているため、いっそうなだらかな曲面を描いています。まさに教科書通りという断面図が描けそうです。
マント群落のように、異なる環境の境界がゆるやかに移行していくほど、生物多様性が高い空間が形成されると言われています(エッジ効果)。ただし、里山や都市部の樹林地では、マント群落の発達とはすなわちヤブ化することなので、風通しや日当たりが悪くなることを意味します。景観上も、必ずしも良好な環境とは言えません。なかなか判断の難しい景観です。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 教科書のようなマント群落 はコメントを受け付けていません

今年もしゅるしゅると

博物館で栽培しているカワラノギクのプランターに、今年もあのしゅるしゅる伸びる怪しいやつが出てきました。

つる性寄生植物、アメリカネナシカズラです。完全に従属栄養で生長するため、葉は痕跡程度にしか残っていません。ハリガネムシのような見た目です。巻き付いた植物に吸着根を食い込ませると、そこから水分や養分を吸い取るようになります。すでにがっちりと食い込ませています。

そうすると、発芽したときの根は必要なくなり、溶けて消えてしまいます。これが「ネナシカズラ」という名前の由来です。どうやらこのあたりではじめに絡みついて、地面とオサラバしたようです。

もちろん、カワラノギクにとっては迷惑千万です。しかし、河原では実際にカワラノギクの保全圃場で本種が大発生することもあります。どの程度葉や茎へダメージを与えるのか、しばらくようすを見てみようと考えています。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 今年もしゅるしゅると はコメントを受け付けていません

ハツリグモ、出のう!

博物館周辺のハツリグモの網。
特徴的な吊り下げられた葉。
しかし、中にクモはおらず、卵のうらしきマユ状のものがあるだけ。
もうこのクモのシーズンおわりか…と思ってふと視線を動かすと…

葉の上の方に、オレンジっぽい色のつぶつぶが!

もちろん、子グモです。成体が見当たらなくなったと思ったら、もう、ふ化してきました。ちゃんと親グモと同じ形をしています。
実はこうして幼体を見ておく事は意外に大切で、大抵の図鑑には成体しか載っていないのです。それは、正確な種名を知るには幼体では見分けがつかない、という意味でもあるのですが、野外での観察では大体の見当、というのも大切です。これでまたひとつ勉強になりました。ちょっと得した気分です。(学芸班 木村)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | ハツリグモ、出のう! はコメントを受け付けていません

Dangerous

博物館の前のクヌギの大木は、よく樹液を出します。クヌギ-樹液とくれば・・

昆虫天国です。今朝もカブトムシのメスが訪れていましたが、あまり嬉しくない訪問者も。

画面下の方に見える黄色と黒の縞々は、そう、スズメバチです。
樹液に来ている時は比較的攻撃性は低いのですが、それでも危険な昆虫であることにかわりありません。早速近くに注意看板を出しました。
じつは毎年、博物館もスズメバチやアシナガバチには悩まされます。梅雨のこの時期はまだしも、夏から秋にかけては働きバチの数が増える上に活動が活発になるため、お客様の通る場所に巣がつくられたりしていないか、神経をとがらせることになります。樹林に囲まれ自然豊かな環境にある博物館なので避けられないことではあるし、ハチも地域の生態系を構成する一員なのですが、大切なことは、やはり安全第一です。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | Dangerous はコメントを受け付けていません

石を顕微鏡で見てみよう

今日は「石を顕微鏡で見てみよう」を開催しました。
相模川の川原で見られる代表的な石を偏光顕微鏡で観察しました.ボランティアとして相模原地質研究会と相模原青陵高校地球惑星科学部の皆さんにご協力いただきました。

ボランティアの方々から説明を受けながら、参加された方々は熱心に顕微鏡をのぞいていました。

偏光板のしくみも説明しました。

さらには偏光板を使った水晶玉とガラス玉の見分け方も説明しました。

多くの方にご参加いただき、楽しんでいただけました。

相模原地質研究会と相模原青陵高校地球惑星科学部の皆さんのご協力で、とても充実した内容となりました。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

(地質担当学芸員 河尻)

カテゴリー: 今日の博物館 | 石を顕微鏡で見てみよう はコメントを受け付けていません

カイコの羽化

今朝、はじめに育てていたカイコのうち、採卵のためにとっておいた繭から成虫が羽化しました。

成虫は繭の中で羽化すると、繭を固める「のり」となっているタンパク質(セリシン)を溶かす酵素を口から出します。そして、ゆっくりと繭をほぐしながら出てきます。繭の穴の部分が茶色くぬれているのはその酵素が変色したためです。繭を作っている繊維(フィブロイン)本体は溶けていないので、この繭の繊維はちぎれているわけではありません。かつて、こうした出殻繭は紡ぎ糸の原料として使われました。
さて、成虫はたとえようのないかわいらしさです。もふもふです!

オスとメスが羽化したので、早速交尾させました。

明日にはたくさんの卵が産まれるはずです。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: オカイコサマ | カイコの羽化 はコメントを受け付けていません

マミジロハエトリ(クモ)


写真はマミジロハエトリ。体長はメス7-8mm、オス6-7mm。比較的ポピュラーなハエトリグモです。
ちょっとネコハエトリに似ていなくもないのですが、オスは目の上に白い帯状の斑があるのと、触肢が白いので容易に他の種と区別できます。

前から見た顔。その名の通り、白い眉毛のようです。
因みに、このクモに出会うとつい「お、マミちゃんだ…」と口走ってしまう事があります。今朝もそうでした。周りに誰もいなくて本当に良かった…。(学芸班 木村)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | マミジロハエトリ(クモ) はコメントを受け付けていません

梅雨のミニサロン

今日は毎月恒例の「生きもの大好きミニサロン」を行いました。
梅雨らしくしっとりとした空の下、夕べの雨がキンシバイの葉にきれいな水滴を作っています。

実施の時間帯こそ雨は降っていませんでしたが、今回ははじめから室内のつもりで「いろいろな葉っぱを使って工作をしよう」といテーマで実施しました。

エントランスに机を広げて見本を置くと、すぐに人が集まりだしました。
短い時間の中なので、まずは簡単にできるツバキの葉のサンダル・・

シャガの葉でつくったカタツムリ。

こちらはヤブランの葉のカタツムリ。季節柄、カタツムリにこだわりました。

折り紙のようにきっちりと折り目がつくわけではないし、葉の形や大きさにも個性があるのでなかなか難しそうでした。
でも、いくつか工作したものをおみやげとして嬉しそうに持って帰っていくみなさんの姿を見て、こちらもちょっと嬉しくなりました。
次回はJAXA特別公開と重ならないように第3集の7月18日(土)に実施します。ご注意ください!
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 今日の博物館 | 梅雨のミニサロン はコメントを受け付けていません