カラスウリの花咲く夜

7月23日、ナイトプラネタリウム&観望が終わった夜の博物館のお隣で、妖しく咲く花がありました。

夜の闇の中で咲く花

カラスウリの花です。
秋に熟す果実は、季節を象徴するような朱色が鮮やかですが、花は夜に咲きます。

秋に実ったカラスウリの果実(2020年10月撮影)

花が夜咲くのは、花粉を運んでもらう相手を、夜行性の蛾の仲間に担ってもらおうという戦略のためです。

レースを広げたようなカラスウリの花

レースを広げたような花弁からは、ほんのりと甘い香りが漂います。
これからしばらく、夜のお花見が楽しめそうです。
(生物担当学芸員)

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: | カラスウリの花咲く夜 はコメントを受け付けていません

ツクツクボウシ鳴き始める

7月23日、博物館お隣の樹林地で、ツクツクボウシが鳴いていました。一昔前は、お盆が近づくと鳴き始めるセミでしたが、少しずつ早まっているように感じられます。鳴き声だけで写真は撮れなかったので、かわりに同じ日に見たアブラゼミの抜け殻の写真を紹介します。

アブラゼミの抜け殻

ミズキの葉の裏についていました。ちなみに、近年は全体的にセミの鳴きはじめが早くなっていて、今年のヒグラシの初認は6月30日(相模原市立博物館駐車場)でした。ニイニイゼミの初認は6月28日で例年より少し遅いくらいでしたが、ミンミンゼミは7月14日(いずれも博物館駐車場)で、やはり少し早めです。
近くには、ハートを背負うラブリーな虫、エサキモンキツノカメムシがいました。

エサキモンキツノカメムシ

クサギの花も咲いています。この花が咲くと、真夏の到来を感じます。

クサギの花

梅雨も明けて、セミも出揃ってきて、いよいよ夏本番です。
(生物担当学芸員)

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: , , , , | ツクツクボウシ鳴き始める はコメントを受け付けていません

公民館で牧野富太郎博士のおはなし

7月22日、相模原市南区の上鶴間公民館の教養講座でお話をしてきました。テーマは「牧野富太郎博士の功績と、相模原の植物」です。

講演の様子

NHKドラマの主人公のモデルとして脚光浴びる牧野富太郎博士について、日本の植物学の発展にどのような貢献をしたのか、また、博士がこだわった標本の意義、学名のきまりなど、ドラマを見るうえで知っておきたい情報を紹介しました。講座の定員は30名でしたが、申込み開始からすぐに定員に達してしまったそうです。当然ながら、参加された方のほとんどがドラマをご覧になっているとのことでした。
実物の標本や牧野図鑑を持ち込んだため、休憩時間には標本を取り囲んでの植物談義も。

牧野日本植物図鑑(初版本)

休憩時間の様子

一部、植物分類学の専門的な内容も交えた内容でしたが、みなさん熱心に耳を傾けてくださいました。最後に、牧野博士にゆかりのある、相模原の植物も紹介しました。牧野博士は、記録にあるだけでも数回、相模原市域を訪れています。そのうちの1回は、1922年6月4日に与瀬駅(現在のJR相模湖駅)から相模川の渓谷で採集し「サツキ〈野生品〉ヲ採ル。又ヤシャゼンマイ多シ サツキハ花盛リナリ」と書き記しました。

サツキ(写真は相模川の支流の道志川で撮影)

ヤシャゼンマイ(写真は相模川の支流の道志川で撮影)

現在はダム湖となっている渓谷ですが、博士が訪れた頃はどんな様子だったのか、想像が膨らみます。
ドラマも中盤に差し掛かっています。植物学や標本、学名といった専門的な事柄の理解が進むのも大変ありがたく、博物館でも折々に牧野富太郎博士の業績を取り上げていきたいと思います。
(生物担当学芸員)

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: , , | 公民館で牧野富太郎博士のおはなし はコメントを受け付けていません

葉っぱの上のコウチュウ

博物館駐車場のフェンス沿いは、つる植物がたくさん絡みついています。その葉の上にはいろいろな虫がいるので、たまに見回っています。7月20日、こんな虫を見つけました。

エゴヒゲナガゾウムシ

エゴヒゲナガゾウムシです。ゾウムシの仲間は全体的に不思議な頭の形をしているのですが、この虫もまた、独特です。上から見ると眼が左右に離れてついていて、カニのようにも見えるのですが、正面側から見ると頭部が三角形で平らになっていて、別名であるウシヅラヒゲナガゾウムシの名前がしっくりきます。

正面から見たエゴヒゲナガゾウムシ

その名のとおり、エゴノキのまわりで見ることが多く、この場所も近くにエゴノキがあり、ちょうど果実が実る頃です。
この日はほかにも、クロウリハムシがいました。

クロウリハムシ

黒とオレンジ色のコントラストが美しいハムシの仲間です。
また、こちらは定番のマメコガネです。マメコガネは、葉が揺れたり、手を近づけたりすると、後ろ足をピンと逆八の字に開きます。

マメコガネ(交尾中)

なぜこんな動作をするのかよくわかりませんが、体操のポーズを決めているように見えておもしろいので、ついちょっかいを出してしまいます。
ほんの5分ほど見て回っただけでしたが、3種類のコウチュウの仲間を楽しく観察できました。
(生物担当学芸員)

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: , , , | 葉っぱの上のコウチュウ はコメントを受け付けていません

水で巣内を冷やすアシナガバチ

先日、このブログで博物館中庭でのキアシナガバチの巣作りを紹介しました。その巣も徐々に大きくなり、働きバチの数も増えてきました。そんな中、この猛暑の中で興味深い行動を観察できました。

キアシナガバチの巣

アシナガバチやスズメバチの仲間は、巣内の温度が上がりすぎると卵や幼虫が死んでしまうため、温度を下げる必要があります。一説には、巣内が33度を超えると冷却を始めると言われています。よく見られるのは、巣の内部に向けて翅(はね)を震わせて風を送る行動です。もう一つは、水滴を入口に付けて、その気化熱で冷やすという方法です。博物館の巣をよく見ると、しっかり入口に水滴がついています。

巣の入口についた水滴

働きバチが、口に水滴を含ませて、それを運んでくるそうです。映像などでよく知られた行動ですが、実際に巣に水滴がついている様子は、間近に観察できなければ見るこちはありません。来館者の方も、「怖いもの見たさ」もあるのか、長い時間巣の様子を観察されていました。

観察する来館者

人間にとって怖い存在のアシナガバチですが、巣を見ていると、頻繁に虫の肉団子を運び込んできます。ハチがいなければ、博物館周辺のイモムシなどの数もコントロールできないのだろうなと感じます。間近で観察することで気づくことがたくさんあることを実感しています。
(生物担当学芸員)

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: | 水で巣内を冷やすアシナガバチ はコメントを受け付けていません

生きものミニサロン「生きものビンゴ 夏のにおいや色を探そう!」を実施しました

7月15日、毎月恒例の生きものミニサロンを実施しました。今回のテーマは、「生きものビンゴ 夏のにおいや色を探そう!」です。エントランスでビンゴの説明をした後、早速外で観察です。今を真っ盛りに咲いているヤマユリの香りを確認。

まずはヤマユリの花の香りをみなさんと確認

ビンゴのお題に「好きなにおいの葉か花」「きらいなにおいの葉か花」というのがあります。「好き」にチェックをした人もいましたが、濃厚なヤマユリの香りが苦手というお子さんも多くいました。
他にも、「ザラザラしている葉っぱ」や、「着ている服と同じ色の花」などを見つけていきます。

ザラザラかな?

「真っ白い虫」というお題では、アオバハゴロモの幼虫が見つかりました。

茎についている真っ白い虫に注目

アオバハゴロモは、成虫も幼虫も、指を近づけると茎の裏側へ回り込んで逃げます。その様子がかわいいので、みなさん試していました。

アオバハゴロモの幼虫(左)と成虫(右)

「カメムシ」というお題は、「ブツブツしたものを見たくない人は見ないでください」と警告付き?でご案内しました。ツノカメムシの仲間の幼虫がミズキの葉裏に集合していました。

カメムシの幼虫の集合

16マスのビンゴでしたが、番号は17番まであり、17番のお題は「今鳴いているセミの声を文字で表して!」というものです。これを書き入れたら、好きなマスに上書きできるルールです。

ビンゴ!

結果、観察した時間は全部で15分ほどでしたら、最多で4つのビンゴができた参加者もいました。全員が1つ以上のビンゴをできて、景品の缶バッチをお渡しして終了となりました。
次回は8月26日(土)で第4週の土曜日となります。
(生物担当学芸員)

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: | 生きものミニサロン「生きものビンゴ 夏のにおいや色を探そう!」を実施しました はコメントを受け付けていません

コクゾウムシ、見たことありますか? 考古ミニ展示開催中!

展示風景(館内エントランス)

考古ミニ展示「コクゾウムシが教えてくれた!
~縄文土器研究最前線~」9/3日まで

エントランスにて開催中です

 みなさんは、コクゾウムシを知っていますか?米粒に群がるあの小さな黒い虫です。

現生コクゾウムシ標本  (当館所蔵)

「コクゾウムシって、お米にたかるのだから、弥生時代に稲と一緒に日本列島に渡ってきたのでは?」

そんな声がきこえてきそうです。

ところが最近、発掘調査で出土した縄文土器に見られる小さなくぼみ(圧痕・あっこん)が、植物種子やコクゾウムシなど昆虫の痕跡であることが知られるようになりました。相模原市でも縄文時代のムラがあった遺跡から約4,000年前のコクゾウムシの圧痕がついた土器が見つかりました。

 

相模原市緑区澤井の大日野原遺跡出土:縄文時代後期初頭の土器片             土器表面の穴がコクゾウムシの圧痕(中央大学考古学研究室提供)

 

顕微鏡で見たコクゾウムシの圧痕 レプリカ                                                           (大日野原遺跡出土 中央大学考古学研究室提供)

 

 これらは、土器片をつぶさに観察し、くぼみを見つけてその穴を特殊な虫眼鏡で観察する「3Dマイクロスコープ法」や、その穴にシリコンゴムを流して穴の中の型を取って観察する「圧痕レプリカ法」という考古学の研究法で見つけることができます。

 また、最近では土器をX線にかけて、表面では見えない土器の中に練り込まれた種子などを見つける「X線CT法」も開発されました。

 今回、これらの研究方法で土器片から見つかったコクゾウムシにスポットをあて、なぜ、コクゾウムシが縄文土器の中から見つかったのか、さらにコクゾウムシが当時の食料事情や生活環境について教えてくれたことを紹介します。当館所蔵の現生コクゾウムシ標本や、お米から産まれる様子を記録した動画(熊本大学小畑研究室提供)も展示していますので、ぜひご覧ください。

ミニ展示の関連イベントをお知らせします!

◆ミニ展示関連イベント
ワークショップ「あなたも考古学者!」
土器のくぼみ(圧痕)に残された情報を読み取るワークショップ

①実演会と体験
「縄文土器のくぼみはなにを教えてくれるのか~圧痕レプリカ法の実演と体験~」
講 師 佐々木由香さん(金沢大学古代文明・文化資源学研究所考古科学部門特任准教授)
日 時 令和5年8月5日(土)午後1時~2時30分
会 場 実習実験室
定 員 15名(事前申込順)
対 象 小学校5年生以上~大人
参加費 無料
申 込 75日(水)午前9時30分から下記に表示する専用申込みフォームにて受付を開始します。
やり方がわからない、インターネット環境がないなどの場合は、博物館の開館時間内に
電話(042-750-8030)でお問い合わせください。

 

申込フォームQRコード

申込みフォームURL:https://logoform.jp/f/wvpco

※1組2名まで申し込みいただけます。定員に達し次第、受付を終了します。

◎当日の受付方法について

申込みフォームに入力いただいたメールアドレス宛に、受付番号を自動送信いたします。当日に受付番号を確認できるものをお持ちください。

※ドメイン指定受信設定をされている方は、ドメイン(@logoform.jp)を許可するか、設定を解除するようお願い申し上げます。

②体験会
講 師 相模原縄文研究会、考古専攻大学生
日 時 令和5年8月9日(水)、20日(日)、23日(水)
          午前10時30分~午前11時30分、午後1時30分~午後2時30分
会 場 実習実験室
定 員 なし
対 象 小学生以上
参加費 無料
申 込 希望者は直接会場へ

  

お待ちしています!!(考古担当学芸員)

カテゴリー: おしらせ, 未分類, 考古・歴史・民俗 | タグ: , , , , | コクゾウムシ、見たことありますか? 考古ミニ展示開催中! はコメントを受け付けていません

津久井城跡市民協働調査 講習会「相模原の段丘と城山の地質」を開催しました。

6月21に、津久井湖城山公園にて講習会を行いました。
今回のテーマは「地質」。参加者は15名でした。

講座の様子

講師は博物館の地質担当学芸員です。
遺跡の発掘調査では、堆積している土の由来を考えます。関東ローム層(赤土)や黒土であれば、富士山からの堆積物です。この由来を知ることで、遺跡が残された時の地形を想定することができます。

この講座では津久井城がある城山の地質はどのようなものか、相模原市域全体の地質から考えることを目的としています。相模原は相模川による河岸段丘が著名ですが、津久井城のある城山はまた異なった地形で、山間部に位置するため特徴的な地質になっています。

地形の様子を解説中

津久井地域は山地で、相模野台地は台地に区分されます。地形の変化は数十万年のタイムスケールであり、旧石器時代や縄文時代とは古さの桁が違います。

津久井城の講習会では、歴史や遺跡の内容が多く、今回の地形・地質の内容は新鮮であり、みなさん真剣に聞き入っていました。

(考古担当学芸員)

カテゴリー: 生きもの・地形・地質, 考古・歴史・民俗 | タグ: , | 津久井城跡市民協働調査 講習会「相模原の段丘と城山の地質」を開催しました。 はコメントを受け付けていません

ハエドクソウとヒラタアブの仲間

博物館の前庭では、ハエドクソウが咲いています。

ハエドクソウの花

小さくて可憐な花ですが、その名のとおり、かつてこの植物の根から抽出した成分を蝿とり紙に染みこませて利用していました。また、汲み取り式の便所の便槽へ全草丸ごと投げ入れていた、という話も伝わっています。
写真を撮っていたら、ヒラタアブの仲間が近寄ってきました。

ハエドクソウの花の前でホバリングするヒラタアブの仲間

小さな花に狙いを付けて、ピタッと止まりました。すると、口をペタペタと当てて、花の中の蜜をなめ始めました。

ハエドクソウの花の蜜をなめるヒラタアブの仲間

ヒラタアブの仲間は分類が難しく、種類まではわかりません。ハチに似た色と形ですが、これはハチに似せて身を守るための擬態です。この仲間は人や動物などを刺すことはなく、花の蜜を主食にする平和的な昆虫です。時々人の皮膚にも止まってペタペタやるのですが、ハチに止まられたと勘違いして大騒ぎされてしまうこともしばしばです。落ち着いてみると、大きな複眼と静かにホバリングする様子がとてもかわいらしい昆虫です。
(生物担当学芸員)

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: , | ハエドクソウとヒラタアブの仲間 はコメントを受け付けていません

カイコ60日目 羽化しました!

6月1日の給桑開始から60日目の7月10日、乾燥させずに生かしておいた繭から、オスの成虫が羽化しました。そして、7月11日からこの成虫を飼育展示に出しています。

繭につかまった状態で展示します(展示中はフタをします)

ただし、カイコの成虫には食べるための口がありません(繭をほぐして出るための酵素を出す口はあります)。そのため、飲まず食わずで、繁殖行動を終えると10日ほどで衰弱して死んでしまいます。

成虫はモフモフのぬいぐるみのようです

なんだかせつないように思いますが、昆虫にはかなりの割合で、そうした生活史のものがいます。蛾の多くの仲間のほか、ホタルの仲間なども成虫に口がありません。
成虫は、これから順次羽化する個体を交代で展示していきますが、生かしている繭は全部で5個ほどですし、同じタイミングで出てくる個体もいるので、展示できるのは今週から来週前半くらいかと思われます。ご来館の際にはお見逃しなく!
(生物担当学芸員)

カテゴリー: オカイコサマ, 生きもの・地形・地質 | タグ: , , | カイコ60日目 羽化しました! はコメントを受け付けていません