いつかこんな展示を

水曜日から今日まで3日間、上野の文部科学省国立教育政策研究所社会教育実践研究センターで、学芸員専門講座を受講してきました。そちらはみっちりお勉強と、全国的な学芸員どうしの交流の場だったので、写真もありません。
で、写真は閉講後に立ち寄った国立科学博物館で見たすばらしい展示のようすです。

科博日本館で行われている企画展「ヨシモトコレクションの世界」展です。ハワイに生まれ育った日系2世で実業家、ハンターであったW.T.ヨシモト氏の膨大なほ乳類のはく製コレクションは、生前に科博へ寄贈されました。私も筑波の収蔵庫などで見ていましたが、改めて展示室で見たそのコレクションのすばらしさと学術的価値に、圧倒されました。

実物の持つ迫力と説得力は、やっぱり言葉に表せない力を秘めています。
いつか、こんな展示がしてみたい。学芸員としてそんな憧憬を感じさせる資料群でした。
(生物担当学芸員 秋山)

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シモフリヤチグモ

昨日、地質担当のKさんから「プラネタリウムの前にクモがいる」と聞き、「どれどれ」と見に行くと徘徊性っぽいクモが歩いていました。
さっそく採集して「コモリグモの仲間のオスですね」と、話をしました。
が、今日になって明るいところで見てみると、あれ?こんなコモリグモいないぞ?と、一目でわかる姿をしていました。
よく見ないで、いい加減な事を言ってはいけませんね。

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名前はシモフリヤチグモ。オスです。体長は10mm程度、人工的な環境でもよく見られる種で、コンクリートの隙間や側溝などに漏斗状の住居をつくります。

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触肢の先に注目。この種のオスの補助生殖器は非常に複雑な形をしています。写真で雰囲気がわかるでしょうか。

ヤチグモの仲間は、住居の中に潜んでいると、まず姿を見る事はできませんし、採集も非常に困難です。徘徊してくれたおかげで写真も撮れました。(学芸班 木村)

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ヒラタくんの勝ち?(閲覧注意かも?)

10月17日のブログでとりあげた、ヒラタグモ。毎年ヨコヅナサシガメが越冬する場所に住居を作ったので、どうなる事かと思っていたのですが、11月23 日に様子を見ると…

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白いのがヒラタグモの住居、左下のごちゃごちゃした固まりがヨコヅナサシガメの集団。

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ヨコヅナサシガメ。

隣にはクロゴキブリまで同居しています。これは、皆で仲良く共存するのでしょうか。時々気にして見ていたのですが、しばらく3者の位置は変わりませんでした。
ところが、12月7日に確認すると…

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ご覧のとおり、ヒラタグモだけが残っています。今日、12月10日になってもそのままです。どうやら越冬場所争いは、ヒラタくんの1人勝ちで決着しそうです。
それにしても、ヨコヅナサシガメはなぜいつもの場所を離れたのでしょう。そして、どこに行ったのでしょう?気になります。(学芸班 木村)

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ねむたいコウモリ

とある場所、民家の洗濯機に入り込んでいて保護された若いアブラコウモリです。

冬眠しようと思ったのでしょうか。あやうく遠心分離されていまうところでしたが、無事に保護されました。本来なら冬眠に入る頃なので、ちょっと眠たそう。
それにしても・・あまりの可愛らしさに、しばらく見とれてしまいました。
このコウモリは、ボランティアさんの家で一時的に保護されることになりました。
(生物担当学芸員 秋山)

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冬の雲

足下の冬と、まだがんばる蜘蛛の記事の次は、お空の雲です。
ひさしぶりに広い空を見上げたら、美しい雲のとりあわせ。高空にできる巻雲の房状雲の下に、積雲の扁平雲の二重雲。

このところの寒波はあちらこちらで雪を降らせ、相模原市内でも昨日、緑区の山間で降雪がありました。
冬将軍の到来。晴れ間の空はますます澄んで、雲は白く輝きます。
(生物担当学芸員 秋山)

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まだがんばるクモ

今朝の相模原の気温は0.5度Cまで下がっていたようですが、博物館周辺にはまだ網を張っているクモの姿があります。

ジョロウグモ。網がだいぶ劣化して糸が黄色っぽくなっています。

こちらはなんと、オスメスのペア。

ギンメッキゴミグモ(たぶん。ヨコ糸は張っていません。幼体です。)。

ゴミグモ(幼体)、ゴミの向こう側にいるので写真には写っていません。

この寒さの中、いつまで網を張るのでしょうか。
きちんと記録する価値がありそうです。(学芸班 木村)

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寒いなあ、と思ったら

今朝の通勤路。

いつもの植え込みには霜が降りてました。

と、思ったら、霜柱まで…
博物館周辺も、だんだん冬の景色になってきました。(学芸班 木村)

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星空観望会

今日は星空観望会。
よく晴れましたが、とにかく寒かったです。

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にも関わらず、100人近い方が参加してくれました。
今日の観望天体は、アルビレオ、月、天王星。
満月直前の月の光は強烈です。
写真には写っていませんが、観測テラスの床には月明かりでくっきり影ができていました。

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双眼鏡から飛び出した月の光が顔に映っているのがわかりますか?

本来、月が明るい時は、他の天体を見るのには向かないのですが、それはそれなりに楽しめるものです。みなさん楽しそうに望遠鏡や双眼鏡を覗いていました。

博物館では月に二回、星空観望会を実施しています。次回は12月20日(土)、詳しくはこちらをご覧ください。(学芸班 木村)

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御嶽山の軽石層と津久井城跡の礫層

今日は午前中は,市内の小学生を地層が見られる場所へ案内しました.午後は津久井城跡の発掘現場の礫層を調査しました.
天気がよく,外を歩くのに最適の天気でした.

小学生を案内したのは,相模原市緑区名倉で見られる細かい軽石が降り積もってできた地層です.この軽石は御嶽山が約10万年前に大噴火したときに,相模原まで飛んできたものです.

軽石層の下部に見られる約500万年前の礫岩も観察しました.

10万年前とか500万年前とか,想像もつかないくらい古い地層を見て,触って,子どもたちは大喜びでした.この中から未来の地質学者が誕生してくれれば,うれしいですね.

さて,午後は,津久井城跡の遺構の発掘現場で見つかった礫層の調査に出かけました.この礫層は昔の大きな川が運んだもののようです.津久井城をつくるときに削ったりして人の手が加わっています.

近くの崖には大きな礫層の露頭がありました.こちらも昔の川が運んでできたものです.
かなり大きな礫も見られるので,相当大きな川が流れていたのでしょう.

日中の日向は暖かくて,外で気持ちよく調査・観察できました.

(地質担当学芸員 河尻)

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相模原のツバメは、今・・

今日は相模原市環境情報センターで、自然環境観察員による今年の全体テーマ調査である「ツバメの巣分布調査」の結果について、調査員のみなさんと考察する検討会に参加してきました。まず、センター職員から結果の全体的な説明を受けます。

続いて、相模原市の大きな地図に、ツバメの種類ごとに巣が見つかった地点にマークをしていきます。これがなかなか細かい字を読んでいかなくてはならず、みなさん苦労しています。

でも、たくさんの人が参加した分布調査の結果がしっかりと図化されました!

これを見ながら、ワークショップ形式で気付いたことなどまとめて発表していただきます。

最後に私が、調査でみなさんが感じた疑問にお答えしたり、結果についての概要など説明しました。
詳しい結果はセンターが毎年発行する年次報告書でとりまとめられますが、衝撃の事実が浮かび上がりました。ツバメについては、市街化や再開発の進んだ場所で見られない傾向はあるものの、過去の平成13年、18年の調査と比べてほぼ横ばいのように見えます(合併前の調査と、今回では調査区域が異なるので単純には比較できません)。しかし、ツバメと近縁のイワツバメの営巣確認メッシュが激減していたのです。H13年と比べると、なんと10分の1以下でした(減りすぎていたため、目で数えただけで簡単に比較できてしまったのです)。ツバメの減少傾向が全国的に言われている中、私自身、イワツバメについてはこれほど減少傾向が顕著だとは気付かず、ショッキングでした。
市民参加型調査を10年以上続けていくと、こんなに明瞭に生きものの分布変化が読み取れるんですね。そのこと自体は興味深いし、イワツバメはもともと、半世紀くらいの間に都市部へ進出して、それがまた潮が引くように後退していっているとも言えますが・・さてさて、全国的な傾向はどうなのか、ちゃんと見ていかないといけませんね。
(生物担当学芸員 秋山)

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