クロメンガタスズメ・続報

今月上旬のブログ記事では、クロメンガタスズメというガの幼虫を紹介しました。
何頭もいた幼虫のうち2頭を館で飼育していたのですが、先週、ついに蛹になりました。

採集してきた2頭とも無事に蛹に!

幼虫もかなりのサイズでしたが、蛹も大きくてとても立派です!

クロメンガタスズメの蛹。上が腹面です。

幼虫から蛹に脱皮する前に、「前蛹(ぜんよう)」という段階があるのですが、その段階の写真は撮影し忘れてしまいました。
代わりに…クロメンガタスズメと同じスズメガのなかまの前蛹(おそらくクチバスズメ)を紹介します。
この個体は先週、館のエントランス付近をうろうろしているのを来館者の方が発見し、持ち込んでくださったものです。

クチバスズメと思われる前蛹

スズメガのなかまは土の中などで蛹になるので、土の代わりに水苔を敷いた容器で蛹になってもらいます。
器用に水苔を掘って整え、蛹になるための部屋を作っていますね。

そうこうしているうちに、クチバスズメ(?)も蛹になりました。
ならべると大きさの違いがよく分かります。

上がクロメンガタスズメ、下がクチバスズメ(?)

クロメンガタスズメとクチバスズメ(?)、どちらも羽化が楽しみです。
(動物担当学芸員)

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シンジュキノカワガ

シンジュキノカワガという変わった名前の蛾がいます。
中国大陸から飛来するものの定着はしていない「偶産種」と言われる蛾ですが、今年は関東近郊でもかなりの数が見つかっているとSNS等で話題になっています。
そこで、相模川河川敷での調査の折にこの蛾を探してみることにしました。
幼虫が食べるニワウルシ(別名シンジュ)の木を探します。

ニワウルシ(シンジュ)

その木の幹をよく見ると、不自然な膨らみが…。
早速見つかりました!シンジュキノカワガの繭です!
木の幹そっくりです。どれが繭かわかるでしょうか?

シンジュキノカワガの繭

中央の丸の部分が繭です

同じ木の葉っぱには何かに食べられた痕跡がありましたが、既に幼虫はいませんでした。
これがシンジュキノカワガの食痕なのかはよくわかりません。

何かに食べられた跡が…

幹についた繭は何個もあり、なかには生きた蛹が入ってるものもありました。
せっかくなので、持ち帰り観察することにしました。

繭の中の蛹

シンジュキノカワガの繭(表と裏)と蛹、幼虫の脱皮殻

現在、持ち帰ってから2日ほどが過ぎ、蛹の表面に成虫の体の模様が浮かび上がってきました。羽化が近いというサインです。
うまく羽化すれば、美しい成虫の写真もご紹介できるかもしれません。

シンジュキノカワガの蛹。Before(左上:背面)、After(中央:背面;右下:腹面)

(動物担当学芸員)

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晩秋の林道にて

11月26日、緑区のある林道へ、絶滅危惧種の調査へ出かけました。いくつかの種の生育状況が確認できたのですが、ちょうど花期にあたったのが、こちらのツメレンゲです。

ツメレンゲ

県内では、相模原市内の数か所と、市外の1か所で自生が知られているだけの希少な植物です。多肉植物でちょっと特異な形をしています。1回咲きの多年草で、花が咲いた株は結実して枯れます。

ツメレンゲの花のアップ

この場所は林道の法面にたくさんの株があり、開花株も多く見られました。ただ、とても崩れやすい場所のため、このところの台風の頻発や集中豪雨による土砂崩れで一気に生育地が失われる可能性があります。引き続き状況を見守りたいと思います。
近くでは、カラスザンショウが黒紫色の果実をつけていました。

カラスザンショウ

メジロなどが好んで食べるのですが、人間の味覚からすると刺激が強すぎて、口の中が痺れます。メジロは平気なのでしょうか・・。ところで、カラスザンショウは幹に残る、葉が落ちた痕(葉痕)がとてもかわいいのです。

カラスザンショウの葉痕

枝がにっこり笑っているみたいですね。
さらに近くにはクサボタンの果実が実っていました。

クサボタンの果実

周辺からは時折鳥の声が響いていましたが、晩秋の静かな林道歩きとなりました。
(生物担当学芸員)

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【R6学びの収穫祭2日目】収穫祭は続く・・・

昨日に続き、当館を活動拠点とする各団体や、当館学芸員が活動に関わった学校等の学びの成果発表「学びの収穫祭」を開催しました。
2日目となる11月24日(日)のメインイベントは2つ。参加団体によるワークショップと、学芸員講演会です。

ワークショップでは、相模原縄文研究会と東京科学大学附属科学技術高等学校科学部がそれぞれ趣向を凝らした体験を用意しました!

縄文土器の拓本づくりに挑戦!

相模原縄文研究会のワークショップは「縄文土器の模様をうつしとろう!」と題して、縄文土器の拓本(=土器の表面に施された文様を紙に写し取ったもの)に挑戦します。土器に紙を当て、ポンポンと墨を表面に押し当てていくと…土器の文様が浮かび上がってきました!さながら、気分は考古学者です。

東京科学大学附属科学技術高等学校科学部のワークショップ「かるた遊びで,君も はやぶさ2博士に!」では、かるた遊びをとおして小惑星探査機「はやぶさ2」の機能や活躍の歴史、進行中の新ミッション「はやぶさ2#」について学ぶことができる画期的な科学技術かるた「カルはや2#」を実際に体験します。はやぶさ2のプロジェクトメンバーが映像により読み手を務める豪華な内容で、参加者は読み句の絵札を取り合って大変盛り上がっている様子でした。

みんなで一緒に「#」!

そして、午後には当館学芸員による学芸員講演会を開催しました。これは、発表者だけでなく当館学芸員も学びの収穫祭を盛り上げていこう!という趣旨のもと実施しているもので、各分野担当者が様々なテーマで毎年お話ししています。
今回は「勝坂に生きた縄文人」と題し、考古担当学芸員が本年に国史跡指定50周年を迎えた勝坂遺跡について熱く語りました。

考古担当学芸員の解説にも熱が入ります。

勝坂遺跡は市内南区磯部にある縄文時代中期の遺跡で、勝坂式土器の標式遺跡として全国的な知名度があります。この重要性から1974(昭和49)年7月に国の史跡として指定されて以降、複数回にわたって追加指定されています。
本講演会では、勝坂遺跡と勝坂式土器の概要、発掘調査に尽力した大山 柏氏と岡本 勇氏の活動、縄文人が用いた石器、それらを活用した狩猟・食糧事情などの様々な視点から、市域を中心として縄文人が送った生活について解説しました。

実物のシカの角を使って解説!

地域や考古学に関心がある方、お友達と誘い合わせて参加された方などが来場され、講演後の質疑応答も活発に行われて、熱心にご参加いただけたことが伝わりました。

2日間にわたって開催したイベントは終了しましたが、各発表者が心を込めて設営した展示発表は12月27日(金)まで継続します。
みんなで調べて学んだ“収穫の成果”をぜひご覧ください。

(歴史担当学芸員)

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今年もはじまりました!学びの収穫祭

11月23日(土)、以前のブログでも紹介した通り、今年も学びの収穫祭が始まりました。

23日はエントランスでの展示発表がスタートし、大会議室では口頭発表会を行いました.

口頭発表では11件の発表がありました。多くの方にご聴講いただきました。

発表者は自分の発表が終わったら次の発表の司会進行を務めることになっています。高校生が司会を務め、小学生が発表する、学びの収穫祭ならではの光景が見られました。

会場からの質問も多く、活発な議論が行われました。

展示発表では33件の発表があり、コアタイムでは発表者が解説を行いました。ここでも活発な議論が行われ、今年も大盛況でした。


口頭発表後には交流会も行なわれました。学問分野や世代を超えた交流をすることができました。

様々な方々と議論や交流をすることにより、今後の活動の幅が広がったり、新たな方向性が見えたようです。学びの収穫祭が学問を志す人と人との橋渡しになれば嬉しく思います。

ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

24日はエントランスで10時30分〜12時に展示解説のコアタイムを、10時〜14時に二つのワークショップ、「土器の模様を写しとろう!」、「かるた遊びで,君も はやぶさ2博士に!」、を開催します。

また、地下大会議室では14時〜16時に学芸員講演会「勝坂に生きた縄文人」を開催します。講師は当館の長澤学芸員(考古担当)です。

皆様ぜひご参加ください!

なお、展示発表は12月27日(金)まで開催しておりますので、こちらもぜひご覧いただければと思います。

(地質担当学芸員)

※写真は全てご了承のもとブログに掲載しています。

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今日から、学びの収穫祭!

11月23日(土)、24日(日)は、毎年恒例の「学びの収穫祭」です!博物館を拠点に活動する市民グループや、学芸員が活動に関わっている学校や保育園、大学などが日頃の活動成果や研究発表を行います。前日の22日の閉館後には、市民グループのみなさんと学芸員で力を合わせ、会場設営を行いました。

展示パネルの設営

設営後は、展示発表の設営です。限られたスペースをみなさん工夫して使います。

続いて展示発表も設置

そして23日朝、各グループの力作がずらり。

保育園の発表も!

展示発表の様子(一部)

展示発表は年内まで続きます。そして、口頭発表会は本日10時15分から開始!楽しいワークショップなどもあります。どなたでも参加できますので、ぜひご来館ください!

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そろりそろりと進む紅葉

11月も下旬に入りました。
秋の前半の高温の影響か、木々の紅葉の進み具合がやや遅めです。それでも、いち早く赤く染まるウルシの仲間はとっくに紅葉し、すでに終わりかけています。こちらはウルシ科のヌルデという樹木です。

ヌルデ

こちらはコブシの黄葉です。明るい黄色に染まり、虫食い痕もアクセントになっています。

コブシ

樹木はまだまだこれからというところで、いつもならこの時期、だいぶ黄色くなってきているコナラやケヤキの葉は緑色の部分が多い状態です。
紅葉というと樹木のイメージが強いのですが、草でも美しい紅葉が見られます。こちらはヘクソカズラです。

ヘクソカズラ

全草に潜む強いにおいからひどい名前がついてしまっていますが、花は可憐で、果実は黄金色に色づき、葉はこうしてなんとも言えない絶妙な紅葉を見せてくれます。

ヘクソカズラ 葉の色に、黄金色の果実が美しさを際立たせます

こちらはヤマノイモです。

ヤマノイモ

黄色に緑色が入り組んでオシャレな模様になっています。
秋晴れと朝晩の冷え込みが、紅葉に加速度をつけます。これから日に日に色合いが変わっていくので、しばらく秋の色が楽しめそうです。
(生物担当学芸員)

 

 

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カラスに追われていたのは・・

  • 11月19日、市内ではありませんが、相模川を歩いていると、上空でカラスに追われている鳥がいました。こうした場合、たいていはカラスが“専守防衛”でタカを追い払っていることが多いのですが・・追われているは、タカとは明らかに違う飛び方で、妙に白っぽい・・

カラスに追われているのは・・

コミミズクでした!冬になると広い河原や農耕地などへ渡ってくる冬鳥で、日が傾く午後3時以降に飛ぶのが普通ですが、この日は午後1時半ころに飛んでいました。地面すれすれを飛びながらネズミなどを探すのですが、うっかり飛び出てカラスに見つかってしまったようです。

コミミズク

カラスをやりすごすと、すぅっとまた河原へ消えていきました。相模川ではあまり見られない鳥なので、思いがけず出会えてちょっと得した気分になりました。
(生物担当学芸員)

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東京港野鳥公園のイベントに磯野貴理子さんと登壇しました!

11月17日(日)、東京都大田区の都立東京港野鳥公園で第10回里地里山フェスティバルが行われました(公園から発信されたブログはこちら)。たくさんのイベントが企画される中で、トークイベント「教えて!バードウォッチングの楽しみ方」が行われ、タレントの磯野貴理子さんと当館生物担当学芸員が対談しました。

満員の会場はとても盛り上がりました

磯野貴理子さんといえば、フジテレビで日曜朝に放映されている国民的番組の「早く起きた朝は…」にレギュラー出演されています。近年、番組の中でもバードウォッチングに夢中というお話や、ご自身が撮影された野鳥の写真を紹介されています。そんな磯野さんとのお話は、身近な野鳥たちの魅力からあこがれの野鳥、そして野鳥をとおして考える環境問題へと広がり、密度の濃い時間となりました。

終始和やかな雰囲気で進行

磯野さんは、番組からも感じられる、竹を割ったような雰囲気の語り口そのままの方で、事前の打ち合わせの時から本番中、終了後までまったくそれは変わりませんでした。また、ご興味を持ったことへの探求心がとても強く、どんどん知識を吸収して経験を積んでいこうという前向きな姿勢に感銘を受けました。これからもぜひ、バードウォッチングの楽しさ、自然の大切さを広くお伝えしていただきたいと思います。
(生物担当学芸員)

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【甲州道中歴史講座】第2回「武蔵国甲州道中と日野宿本陣」を開催しました。

甲州道中歴史講座の第2回目となる「武蔵国(むさしのくに)甲州道中と日野宿本陣」を、11月17日(日)に開催しました。
この講座は、本市と日野市との共催によるもので、「相模原市×日野市 甲州道中本陣連携事業」の一環として連続講演会形式で行っています。この日も地域の歴史に関心がある方、江戸時代の街道に興味がある方など様々な参加者にお越しいただきましたが、とても嬉しいことに、前回に続いてご参加くださった方が何人もいらっしゃいました。第1回目の様子もこのブログで紹介していますので、よろしければご覧ください。

今回講師を務めたのは、本事業共催の日野市ふるさと文化財課課長で学芸員の金野啓史さんです。

この日もたくさんの方にご参加いただきました!

前回の歴史講座では、主に本市域の甲州道中と宿場、小原宿本陣について紹介しましたが、「武蔵国甲州道中と日野宿本陣」というタイトルのとおり、今回は日野市域のお話がメインとなります。相模原市での開催ということで、まずは多摩川と浅川の合流地点にある日野市の地形や、地理的観点からの歴史について概説いただきました。

日野宿本陣について紹介しています。

その後、武蔵国と相模国(さがみのくに)の街道の宿駅比較から、日野宿のお話へ。渡船場・物流拠点・政治拠点としての視点、そして、“新選組のふるさと”日野市ならではの新選組との関わりから、日野宿が担った役割について解説いただきました。
また、日野宿に存する日野宿本陣は、甲州道中における東京都唯一の現存本陣で、建物が日野市指定有形文化財(建造物)に、「日野宿脇本陣跡」の名称で東京都の史跡にも指定されている貴重な文化財です。金野さんの講義を聴いて、町割りなどに江戸時代の面影を残す日野宿本陣周辺をまち歩きしてみたくなったという方も多いのではないでしょうか。

日野宿本陣(当館学芸員撮影)

さらに、日野市立新選組のふるさと歴史館では、令和7年1月26日(日)まで特別展「甲州道中日野宿と本陣」を開催しています。この特別展は本連携事業の一つに位置づけられ、本日の講座にも関連した内容となっていますので、講座に参加された方もご都合が付かなかった方も、ぜひお運びいただきたいと思います。

次回、第3回目の甲州道中歴史講座は「建築史からみた本陣建物」のテーマで、東京工芸大学教授の海老澤模奈人(えびさわ もなど)さんを講師にお招きします。第1回・第2回とはまた違った視点から小原宿本陣と日野宿本陣について紹介します。どうぞお楽しみに!

(歴史担当学芸員)

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