キヌガサタケ

キノコ好きにとって心ときめく憧れの存在と言えるものがいくつかあります。その代表格が、キヌガサタケです。レースのマントをまとうような立ち姿と、それが朝から広がり始め、午後にはしぼみ始めてしまうはかなさも、憧れを掻き立てる要因です。
6月19日朝、そんなキヌガサタケが緑区のある場所で発生していると連絡をいただき、いてもたってもいられずに現場へ写真を撮りに行きました。

キヌガサタケ

本種の発生場所は主に竹林で、果たして斜面のマダケの群落の中にたくさん発生していました。思いのほか日当りの良い場所で、付近には異様な臭いが漂っています。

マダケの切り株に寄り添うように発生していました

それは傘にあたる部分の「グレバ」と呼ばれる粘液が、強い悪臭を放っているからです。これでハエを集め、胞子の分散をハエに担ってもらっているのです。妖艶な姿に悪臭・・なんともアンバランスなキノコです。
発見者から承諾をいただき、標本用に採集しました。

卵から発生するような独特の姿です

さて、どうやって乾燥させるか・・熱風乾燥機に入れると室内にとんでもない臭いがたちこめそうです。かといって天日干しでは、大量のハエを呼びこんでしまいます。
とりあえず、チャック袋にシリカゲルとともに入れておきました。果たして期待どおりに乾燥してくれるか・・見守りたいと思います。
(生物担当学芸員)

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大学生の博物館見学実習

6月15日(土)、当館にも程近くの桜美林大学で学芸員課程を履修されている皆さんが見学実習のため来館しました。
先月も別の大学が当館で行った実習の様子をブログでお伝えしましたが、今回は資料の取り扱いではなく、博物館や学芸員が担う役割、当館のボランティア活動など、博物館業務の総合的なことについての学習です。

この来館実習では、はじめに概説(座学)をした後、1時間かけてじっくりバックヤード見学を行いました。

轟音とともに博物館のために動く機械設備たち。

まずは、案内を担当した生物担当学芸員イチオシの空調機械室の見学です。ここは、通常のイベントとして実施しているバックヤードツアーでも立ち入ることがない、いわば博物館の心臓部です。常に温湿度管理を必要とする収蔵庫内の調温などをつかさどる冷温水発生機や、異常がないか24時間体制で監視するためのコントロール室などを見て回ります。

博物館の心臓部分にあたる冷温水発生機です。

その後、資料の搬出入のためのスペース、受け入れた資料の洗浄や燻蒸(くんじょう)を行うための部屋、当館が収集した分野別の資料の収蔵庫などを見学しました。
バックヤードツアーというと、ついつい資料がズラリと並ぶ収蔵庫に目が行きがちですが、収集した資料に対する作業のためのスペースや、資料を後世に引き継ぎ、活用できる状態を維持するために必要なこと、有事の際の安全設備についても紹介しました。

しっかりメモを取って見学しています。

博物館の中で利用者の方が目にしている部分はほんの一部で、皆さまにとっても資料にとっても、博物館が安心で快適な場所であるためにはどのような工夫が凝らされているのかということを知っていただけたようです。

(歴史担当学芸員)

※画像は全て了承のもと掲載しています。

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清流のアオハダトンボ

市内にはアオハダトンボというトンボのなかまが生息している河川があります。
そろそろ成虫が羽化する時期ということで、生息状況の確認に向かいました。

川沿いを探しながら歩いていきます。
なかなか見つからないので「少し時期が早かったかな」などと話していると、
ひらひらとオスが飛んできました。

順光をうけ、翅が青く輝きます

オスの翅(はね)は一見真っ黒ですが、青色の光沢があり、太陽光を受けて翅が輝く様子は実に見事。

涼しげなアオハダトンボ

調査当日は気温がかなり高かったのですが、風を受けながら川にせり出した葉っぱにとまるトンボはとても涼しげです。
撮影者も長靴で川に入っているので足元はひんやり。思わず時間を忘れて見入ってしまいました。

そうこうしていると、メスも飛んできました。

アオハダトンボのメス

メスの翅には青い光沢はないのですが、翅の先端に白い「偽縁紋(ぎえんもん)」があり、とても良く目立ちます。
以前のブログで紹介したミヤマカワトンボと同じ特徴です。

神奈川県では絶滅危惧Ⅱ類に選定されているアオハダトンボ。
今後も市内に生息し続け、美しい姿を見せてほしいです。

(動物担当学芸員)

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6月18日 カイコ19日目 4眠から5齢へ

給桑開始から19日目、カイコは概ね半分が眠、半分が5齢に脱皮をしました。

4回目の眠に入っているカイコ

眠の間は給桑を停止するので、脱皮した5齢のカイコは、新鮮なクワが無いかと頭を振っています。しかし、ここで順次食べさせてしまうと成長がばらつくので、ほとんどが脱皮を済ませるまでは給桑を再開しません。

5齢に脱皮したカイコ 頭の大きさが際立ちます

6月18日は朝から大雨の1日ということが前日の天気予報でわかっていたので、すでに給桑再開のためのクワの葉は取ってあります。早く食べさせてあげたいのですが、こちらもいましばらくの我満・・
ところで、カイコは餌が与えられなくても、決して逃げて探しに行ったりはしません。展示中の飼育容器はすでに開放しています。

飼育展示中のカイコ

5千年に及ぶと言われる飼育の歴史の中で、そうした性質も完成されてきているのでしょう。
遅くとも、明日の朝には給桑を再開する予定です。これから1週間がラストスパートとなります。
(生物担当学芸員)

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ツミvsツバメ

6月13日、緑区の佐野川地区へ動物調査へ出かけました。その際、地元の方とお話ししていると、上空からなにやら切羽詰まった鳴き声が聞こえてきます。見上げると、ツミのまわりをツバメが群でスクランブルしていたのです。

ツミ(右下)のまわりを飛ぶツバメ

ツミは先日、このブログでも紹介した小型のタカで、小鳥を主食としています。写真を拡大してみると、がっしりと足につかまれた小鳥が見えます。

獲物をつかんで飛ぶツミ(メス成鳥)

どうやら、ツバメの、おそらく巣立ったばかりのヒナを捕まえたのでしょう。親や、近隣のツバメが怒ってツミへモビング(疑似攻撃)をしかけているようです。

今年生まれのツバメ 喉の赤味が淡く、尾の燕尾が短い

巣立ち直後は、野鳥にとって最も危険な時期です。一方、ツミも繁殖期なので、食糧の確保のために懸命です。野生の厳しさを改めて感じるこの頃です。
(生物担当学芸員)

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ニホンザルのお食事

6月12日に、宮ヶ瀬湖畔で動物の調査を実施しました。湖畔道路で、ニホンザルの群に遭遇しました。20頭ほどの群が、道路法面でイネ科(ウシノケグサの仲間)を食べていました。

ウシノケグサの仲間を食べるニホンザル

穂を手繰り寄せ、歯でしごいて小穂(しょうすい)を食べます。動画を録ったのでご覧ください。

距離は20メートルも離れていなかったのですが、こちらをまったく気にすることなく、しばらくの間食べ続けていました。
宮ヶ瀬湖畔はフサザクラが多く自生しています。若い葉の一部が赤く、青空に映えていました。

フサザクラ

(生物担当学芸員)

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生きものミニサロン「梅雨入り前の元気な葉っぱで遊ぼう!」を実施しました

6月15日、毎月恒例の「生きものミニサロン」を実施しました。
今回のテーマは「梅雨入り前の元気な葉っぱで遊ぼう!」です。
このところの日の光をあびて、博物館のまわりでは植物が元気に育っています。
まずは、みんなで葉の手触りを確かめます。

一番ツルツルの葉っぱはどれだろう?

一番ざらざらだったのはムクノキの葉っぱのようです。反対に、一番ツルツルだったのはツバキの葉っぱ。
この2枚の葉っぱを使って、爪磨きをしてみました。

葉っぱで爪磨き

大人の爪はつるつるになっていましたが、子どもたちのもともときれいな爪にはあまり効果がなかったようです。

次に、少々元気よくのびすぎな葉っぱを少しもらって、簡単な工作をしてみました。

ツバキの葉っぱをチョキチョキ

出来上がったのはサンダルです。
足は入らないかな~と思いきや、赤ちゃんにはピッタリ!とてもかわいらしかったです。

ぴったり!

最後に、シャガの葉を使ってカタツムリづくりに挑戦しました。

上手にできるかな?

ちょっと難しい工作に皆さんやや苦戦していましたが、それぞれかわいいカタツムリができました。

思い思いのカタツムリ

さて、次回の開催は7月20日(土)12時からです。ぜひご参加ください!

(動物担当学芸員)

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ガガンボカゲロウ!?

先日、津久井地域で昆虫の調査を実施しました。
目的は、「ガガンボカゲロウ」という昆虫の生息状況の確認です。
ガガンボのなかまなのか?それともカゲロウのなかまなのか?
迷ってしまう名ですが、その正体はカゲロウのなかまです。
カゲロウのなかまは幼虫が水の中に住む水生昆虫で、その成虫も水辺の近くに生息しています。
なかでも、今回の目的のガガンボカゲロウが好きな環境は、下の写真のような小さな沢沿いです。

ガガンボカゲロウの生息環境のイメージ

執筆者の私がガガンボカゲロウを探すのはこの調査がはじめて。
ドキドキしながら探すと、、、

ガガンボカゲロウ発見!

いました!ガガンボカゲロウです。
その後も続々と別個体が見つかり、市内に安定して生息している様子が確認できました。

別の個体

普通、カゲロウのなかまは4枚の翅(はね)をもっていますが、この種は後ろの翅がとても小さく退化しているので、2枚しか翅が無いように見えます。

実は、ガガンボカゲロウは、神奈川県で絶滅の危機にある生物を示した神奈川県レッドデータ生物調査報告書2006で「注目種」に選定されています。
今後も市内で無事に生息していけるよう、「注目」していきたいと思います。
(動物担当学芸員)

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6月14日 カイコ15日目 折り返しを過ぎました!

6月14日、給桑開始から15日目となり、繭を作るまでの1か月弱の期間の、すでに折り返しを過ぎています。前日の、3眠から明けたばかりのカイコです。まだ頭ばかりが大きく見えます。

脱皮したばかりのカイコ(6月13日)

脱皮殻が葉の上にたくさんついていました。

脱皮殻

新しい葉を与えると、すぐにモリモリと食べ始めました。

4齢になって最初のお食事

そうして24時間経った14日の朝、また少し大きくなりました。全長は3センチメートルを超えています。

6月14日朝のカイコ すでに少し大きくたくましくなっています

これから今週末まで食べ続け、来週月曜日(6月17日)には眠に入ります。そして来週前半にいよいよ、5齢(終齢)となります。
(生物担当学芸員)

 

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令和6年度地質学講座 3回目

6月9日(日)に令和6年度の地質学講座の第3回目を開催しました。相模原市緑区の青山親水公園付近で古第三紀(約3千万年前)の相模湖層群の地層を観察しました。

神奈川中央交通の道志橋バス停からスタートして青山親水公園へ向かいました。

この辺りの相模湖層群の地層は、地殻変動により褶曲(しゅうきょく)して大きく波打っています。そのため地層の向きが狭い範囲で目まぐるしく変わります。青山親水公園へ向かう途中の道沿いで、地層の向きが変わる様子を確かめながら歩きました。

青山親水公園では、道志川に張り出している岩場で相模湖層群の泥岩を観察しました。もともと海底で水平に堆積した地層が、地殻変動によりほぼ垂直になっています。

青山親水公園の対岸では、砂と泥が交互に海底で堆積した地層を見学しました。ここの地層もほぼ垂直に立っています。まず、泥と砂が数センチ間隔で交互に堆積している様子を観察しました。

ここでは、1メートルを超える厚さの砂岩の地層も見られます。

最後に道志川の川原に降りて相模湖層群と丹沢山地をつくっている地層の境界付近を見学しました。川が深くて近づけないので対岸からの観察です。写真の左端あたりが地層の境界です。

一瞬だけ小雨がぱらつきましたが、ひどく降られることもなく、この日も無事に野外観察会を終了することができて良かったです。

第4回目の最終回は相模原市立博物館でまとめの講義を行います。

(地質担当学芸員)

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