ネナシカズラの根が消える時

アメリカネナシカズラという長い名前の植物があります。ヒルガオ科のつる性の1年草なのですが、寄生植物で、正真正銘、根無し草。
といっても、種子植物なので、初めは地面から芽が出るわけで、根っこもあるはず。いったいいつ根無し草になるのかを見たくて、昨年、種子を博物館のプランターに蒔いておきました。今朝、にょろにょろ伸びたつるを見つけて・・黄色いヒモのようなものがアメリカネナシカズラの茎です。葉っぱは退化してありません!

植物というよりも、ハリガネムシのような雰囲気です。でも、ちゃんと伸びる方向に見て右巻き。ヒルガオ科であることの証しです。

すでに吸着根で台になったコセンダングサから水分や栄養を吸い取れるようなっています。ということは・・

地面から伸びている茎がすでに枯れています!さらにアップにすると・・・

もうちょっと早く気付けばよかったのですが、それでもネナシカズラが根無し草になったまさしくその時を撮影できました!
じつは、個人的につる植物が好きで、中でもヒルガオ科は一番お気に入りの分類群です。さらにその中でも、「究極のつる植物」と密かに呼んでいるのが、ネナシカズラのなかまです。今朝はその重要な瞬間を撮影できたので、とても気分の良い一日となりそうです!
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | ネナシカズラの根が消える時 はコメントを受け付けていません

開花情報 アキノタムラソウ

博物館お隣の樹林地の林床に、爽やかな青い色の穂がチラホラと立ちはじめました。

シソ科の野草、アキノタムラソウです。今咲いているのに、「秋の」とはこれいかに?

同じなかまにナツノタムラソウもあるのですが、山間に分布していてこのあたりには無い花です。この二つの種の和名を詳しく述べると、アキノタムラソウは「秋まで咲くタムラソウ」、ナツノタムラソウは「夏だけ咲くタムラソウ」です。

アキノタムラソウは、早い場所では5月下旬から咲き始めます。これから断続的にピークを幾度か迎えつつ、10月くらいまで開花する株が見られます。花期の長い花ですね。博物館お隣の樹林地の見頃は8月半ばあたりまででしょうか。小さな花ですが、よく近づいて見るとシソ科特有の複雑で美しい花を楽しむことができます。

(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 今日の博物館 | 開花情報 アキノタムラソウ はコメントを受け付けていません

地質調査日誌7/13 真鶴

7月13日,日曜日.曇り時々雨.

真鶴町へ石材と石切り場跡の調査へ出かけました.相模原地質研究会,相模原青陵高校地球惑星科学部,横浜市歴史博物館民俗に親しむ会の皆さんと一緒に出かけました.
真鶴は小松石と呼ばれる石材が切り出されていたところで,現在でも採掘されています.小松石というのは石材名で,地質学的な岩石名は安山岩になります.

午前中は真鶴町の岩地区の調査です.

兒子神社では流理構造(マグマの流れによってつくられる模様)が見られる小松石が使われていました.

瀧門寺参道に架かる橋も小松石でできています.

如来寺跡では凝灰角礫岩をくりぬいて造った石窟に石仏が安置されています.この凝灰角礫岩は酸化されて赤色化しています.

岩海岸の砂浜は近くの赤色化した岩石が砂粒となって含まれているため,赤みがかった色をしています.

午後からは真鶴半島に行きました.小松石でも,東海道本線よりも山側で採れるのが本小松石,真鶴半島で採れるのが新小松石と呼ばれており,岩石の性質が異なります.これは,それぞれの小松石が異なる噴火によって形成された溶岩であるからです.本小松石は本小松溶岩グループ,新小松石は真鶴溶岩グループと地質学的に名付けられた岩体から採掘されています.どちらの溶岩グループも23〜13万年前に形成されました.

船に積み込まれるのを待つ小松石たちです.

貴船神社で見られた新小松石の石造物は風化により,溶けるようにえぐれていました.

この地域の石造物はほとんど小松石でできていますが,貴船神社にあった一対の狛犬だけは砂岩でできていました.台座の部分は小松石です.

山下浜では海岸沿いに採石場跡が見られます.クサビの跡が残っています.

山側も採石されています.

この後,番場浦の採石場跡へ行く予定でしたが,雨が強く降ってきたので,断念しました.別の機会に訪れたいと思います.

(地質担当学芸員 河尻)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 地質調査日誌7/13 真鶴 はコメントを受け付けていません

野生の(?)クモタケ

4月9日に、このブログで紹介したクモタケ。本来の発生時期は今頃なので、件のクモを採集した場所を毎日のように注意して探しているのですが、どうにも見つかりません。この辺りがクモタケの不思議なところ。キシノウエトタテがいるから必ず見られるわけではありません。感染個体がいた場所すらこうなのです。
ところで、昨日、県内某所でクモタケの写真を撮ったのでお見せします。

20140714-094542-35142112.jpg
生えてからちょっと時間が経っているらしく、勢いは今ひとつ。

20140714-095013-35413090.jpg
こっちもだいぶ胞子が出て毛羽立ってますが、出たての頃はもっとすっきりしたシルエットです。
野外ではどんな感じで見られるか、おわかりいただけたでしょうか。もし見かけたら「あ、あいつだ!」と思ってください。ちょっと自慢できるかもしれません。(学芸班 木村)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | タグ: , | 野生の(?)クモタケ はコメントを受け付けていません

インタープリター養成講座

今日は横浜市環境創造局が主催するインタープリター養成講座のお手伝いに、横浜市栄区の上郷森の家へ行ってきました。他市の事業ですが、こういった事業は応用の仕方によって博物館や相模原市の事業の参考になるため、依頼を受けた時は積極的にコミットするようにしています。私の役割は、生物多様性の概念と、多様性を意識したインタープリテーションの考え方についての午前の講義を担当することです。

午後は、森林インストラクターの野呂さんの指導による実習です。身近な自然素材を使ったインタープリテーションでは、私も使ってみたいネタがもりだくさん!やっぱり、来て良かった!

クズの茎の維管束が粗い空洞の構造であることを使ったシャボンの泡遊び。10mにも及ぶつるを維持するための構造を、体験を通して実感できます。

充実した講座を終えて相模原に戻ると、空にはきれいな夕焼け雲。立体的な高積雲の連なりがなんとも言えない美しさを演出していました。

(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | インタープリター養成講座 はコメントを受け付けていません

「太陽にいどむ」始まりました。

20140712-200940-72580003.jpg
いよいよ今日から企画展「太陽にいどむ〜日時計から太陽観測衛星まで〜」が始まりました。

20140712-201043-72643799.jpg
一番乗りはなんと、子どもたち。しかも動線を無視して、一番最後のコーナー「全身・太陽圏」にまっしぐら。君たち、これがあるの知ってたの?

20140712-201117-72677442.jpg
こちらは団体のお客様。

20140712-201249-72769836.jpg
一般の(?)お客様も、もちろんいらっしゃいました。

お天気も比較的良く、太陽をテーマにした展示にはぴったり…。
「晴天時は来館者が少ない」と言われますが、400人以上の皆さんに来ていただけたので、まずまずの出だしだったのではないかと思います。こんな暑い日には涼しい博物館でゆっくりするのも良いかもしれませんね。
これから8月31日の会期終了まで、おりをみて会場の様子や展示を紹介したいと思います。(学芸班 木村)

カテゴリー: 今日の博物館 | タグ: , | 「太陽にいどむ」始まりました。 はコメントを受け付けていません

星空観望会、盛況ですが…

昨年度から事前申し込み制をやめて、当日受付にした星空観望会。だんだん認知度が上がってきたのか、雨の日でも20〜30人、晴れた日には定員の120人を、あっという間に超えてしまい、受付をお断りしなければならない事もあります。
心配なのは次回7/19(土)。実質上、夏休み初日と言ってもよい土曜日。お天気次第では「あっという間に定員」になりそうで、今から申し訳ない気持ちになりかけてます。もしそうなったら来年度はやり方を考えないとなあ、と思っています。
夏休み真っ最中の8月は毎週開催(5回開催)の上、事前申し込み制なのでそんな心配はないのですが…なんと、逆の心配が!
どういう訳か、申し込みが伸びないのです。7月1日の市の広報紙に載ってから9日までの間で、半数もいかない。
どんなイベントでも感じる事ですが、人の動向は、本当に読めないものだなあ、と思います。
というわけで、「夏休み星空観望会」はまだ申し込めます。昼間、さがぽんがつぶやいていたのは、そんな裏事情があったからです。ありがとう、さがぽん。
詳しい申し込み方法は、こちら
星空観望会ってどんなことやるの、という方は、こちらをご覧ください。
どうでしょう、これを機会に博物館で星空を見上げてませんか?(学芸班 木村)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | タグ: , | 星空観望会、盛況ですが… はコメントを受け付けていません

台風一過の雲コレクション

台風8号は予定通り、列島をなめるように通過していきました。今朝から台風一過の博物館上空は、強烈な夏の日射しとともに雲が生まれては消え、めまぐるしく入れ替わっていきました。ほんの一瞬、屋上で眺めた空ですが・・まずは、JAXA上空に見えた巻雲の鈎状雲。

北の空には積雲の並雲が発達して雄大雲になりかけています。このまま発達を続けると、雲の下ではしゅう雨があるかも。

西の空には、高積雲の塔状雲が発達していました。でも、あっという間に消えてしまいそう。積雲の断片雲がちょっと放射状でかっこいいですね。

今日は気圧も一気に上がり、上空の大気もやや不安定。写真の雲も、撮っているそばから変化していきました。ほんとうはゆっくりと眺めていたかったけど、時間もないし、その前に暑すぎてとても長時間の観察ができる状態ではありませんでした。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 台風一過の雲コレクション はコメントを受け付けていません

雨の日クモの巣コレクション

お天気がぐずつくこの季節。今日はそれに加え台風の影響で空気がじっとり、朝から霧雨でした。
でもそのおかげで、細かな水滴をまとってキラキラ輝くクモの巣がいっぱい。霧雨から小雨に変わる中、思わず傘もささずに写真を撮りまくってしまいました。

20140709-222951-80991653.jpg
ワキグロサツマノミダマシ。

20140709-223024-81024870.jpg
コクサグモ。

20140709-223111-81071477.jpg
ジョロウグモ。

20140709-223211-81131344.jpg
ヒメグモ

20140709-223321-81201881.jpg
シロブチサラグモ。

20140709-223534-81334819.jpg
キララシロカネグモ。

今日は水滴がついているものだけ紹介しましたが、みんな違う形をしています。
改めてクモの多様さを実感しました。
いや、難しい事は抜き。今日は霧雨のおかげできれいなものをたくさん見る事ができました。
これが出勤途中でなければもっとずーっと見てたのに…(学芸班 木村)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | タグ: , , | 雨の日クモの巣コレクション はコメントを受け付けていません

カワラノギクのための汗

今日午前中、絶滅危惧種カワラノギクの保全圃場がある相模川の神沢河原へ行ってきました。今回は調査ではなく、作業です。去年夏から手を入れてなかったので、圃場内のネムノキやアカメガシワ、テリハノイバラが伸び放題。

今日は人手がちょっと少なく3人でした。なので、上記の低木とイタドリなど大きめの草本を除去するのが精一杯。アフターの写真ですが・・

あんまり変わっていない!と思われるかもしれません。というのも、無数の小さなコセンダングサはまたの機会としたからです。なにせ、曇っているとはいえ、1時間半ほどの作業で来ていたシャツがびっしょりになるくらいの汗をかきました。これ以上続けるとバテてしまいそうということで、とりあえず、今年咲くシュートの日照を確保しました。

地を這うヒメハギは、なんだかとる気になれず、そのままに。ちょっと不公平とは思いますが・・。

こうして大汗をかいて草抜きをしても、大雨や台風で上流のダムが放水して冠水すれば、きれいさっぱり洗い流されてしまいます。そんな時はあらためて、川の流れのパワーを実感します。さて今年はそんなフラッシュアウトがあるのでしょうか?
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | カワラノギクのための汗 はコメントを受け付けていません