野鳥の表情

10月30日~11月2日まで、この季節恒例となっている、鳥類標識調査を博物館お隣の樹林地で実施しました。鳥類標識調査は、環境省が山階鳥類研究所へ委託している調査で、資格を持った全国のバンダー(鳥類標識調査者)がボランティアで従事しています。野鳥を捕獲して足環をつけ、放鳥します。再捕獲、あるいは足環を回収できれば、その野鳥の移動の様子や生存期間などがわかるのです。
今回の調査で捕獲した野鳥の中から、素敵な表情を見せてくれた個体を紹介します。こちらはエナガです。

エナガ

野外で観察していても、とても小さい鳥ですが、手元で見ても本当に小さな鳥です。
こちらはだいぶ大きなアカハラです。

アカハラ(亜種オオアカハラのようです)

山地などで繁殖し、冬の間、低地に下りてきます。大きな目が印象的ですね。
こちらはクロジです。北方や高標高地で繁殖し、秋から春にかけて、樹林地内で越冬します。

クロジ

日によって捕獲される種類が大きく異なるので、この時期は野鳥たちの入れ替わりが激しいようです。
冬鳥だけではなくて、残留している夏鳥もいました。キビタキです。

キビタキ(若鳥)

体重を計ってみると、通常よりだいぶ重く、樹林地内のミズキの果実などをたくさん食べ、間もなく始まる渡りに備えているようです。
ふだん間近で見ることの少ない野鳥を手もとで観察できるので、雌雄の違いや成長の度合いによって異なる羽色の様子など、この調査ではいろいろな発見があります。
(生物担当学芸員)

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ホシホウジャク

10月28日、お隣、八王子市の長池公園を歩きました。園内で咲いていたヤクシソウの花に、ホシホウジャクが飛んできていました。

ヤクシソウの蜜を吸うホシホウジャク

この仲間は一見、ハチのように見えるけど、スズメガの仲間です。そのため「蜂雀(ほうじゃく)」と呼ばれます。目に見えないくらいの速さで翅(はね)を動かしてホバリングしながら、長いストロー状の口で蜜を吸っています。
カメラのシャッタースピードを上げて上から撮ってみると、翅(はね)や背面全体がかなりおしゃれで美しいことがわかります。

上から見たホシホウジャク

そばにいた人が、花から花へと移る際に近づいてきたホシホウジャクを「うわっ」と声を上げて避けていました。それくらい、ハチに似ているということでしょう。
飛んでいる虫をもう1種。ホソヒラタアブです。

アザミの花に近づくホソヒラタアブ

こちらもホバリングして、どの花にとまろうかと見定めているようで、空中の1点にきれいに止まっています。アブと名に付きますが、動物を刺すことはなく、花の蜜をなめる、とても穏やかでかわいらしい昆虫です。
秋の花の開花がまっさかりで、暖かい日中は昆虫たちの動きも活発になっています。
(生物担当学芸員)

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博物館周辺でも秋の花

博物館周辺の樹林地にも秋の花がいろいろと咲いています。こちらはベニバナボロギク。

ベニバナボロギクの綿毛(上)と花(下)

へんな名前です。ベニバナは花の紅色からきているがわかるものの、ボロギクとは・・この花や種子の様子が特段ボロだとは思えません。植物の種名には、こうした根拠のよくわからないものがよくあります。
歩いていると、足元から独特の香りが漂ってきました。その主は、ナギナタコウジュです。名の由来は、花全体が長刀(なぎなた)を思わせるからということでしょう。

ナギナタコウジュ

ハーブ?とも言えなくもありませんが、かなりクセの強い匂いです。昔から梅干しの香りづけなどに使われてきたそうです。
こちらはノコンギクです。

ノコンギク

じつは、この写真よりもずっと淡青紫色の花色が美しいのです。しかし、この色は写真で表現するのがとても難しいのです。明るめに設定すると白くなってしまい、暗めに設定すると、ある程度青っぽくはなるものの、画面全体が暗くなり、それもちょっと実際の花の印象とは異なるものになってしまいます。
花ではありませんが、夏の間元気につるを伸ばして咲いていたコボタンヅルが、静かに実っていました。

コボタンヅルの果実

冠毛がオシャレです。しかし素朴な疑問として、この果実に対してこの冠毛では上の写真のベニバナボロギクやタンポポの綿毛のように、空を飛べそうにありません。飛ぶことよりも、何かにひっかかることが目的なのか?ただし、ひっつき虫のような機能でもなさそうです。
身近な植物にも、まだまだ「?」があふれています。
(生物担当学芸員)

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秋深まる 霜降

夏がなかなか終わらないと思っていた9月から、10月に入って急に秋めいてきました。二十四節季の霜降(そうこう)は、今年は10月24日でした。霜が降りるほどではないにしろ、朝晩の涼しさは紛れもなく秋の深まりを感じさせます。そんな10月25日、市内緑区に隣接する町田市の沢沿いを歩きました。すると、秋を代表するキクの仲間、ヤクシソウがたくさん咲いていました。

ヤクシソウ

沢沿いにはヤマアカガエルがいました。彼らが活動するにはすでに気温が低いのでしょう。ちょっと動きが鈍く、ゆっくり写真を撮らせてくれました。

ヤマアカガエル

最低気温が5度を下回るようになると、カエルの仲間の多くが冬眠に入ります。もうそんな季節が目前になっているようです。
(生物担当学芸員)

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【市民学芸員かわら版】この地名なんと読む?

突然ですが、「日連」、「三ケ木」、「鳥屋」と書いて、何と読むかご存知ですか?
これらは全て相模原市内にある地名なのですが、読み方が難しい、いわゆる難読地名です。

当館の博物館ボランティア「市民学芸員」の情報発信チームによる『市民学芸員かわら版』は、今回、相模原市内の難読地名をテーマにしています。

博物館1階情報サービスコーナー入口横が定位置です。

上半分は地名の標識や看板と対応する場所が地図上に示されており、下半分で答え合わせをする構成になっています。皆さんはノーヒントでいくつ読めるでしょうか?

変わった読み方の地名、いくつ読めますか?

全問正解で周りの人に自慢できる!?『市民学芸員かわら版 この地名なんと読む?』に挑戦してみてください。冒頭の地名の答え合わせにも、ぜひご覧いただければと思います。

また、市民学芸員情報発信チームでは、早くも次号の製作に向けて準備中です。入れ替えの際には本ブログでお知らせしますので、楽しみにお待ちください。

(歴史担当学芸員)

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桂内閣弾劾から110年…ミニ企画展「憲政擁護運動と尾崎行雄(咢堂)」を開催中です。

令和5年は、本市緑区又野出身の政治家・尾崎行雄(咢堂)が議会史上に残る「桂太郎内閣弾劾演説」を行ってから110年の節目にあたります。このことにちなみ、相模原市立博物館では10月21日(土)からミニ企画展「憲政擁護運動と尾崎行雄(咢堂)」を開催しています。

憲政擁護運動と尾崎行雄(咢堂)

このミニ企画展では「議会政治の父」、「憲政の神様」と称される尾崎が関わった憲政擁護運動のうち、第一次護憲運動を中心とした出来事について紹介しています。企画・運営は、昨年もミニ企画展を担当した「尾崎行雄を全国に発信する会」が務めました。

正面入口から見てエントランスホールの右手側が会場です。

パネル展示では、第一次護憲運動の起こりから第2次西園寺公望(さいおんじきんもち)内閣の成立、桂太郎への首相交代、そして尾崎行雄による桂内閣弾劾演説を経て内閣総辞職まで、尾崎の行動に焦点を当てて解説しています。本ミニ企画展のポスターにも使用している「咢堂十二景」の一つ、「桂内閣弾劾演説」(山尾平氏画、(一財)尾崎行雄記念財団提供)では、尾崎が桂首相を指差して糾弾するまさにその瞬間が力強く描かれており、「玉座(ぎょくざ)をもって胸壁(きょうへき)となし、詔勅(しょうちょく)をもって弾丸に代えて、政敵を倒さんとするものではないか」の一節が有名な弾劾演説(抜粋)とともにパネルをご覧いただけます。

桂内閣弾劾演説(山尾平 画、(一財)尾崎行雄記念財団提供)

このほかにも、第一次護憲運動で尾崎とともに陣頭に立ち、「憲政の二柱(ふたはしら)の神」と並び称された盟友・犬養毅とのツーショット写真も、犬養木堂記念館のご協力によりパネル化して展示しています。

また、今回の展示資料は当館が多数所蔵する尾崎ゆかりの資料の中から、‟演説の名手”としての一面が垣間見える品々を厳選しました。小村寿太郎外務相との最後の問答となった、1911(明治44)年1月24日「外交の経過に関する演説」を受けての質問の原稿など、貴重な実物資料をご覧いただくことができますので、ぜひ足を運んでいただければと思います。

展示資料の様子

そして、10月28日(土)午後2時~午後3時は、本ミニ企画展の企画・運営を担当した「尾崎行雄を全国に発信する会」事務局長 大橋氏による展示解説会を行います。展示には収まりきらなかった、憲政擁護運動における尾崎の活躍をたっぷりとお聞きいただける1時間になっています。事前の申し込みは不要ですので、ご希望の方は当日直接会場までお越しください。展示解説会に関する詳細はこちらをご確認ください。

今月下旬から来月にかけて、当館では企画展をはじめ、館内だけでも複数のミニ展示の開催やイベントが予定されています。12月からの臨時休館まで1ヶ月半を切りましたが、お楽しみいただける様々な催しを用意してお待ちしています。ぜひご来館ください!

(歴史担当学芸員)

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川原石のふしぎ〜自分だけのお気に入りの石図鑑をつくろう〜

10月21日に「川原石のふしぎ〜自分だけのお気に入りの石図鑑をつくろう〜」を開催しました。相模川の川原の岩石でオリジナルの図鑑を作るイベントです。相模原市教育委員会の旧石器ハテナ館の主催事業で、相模原市立博物館の学芸員が講師を務めました。

旧石器ハテナ館近くの相模川の川原で岩石を採集します。その前に相模川の川原で見られる岩石の説明をしました。

図鑑はA4サイズぐらいの箱で作ります。あまりにたくさんの種類の岩石を採集しても収まりきらないので、相模川の川原で見られる代表的な岩石で、箱に収まるような手頃な大きさの岩石を採集します。

旧石器ハテナ館に戻り、箱の中に岩石を木工用ボンドで貼り付けて図鑑を作ります。川原の石は上流から運ばれてきたものです。相模川や上流の山々をイメージした絵を描いたり、岩石の配置を考えたりしながら図鑑を作りました。

家族で相談したりして、楽しみながら図鑑を作っていました。

身近なところにも多くの種類の岩石が見られることを知っていただけたようです。今回のイベントを通して地質学に興味を持ってもらえればと思います。

(地質担当学芸員)

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【学習資料展】関連イベントのぶんぶんゴマと写真撮影も好評です!

相模原市立博物館では、10月21日(土)から令和5年度学習資料展「子どもの遊び いま・むかし」を開催しています。

例年、学習資料展では展示をご覧いただくほか、博物館ボランティア「市民学芸員」との協働による、お楽しみの関連イベントをご用意しています。本年は、恒例の「ぶんぶんゴマで遊ぼう!」と、「冬の居間のジオラマで写真撮影」の2本立てを全3日間開催いたします。
10月22日(日)はその初日でしたが、学習資料展が始まってから最初の日曜日ということもあり、ご家族で訪れてくださったたくさんの方で賑わいました。

上手に回しています。

「ぶんぶんゴマで遊ぼう!」では、自分で好きな色に塗ったぶんぶんゴマを実際に回して遊びます。勢いよく回転させるには力加減など少しコツが要るようですが、ぶんぶんゴマ現役世代である市民学芸員の補助もあり、初めて遊ぶお子さんもとても上手に回せていました。

お父さんもコツをつかんだようです。

 

また、「冬の居間のジオラマで写真撮影」では、市民学芸員力作のジオラマに入って記念撮影することができます。このジオラマも学習資料展では恒例で、毎年テーマを変えて市民学芸員が制作しているものです。
今回は昭和30~40年代の冬休みの居間を再現しており、ご家族でこたつを囲んだほっこりとする風景を撮影いただけます。ジオラマに入ることができるのはイベント時のみですので、貴重なチャンスにぜひお越しください。

ご家族で素敵な1枚が撮れました。

学習資料展の関連イベントは、11月5日(日)と19日(日)にも実施します。11月19日(日)は同日に「学びの収穫祭」も行っていますので、来月もどうぞお楽しみに!

(歴史担当学芸員)
※写真は全てご了承のもとブログに掲載しています。

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大学の野生動物学実習を実施しました

10月21日午前、麻布大学動物応用科学科の3年生25名が実習実験室に集まりました。当館で野生動物学実習を行うためです。
まずは生物担当学芸員から、博物館における生物標本の意義について講義を受け、その後、お隣の樹林地で植物採集を行いました。野生動物学実習ですが、動物の生態を知るには広く生物の分類群について知る必要があるため、植物標本の作製も体験してもらいます。

野外で植物採集

できるだけ多くの情報が入るように標本を採集します。

押し葉をその場で作製

室内に戻ってから、押し葉を整え、標本ラベルを記入しました。
そしてお昼休みを挟んで、午後は鳥類の標本を使った実習です。各机上に、いくつかの種類の鳥類標本(本はく製)が並びます。この標本をよく観察して、パーツごとのスケッチを行います。

じっくり観察、そしてスケッチ

10分間の間に1つのパーツを描き、机を移動して、別のパーツをスケッチします。

しっかり描けています

観察して気づいたこと、スケッチしてみてさらに気づいたことを書き留めておき、それを1人ずつ発表してもらいました。

鋭い観察眼です

みなさんしっかり観察して、足指の付き方や嘴(くちばし)の形、羽根の重なり方など、さまざまなことに気づかれていました。
文献やインターネットの情報ではなく、今目の前にしている標本からどのような情報を読み取るかを体験してもらいました。
生物を扱う学科のみなさんだけあり、とても熱心に長時間の実習をこなしてくれました。
(生物担当学芸員)

 

 

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生きものミニサロン「葉っぱ探偵団」を実施しました

10月21日、毎月恒例の生きものミニサロンを実施しました。今回のテーマは、葉っぱで遊ぼう!part3「葉っぱ探偵団」です。今回はいつもサポートしてくれている、自然観察指導員の小田さんと大久保さんがプログラムを準備してくれました。まずは、館内でガイダンスです。今回のためにオリジナルで作られた「葉っぱ探偵シート」を配布します。

エントランスでガイダンス

探偵シートに載っている葉っぱを探して、チェックを付けていきます。そして結構探し当てるのが難しい葉っぱもあり、それは見るだけでなく、触ったりしながら探すとよいとアドバイスがありました。

葉っぱの見方を解説

早速お隣の樹林地へ行き、探索です。手触りも重要な手がかりです。

どんな手触りかな?

見つけられた葉っぱにチェックを付けていきます。

すごく集中して取り組んでいます

一緒に歩いていると、まわりの大人よりも真っ先に見つけてくれるお子さんもいました。

観察眼の鋭いお子さんも参加

夢中で探しているうちに、ひっつき虫のタネがソデにひっついていました。でも、じつはこれも今回探索する植物でした!

ひっつき虫の季節でもあります!

目の良いお子さんたちが、探索する植物以外にも、ヤマノイモのムカゴを見つけてくれたり、まだ残っていたセミの抜け殻を発見したりと、今回も楽しい観察ができました。

次回は11月18(土)、「学びの収穫祭」の一環として実施します。麻布大学いのちの博物館の展示解説サークル「ミュゼット」のみなさんが出張展示解説をしてくれる予定です。時間も、10時~16時と、長時間にわたり実施します。お楽しみに!
(生物担当学芸員)

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