楽園の野みち

今日は相模原植物調査会の野外調査の日。かねてから狙いを付けていた場所へ、満を持して調査へ行きました。場所は緑区の某所です。残念ながら、県内でも数カ所しか残っていないと考えられる絶滅危惧種の調査のため、ここまでしか書けません。

でもそこは・・美しい野みちに、さりげなくその絶滅危惧種が咲き誇る楽園のような場所でした。辻には巨大なクスノキがお出迎え。

その集落に入って、庭仕事をされてた方にいろいろとお話しを伺っていると、「クマガイソウをうちの山から持ってきて家の裏に植えたら殖えたよ」とご案内いただきました。

ちょうど怪しげな袋状の花が咲き始めたところでした。家の裏手の林内でびっしりとクマガイソウが咲き誇る光景に言葉も出ませんでした。そして、野みちの法面には、お約束のようにオカオグルマが群生しています。

かつてはあちらこちらの畑や田んぼの土手を彩っていたことでしょう。しかし今は、限られた場所にしか分布していません。

さらに帰りがけ、とんでもなく珍しいものを発見してしまいました。

ホウチャクソウのようなのですが、花被がおもいきり反り返っています。こんなホウチャクソウは見たことがありません。それに、ホウチャクソウにしては小型です。付近には同じような特徴の株がいくつもあります。チゴユリとの雑種?いやいや、それでは花被の反り返りは説明つきません。謎めいたこの植物、答えはまだ出ませんが、なにやらとんでもない珍品かもしれず、植物調査会のみなさんと大いに盛り上がってしまいました。

春の調査は、とてもエキサイティングです。問題の絶滅危惧植物(写真も名前も出せずにすいません)の生育状況も良好で、充実した調査となりました。

(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 楽園の野みち はコメントを受け付けていません

地質調査日誌4/22 厚木市七沢

4月22日、火曜日。曇りのち雨。

今日は相模原地質研究会のメンバーと一緒に厚木市七沢の鐘ケ嶽山麓へ,地質学講座の下見にいってきました.12月20日に調査で訪れた場所です.

セラドン石の緑と桜の花びらの桃色の競演です.この岩石も丹沢山地をつくっている凝灰岩の仲間です.

きれいな縞模様の地層も観察できました.これも凝灰岩です.

鐘ヶ嶽.新緑がきれいです.

この後,予報よりも早めの雨に降られてしまいました.昨年の12月に訪れた時も雨に降られています.5月の講座のときには降られないといいのですが….

(地質担当学芸員 河尻)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 地質調査日誌4/22 厚木市七沢 はコメントを受け付けていません

外来種だけど・・まあいいか

博物館の前庭には今、あまり見慣れない白い花が2株、咲いています。

あれ?タンポポ?でも花が白い?

花弁が完全に真っ白!そう、これは中国地方や四国などで普通に見られるシロバナタンポポという種類の花です。ふつうのタンポポの色が抜けてしまったわけではありません。

西日本のタンポポがなぜここにあるのかは・・よくわかりません。時折野外で見つかるので、人や物に付いて種子が運ばれて芽生えたのか、物珍しさで栽培されていたのが逃げたのか・・。博物館のとなりの樹林地にも数株あります。

続いてもうひとつ。葉っぱを見ると、イカリソウのようです。

でも、花が小さくて真っ白。これは、中国地方以西の石灰岩地に見られる山野草の、バイカイカリソウです。

関東地方にあるわけのない植物なので、おそらく、博物館の敷地の植栽にくっついてきたのでしょう。もう十数年来、毎年この時期に咲いています。

こうした植物は、まさに「外来種」です。同じ国内の自生種でも、本来の分布地を外れているのでそう呼ばざるを得ません。でも、意図的に植えられたものでもなく、見る見る株数をふやしているわけでもなく、開花を心の中で楽しみにしつつ、静観しています。

(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 外来種だけど・・まあいいか はコメントを受け付けていません

星空観望会、小ぢんまりと。

今日は星空観望会でしたが、あいにくの、雨/曇りというお天気。プラネタリウムで星空解説と、観望予定だった天体の話をして終了、という「雨の日パターン」。それでもいつもなら20人以上の方がいらっしゃるのですが、今日の参加者は9人。それならば、と特別サービス(?)で、天体観測室の見学を行いました。
今日は特に少人数なので、40cm望遠鏡の主鏡を覗くという、普段あまりできない体験をしていただきました。

20140419-212500.jpg
人数が少なければ少ないなりに、何か違ったものを持ちかえっていただければ良いな、と思います。(学芸班 木村)

カテゴリー: 今日の博物館 | 星空観望会、小ぢんまりと。 はコメントを受け付けていません

地質調査日誌4/19 厚木市七沢

4月19日、土曜日。曇り。

今日は相模原地質研究会のメンバーと一緒に厚木市七沢の玉川へ,地質学講座の下見にいってきました.肌寒かったです.
1月25日に調査に出かけた弁天岩付近で野外観察を行う予定です.

今日も多くのクライマーが弁天岩に登っていました.

この辺りの岩石は丹沢山地をつくっている凝灰岩で,緑色をしたものが多く分布しています.

これらの岩石は約1,200万年前に海底火山の噴出によってできたものです.
広沢寺温泉入口バス停から片道30分ほどのハイキングで,大昔の海底火山噴火の様子を垣間見ることができます.

(地質担当学芸員 河尻)

 

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 地質調査日誌4/19 厚木市七沢 はコメントを受け付けていません

あかつきトークライブ 11

今日は「さがみはら宇宙の日『あかつきトークライブ』」の第11回目。
この企画は、金星探査機「あかつき」を応援する目的で偶数月に開催しています。
今日は、その第11回目。「雷で探る惑星の大気 」をテーマに高橋 幸弘さん(北海道大学大学院理学研究院教授・金星探査機あかつき雷大気光カメラLAC開発主担当)にお話をいただきました。

雷を研究することは大気現象を解明する上で非常に有用であること、研究に必要な機材は非常に安価に製作でき、高校生の研究にも適している事などを強調しながら、ご専門の「雷」について熱く軽快に語ってくださいました。
途中、テレビ番組の取材の裏話をしたり、今取り組んでいる小型衛星のプロジェクト(「だいち2号」の相乗り衛星だそうです)の話も飛び出すなど非常にバラエティに富んだ内容で、「ああ、少しはあかつきの話しないと…」と笑いを誘いながら、軽快なトークで楽しくお話を伺う事ができました。
大変印象に残ったのは「地球の常識にとらわれ、余計な知識を持っていると、新しい事は見えてこない」との言葉。観察・観測の結果を大切にしなければならないのは、どの世界も同じだな、と改めて感じます。

講義のあとは実験タイム!
「バンデグラフ」という装置で静電気の実験をしたり、ライターの着火装置を使って電球の中に放電を起こしたりしました。


「目の前で何かが起こる」というのは、やっぱり面白いですね!

「おー、髪の毛立ってる~」

そして、終わった後は希望者が残ってランチタイム。

研究者や興味を同じくする皆さんと食事をしながら会話を交わす、本企画の隠れたオススメポイントです。

もちろん、恒例の記念撮影もありました。

こうしたさまざまな企画、もちろん博物館の職員が自分で考えているわけではありません。
「あかつき」チームの皆さんや、学生の皆さん、参加者のみなさんが一緒になってとてもアットホームな
雰囲気の中でつくりあげているものです。
そのお手伝いを博物館ができる、というのはとてもうれしい事です。2015年に金星探査に再チャレンジする「あかつき」を、これからも一緒に応援していきたいと思います。(学芸班 木村)

「あかつき君」と「ちょこつき君」。かぶっているカブトはいつも参加してくださる方からのプレゼントです。

次回「あかつきトークライブ」は6月21日(土)10:00から
テーマは「日本の月惑星探査と『あかつき』」
講師:石井信明さん(JAXA宇宙科学研究所教授)です。

カテゴリー: 今日の博物館 | あかつきトークライブ 11 はコメントを受け付けていません

こちらも開花 ヤマグワの花

昨日は博物館前庭で華やかに咲くシャガの写真などをアップしました。一方で、今朝から降り出した雨にしっぽりと濡れていますが、じつはこちらもれっきとした花。満開です。

博物館駐車場の前に植えられたヤマグワの雌花です。花びらなんてありません。あるのは子房と柱頭のみ。なんていさぎよい!

厳密にはこのクワは、ヤマグワ(在来種)とマグワ(中国大陸原産種)の雑種のようですが、毎年博物館で育てるカイコの大切な食料となっている木です。
ゴールデンウィークが終わり、梅雨の足音が近づいてきた頃、黒紫色に熟すはずです。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | こちらも開花 ヤマグワの花 はコメントを受け付けていません

博物館に咲く花(4/17)

今、博物館で咲いている花をご紹介します。
まずは、前庭いっぱいに咲き乱れるシャガ。

どこにでもある花ですが、この花の色合いがとても好きです。
そして、ミヤマガマズミ。これは中庭に1本だけなぜかあります。開館当初に、おそらくガマズミということで植えられたのだと思います。よく見ると、里山に普通に見られるガマズミとはちょっと異なる特徴が見られます。

中庭のカザグルマは、まだつぼみがかたそう。今年、カザグルマは少し遅めかもしれません。

そして、写真は掲載しませんが、お隣の樹林地ではいよいよフデリンドウが満開です。遊歩道からも、フェンス越しにもたくさん咲いているのが見られます。お天気の良い日にぜひ見に来てください。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 博物館に咲く花(4/17) はコメントを受け付けていません

小倉山のイボタガ

今日は緑区の小倉山へ植生調査に行きました。2月大雪の爪痕が残り、登山道がところどころ崩落しています。

調査地には特徴的な照葉樹林がわずかに残っています。林立する巨樹に巻き付く壮大なつる植物にはいつも圧倒されます。今回は、存在感がありすぎるサルナシを発見しました。

ちょうど新緑が芽吹いたばかりで、ヤブムラサキの芽生えが、なんだかただの葉っぱとは思えない趣で枝先を飾っていました。

さて、今回、調査の目的外でしたが、嬉しいものを見ました。イボタガです。

識別、分類の難しい蛾類の中で、比較的わかりやすいガです。なんて美しい翅模様!想像を絶する自然の造形美ですね!
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 小倉山のイボタガ はコメントを受け付けていません

花ごよみ、神奈川の鳥

じつに脈略の無いタイトルになってしまいました。

今日は午後から環境情報センターで花ごよみ調査のセミナーにお呼ばれしました。まずは室内で簡単なガイダンス。

続いて、外で実地の調査です。道ばたの花は、だいたい、しゃがんで目をこらさないと、花の状態がわからないものが多いのです。みなさん、道路にかぶりつきです!

花ごよみ調査は、身近な場所に咲いている花の開花情報を年間をとおして記録していくものです。自然環境観察員有志のみなさんが、それぞれおうちのまわりで取り組んでいただき、それを集めれば、相模原市の標準的な花ごよみができあがります。すでに取り組まれた2年間の記録と合わせて、来年もまた蓄積された花ごよみができあがるはずです。楽しみですね!

さて夕方からは、麻布大学動物応用科学科野生動物学セミナー(高槻研究室)で、昨年刊行された『神奈川の鳥2006-2010』(日本野鳥の会神奈川支部)の調査とその成果についてお話ししてきました。講演中の写真が撮れなかったので(あたりまえですが)、その後の懇親会の一コマを…

懇親会では聴きに来てくれたS氏が主役でした!S氏は、いつも博物館で仮はく製づくりをやってくれていて、6月にこのセミナーではく製づくりについて講演する予定です。S氏の野生動植物の写真にかぶりつく、高槻研の学生さんたち。ほんとうに生きもの好きなんですね。

じつは、花ごよみ調査も、「神奈川の鳥」の事業も、故浜口哲一さん(元平塚市博物館館長)が種をまき、発展させてくれた調査活動です。そして私は小学生の頃から浜口さんの影響を受け、今、学芸員の職にあります。人も生きものリストづくりも、どこかでつながっていることを改めて実感しました。

(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 花ごよみ、神奈川の鳥 はコメントを受け付けていません