アリも食べるすごいやつ

先日見かけた風景。
アリを捕食するオオヒメグモです。

20140415-193502.jpg
多くのクモはアリを食べません。恐らく、硬くて、丈夫なアゴを持つアリを、危険な相手と見なしているのではないかと思います。
逆に、ごく少数のクモは、アリを好んで捕食します。
このオオヒメグモグモはその中間の「アリも食べる」クモです。
その網は地上を歩く虫を釣り上げる特殊な構造をしていて、クモは釣り上げた餌にすかさず糸をかけて、がんじがらめにしてしまいます。
さすがのアリも、身動きがとれなくなるようです。
また、この種は建物の中から山地まで、様々な環境で見られる「普通種」です。あまりにもどこにでもいるので、観察会の時に、記録するのをつい忘れてしまうほどです。
そして、その分布は世界中に広がっています。こうした世界規模で分布する種を「コスモポリタン種」などといいますが、考えてみると、そこまで普通にいる、というのはすごい事です。もしかしたら、アリですら餌にしてしまう逞しさが、分布を広げる原動力なのかもしれない、とふと思いました。(学芸班 木村)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | アリも食べるすごいやつ はコメントを受け付けていません

イオンエンジン、再びお目見え

全く専門外なのですが、天文展示室に大好きな展示資料があります。
その名も「YOSHINO-1」。マイクロ波イオンエンジン初号機。早い話が、あの「はやぶさ」に搭載されたエンジンの原型になった、開発実機です。

20140413-194125.jpg
YOSHINO-1

もちろん、お向かいのJAXA相模原キャンパスからの借用資料です。
なぜ、これがそんなに好きか、自分でもよくわからないのですが、眺めるたびに実物の迫力をひしひしと感じてしまいます。
さて、この「YOSHINO-1」、もう一つの実験機(「はやぶさ」に搭載された「μ10」です)とともに里帰りしていましたが、4月15日(火)から、再び相模原市立博物館の展示室に登場します。(今日の閉館後に入れ替え作業をしました)。

20140413-194206.jpg
μ10耐久試験モデル

折しも、プラネタリウムで現在上映中の映画は「HAYABUSA BACK THE EARTH」です。ぜひ、映画とセットでこの貴重な資料をご覧ください。(学芸班 木村)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | イオンエンジン、再びお目見え はコメントを受け付けていません

普通種を愛でる(クモ)

このごろすっかり暖かくなり、通勤途上の植込みにもクサグモの幼体の網がよく見られるようになりました。

20140413-190547.jpg
朝露のついた網。

20140413-190703.jpg
カメラに気づいているのか、奥の方でじっとしています。

まだ、体長2-3mm程度で、これから夏に向けてぐんぐん大きく、ちょっと「こわい」感じになりますが、今はまだ小さくてかわいらしい幼体です。
特段珍しくもない、どこにでもいる種をよく「普通種」などと呼びますが、別段珍しい種類でなくても、毎日見ているとその時々でいろいろな表情がみられて楽しいものです。(学芸班 木村)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 普通種を愛でる(クモ) はコメントを受け付けていません

企画展展示解説その2

本日、現在開催中の企画展「境川流域の開発と暮らし」の展示解説を行いました。
企画展期間中としては2回目となります。

前回、冒頭で「時間はおおむね30~40分くらいです」と言ったものの、担当学芸員に熱が入り、結局1時間30分もかかってしまいました。

その反省(?)を元に、今回は冒頭から「1時間30分くらいかかると思います」と宣言いたしました。



時間ですが、結局1時間33分かかりました...。
それでも参加してくださった皆さんは、飽きることなく学芸員たちの話に耳を傾け、熱心にメモをする方も何人もいらっしゃいました。

今回の展示は旧石器時代から縄文・弥生・古墳・古代(奈良~平安)と通史的に網羅されているので、なかなか見応えがあります。

この企画展はゴールデンウィークが終わるまで開催されます。
次回の展示解説は5月6日、午後2時からです。
ご興味のある方は是非ご参加下さい。心よりお待ちしております。(考古担当 正)

カテゴリー: 未分類 | 企画展展示解説その2 はコメントを受け付けていません

やってしまったぁ!季節は戻らない・・

先ほど、ふと思い出して階段を駆け下り、中庭のガラス壁面に顔を張り付けて見てみると・・

やってしまった・・

すいません、なんのことかわかりませんね。うっかり忘れて、中庭のヤブレガサの芽生えをご紹介しそびれてしまったのです。上の写真のように、すでに葉が開ききっていました。ちなみに下の写真は、昨年のものです。

こんなふうに毛玉のおばけみたいな芽生えが徐々に展開して、ヤブレガサの名の由来となる傘おばけに、そしてあっというまに展開して・・一番上の写真のようになるのですが・・。

このわずかな期間のお楽しみをご紹介できるよう、毎年注意深く心がけていたのに・・。今年はちょっとほかの花の季節がずれ気味で、10日ほど前にチェックしたときはまだまったく影も形もありませんでした。それが、むしろ例年より早いくらいのタイミングで展葉しています・・

いやいや、言い訳はよしましょう。来年は見逃さないようにしなくては!春はこれがあるから、コワイですね。

(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | やってしまったぁ!季節は戻らない・・ はコメントを受け付けていません

本葉が出てきました

以前にもこのブログで、博物館駐車場のコナラのドングリから発芽しているようすをアップしました。その後・・

新緑の季節になり、ちゃんと本葉が展開してきました。下の方に見える赤い球状のものがドングリ本体、つまり、子葉です。本葉はしっかりコナラの葉っぱをしています。銀色の毛が美しいですね。

日照や管理上の理由から、ここでこのまま大きく成長することはありません。儚い命ですが、しばらく見守っていきたいと思います。

(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 本葉が出てきました はコメントを受け付けていません

そろそろ見頃です!

博物館お隣の樹林地では、フデリンドウがそろそろ見頃です。

遊歩道沿いからも見られるようになってきました。これから週末以降、どんどん咲いてくると思います。来週には大きめの株でたくさん花がついているのが見られ、2週間くらいは見頃が続きます。

ちなみにタチツボスミレはものすごい数が咲いています。カントウタンポポも咲きそろってきました。日当たりのよい場所では、ビロードツリアブが忙しそうに飛び回っています。

(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 今日の博物館 | そろそろ見頃です! はコメントを受け付けていません

春の花、6連発

今日は緑区の藤野・津久井方面へ春の植物の開花状況を調査してきました。もう春爛漫、絵的に十分インパクトがあるので、余計な解説は省いて写真を並べます!

まずは、ヒナスミレ。こぢんまりとまとまるスミレですが、なぜか華やかな印象があります。

続いて、アブラチャン。いつもこの花と冬芽の組み合わせを見ると、ポンポンを持ったチアリーダー、もしくはポケモンのロゼリアを思い出します。

そして、ヤマエンゴサク。ケシ科特有の妖しさを秘めています。

本日のメインはやっぱり、女王カタクリ。自然分布の自生地の個体です。

カントウミヤマカタバミです。道ばたのカタバミと葉っぱは似ていますが、なんとも清楚な花が咲く山野草です。

そして、超レアな希少種、ヒメフタバラン。今年も元気にたくさん咲いていました。

大雪と1月2月の低温の影響で全体的に花が遅めと思いきや、カタクリはほぼ例年どおりで、ピークを過ぎつつありました。北向き斜面に多いので一番影響を受けそうなのに、不思議ですね。
いよいよ春が加速して通り過ぎようとしています。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 春の花、6連発 はコメントを受け付けていません

クモタケ出たー!

2013年3月6日に採集して、いつか展示したいと飼育していたキシノウエトタテグモ
未だに手がまわらず、展示してお見せするに至っていません。
今日、「あ、しばらくエサやってなかった」と様子を見に行くと、2頭のうち1頭の容器に変なものが…

「あー!クモタケ出たー!!」と、思わず叫んでしまいました。
実はこれ、一種の「冬虫夏草」で、「クモタケ」といいます。
それほど珍しいものではありませんが、たぶん、見たことがある人はそう多くないと思います。
今までキシノウエトタテ以外の種から生えたという報告がなく、寄主に対する選好性が強い種ですので、キシノウエトタテがいなければ、当然生えません。
写真に写っているのは「子実体(しじつたい)」と言って胞子をつけ、分散するための構造物です。キノコの傘みたいなものですね。
これが出てくる前段階で菌糸が宿主(クモ)の体内で成長し、すっかり体中に菌糸をはり巡らした後、子実体を伸ばしクモの住居の扉を押し上げて、巣の外に胞子をまき散らします。
しかし、その胞子がどのような経路で他のクモに感染するのかはよくわかっていません。さらに子実体が出てくるのはクモの成体のみと考えらえており、いろいろと謎の多い生き物です。
本来、関東地方であれば7月の初旬ごろが発生のピークなのですが、飼育下の環境で早く出てきてしまったようです。昨年、採集した場所ではクモタケは見つからなかったのですが、今年はシーズンになったら、採集場所にいてよーく確認してみようと思います。
皆さんもご自宅の近くで、植込みの下や畑のへりなどを注意して観察してみてはいかがでしょうか。これがあればキシノウエトタテがいるという事になりますので、トタテグモ探しもできて一石二鳥ですよ。(学芸班 木村)

大きさはこれくらい。野外ではまっすぐ伸びるのですが、容器の中でひねてしまったようです。

住居の扉を押し上げて出てきているのがよくわかります。

子実体をアップで。

ジグモ空振り後トタテグモ

カテゴリー: 今日の博物館, 学芸員のひとりごと | クモタケ出たー! はコメントを受け付けていません

神奈川の植物って何種類あるの?

シンプルだけど、超難問。これに答えられる資料はただひとつ、『神奈川県植物誌』です。植物の好きな一般の県民が寄り集まり、各地の博物館へ採集標本を収め、そのデータベースを基に作られているのが『神奈川県植物誌』、そして、その膨大な調査活動をしきるのが神奈川県植物誌調査会です。今日は、小田原の神奈川県立生命の星・地球博物館で同会の役員会と総会が行われました。

総会の後には国立科学博物館の門田裕一博士による、アザミの分類についてのご講演がありました。最近、ハチオウジアザミを新種記載されたのも門田博士です。昨年、相模原市内でも確認され、相模原植物調査会のみなさんも興味津々でお話に聞き入りました。
2001年に刊行された『神奈川県植物誌』からすでに10年以上が過ぎ、次の植物誌を2017年度に刊行することで調査が進められています。プロ、アマ双方の研究者と博物館が一体となって進める植物誌、全国から期待を集めて進んでいます!
ところで今日、小田原市内を歩いていて、すてきなものに出会いました。

堤防の道路に設置されたミラーの支柱上端に、ササ(メダケ?)の葉が!地下茎で増えるこのなかま、鉄製のパイプなんてものともせずに伸びていき、ついに先端で展葉したようです。なんだか、ほこらしげなササの姿に思わず微笑んでしまいました。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 神奈川の植物って何種類あるの? はコメントを受け付けていません