石のステンドグラス2展示解説5/13

現在、相模原市立博物館で開催中の企画展「石のステンドグラス2〜偏光顕微鏡の世界〜」の展示解説を5月13日(土)に行いました。

偏光顕微鏡は偏光フィルターを装着した顕微鏡で、岩石プレパラートの観察には、偏光顕微鏡を使います。

まずは偏光フィルターについて解説しました。偏光フィルターは色がついている訳ではなく、特定の光だけを通過させるフィルターです。偏光顕微鏡での観察は光が偏光フィルターと鉱物を通過するときの性質を利用します。鉱物によって偏光顕微鏡での見え方に特徴があるので、鉱物を見分けることができます。

今回展示した岩石の偏光顕微鏡写真は、研究・教育目的で撮影したものの中から、色の美しいものや模様のきれいなものを選びました。きれい、面白い、などの観点で撮影した訳ではないので、全ての写真に岩石学的や鉱物学的な意味があります。

全ての写真を解説したいところですが、限られた時間ですので、数枚の写真を選んで解説しました。

一部を除いて偏光顕微鏡写真を展示した岩石の標本も展示してありますので、標本と写真を見比べながらの解説も行いました。

今回の展示では、写真を背後からの光でステンドグラス風に展示したコーナーもあります。偏光顕微鏡で岩石プレパラートを観察するときはプレパラートに下から光を通過させて観察します。このコーナーでは実際に偏光顕微鏡で観察しているのと近い感覚でご覧いただくことができます。

岩石プレパラートは岩石を光が通るくらいまで薄くします。実際の厚さは0.03mm、千円札の3分の1の厚さ(薄さ?)です。そのためにはいくつかの工程が必要で、1枚の岩石プレパラートを製作するのにはかなりの手間ひまがかかります。

実際に使う道具や工程写真が展示してあるので、展示解説の最後には岩石プレパラートの製作方法も紹介しました。

展示解説は、5月28日(日)と6月24日(土)にも開催します。いずれも2時〜2時30分です。

また、実際に岩石プレパラートを偏光顕微鏡で観察するイベント「石を顕微鏡で見てみよう」を6月11日(日)、10時〜4時に開催します。この時間内であれば会場に出入り自由ですので、ぜひご参加ください。

(地質担当学芸員)

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5月18日は何の日?くずし字を読んでみよう

毎年5月18日は何の日かご存じですか?その答えは、「国際博物館の日」です。
国際博物館の日とは、博物館が社会に果たす役割を広く普及啓発することを目的として、ICOM(イコム/世界の博物館関係者で組織される国際博物館会議)によって1977年に制定されたものです。

相模原市立博物館では5月13日(土)~5月20日(土)の土日に、国際博物館の日にちなんだ様々なイベントを実施しています。題して、国際博物館の日2023「博物館探検隊!」です。
5月14日(日)は、イベントの1つとして「くずし字を読んでみよう」を行いました。

お集まりいただいた皆さんに「くずし字」についてお話しています。

わたしたちが日常で使う漢字やひらがなとは異なった形をしている「くずし字」。古文書や昔の書物でしか馴染みがないと思われますが、お蕎麦屋さんの暖簾(のれん)や割り箸の箸袋など、実は意外にも身近で使われていることがあります。このワークショップでは、そうした身の回りにあるくずし字の紹介や、くずし字のもととなっている漢字(=字母/じぼ)に関するお話をしました。

また、せっかくの国際博物館の日のイベントということで、参加者の方には博物館で働く学芸員の仕事を体験してもらいました。
今回は資料の扱いについて学ぼう!をテーマに、本物の掛軸の取り扱いに挑戦しました。

慎重に、丁寧に…

掛軸を掛け外しする際は、矢筈(やはず)という専用の道具を使います。本物の掛軸を前に少し緊張気味の皆さんでしたが、一連の手順が終わると最後はホッと笑顔に。普段はなかなかできない経験ができたと喜んでいただけました。

上手にできたね!

国際博物館の日2023「博物館探検隊!」は、今週末も開催します。5月20日(土)は、毎月恒例の生きものミニサロン、コスチュームと本物の土器で記念撮影できる縄文人体験や、博物館のバックヤードツアーを実施する予定です。
ここでしかできない様々な体験を楽しんでいただくとともに、このイベントを機に当館の活動についてもっと知っていただけると嬉しいです。

(歴史担当職員)

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フデリンドウの結実

先日、このブログでフデリンドウのその後について紹介しました。その際に、結実の様子がまたおもしろい、と予告したのですが、結実(けつじつ=果実が実ること)してきたので再び紹介します。
果実は、実っても真上を向いています。

フデリンドウの果実

上から見ると、まるで「がまぐち」です。

うえから見るとまるで「がまぐち」のようなフデリンドウの果実

がまぐちの奥へクローズアップすると・・。

がまぐちの中に茶色い種子がたくさん入っています

真上を向いたままの果実から、種子がどうやって出たのかというと・・
それは、雨です。中の種子がしっかり実って準備万端となると、がまぐちは下へ反り返ります。

反り返った果実

そして、そのがまぐちの中へ、雨粒がポチャンと入って、水と一緒に種子があふれ出たら大成功、というわけです。こうした種子散布を、雨滴散布(うてきさんぷ)と呼んでいます。
フデリンドウは他の植物が丈を伸ばす前の早春に咲くので、日照をめぐる競争があまりありません。そして、越年草(えつねんそう)のため、花が咲いて結実すると枯れてしまいます。親株が枯れてなくなった場所が、開花実績のある生育適地であるならば、新天地を目指す必要も無いのかもしれませんね。種子は、親株のまわりに落ちればよいため、タンポポのように綿毛で飛んでいったり、トゲやかぎ爪で動物の毛にひっついて運んでもらったりする必要もないということなのでしょう。

今年4月のフデリンドウの花

同じ場所で来年も上の写真のような花を見せてくれるよう、うまく雨粒が落ちてくることを願いつつ、このところの雨模様を眺めています。
(生物担当学芸員)

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麻布大学いのちの博物館と連携に関する覚書を締結しました!

麻布大学と相模原市は平成26年に「麻布大学と相模原市との包括連携に関する協定書」を締結し、連携を深めているところですが、両者の有する博物館施設の展示・教育活動の更なる連携を進めるため「麻布大学いのちの博物館と相模原市立博物館との連携事業に係る覚書」を締結しました。

麻布大学いのちの博物館

5月11日、いのちの博物館の島津徳人館長が渡邉志寿代教育長を訪問されました。

懇談する島津館長(左)と渡邉教育長(右)

これまでにも、いのちの博物館への当館のミニ展示の巡回や、当館での学生による出張展示解説を行うなど連携してきましたが、今後はよりスムーズな情報交換と手続きにより、相互の特性を生かした事業展開を行っていく予定です。

覚書の締結を記念した講演会も企画しています。

麻布大学いのちの博物館×相模原市立博物館連携講演会
令和5年7月9日(日)午後2時~4時
相模原市立博物館 大会議室 定員200名(当日先着順)
講師 麻布大学いのちの博物館 島津徳人館長
相模原市立博物館    秋山幸也学芸員

内容など詳細は近日中に博物館ホームページなどでお知らせします。

ところでこの日の日没近く、東の空に大きな虹が出ました。

博物館屋上から撮影した虹(5月11日18時ころ)

まるで2つの博物館の架け橋を象徴するかのような風景でした。
(生物担当学芸員)

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ナワシロイチゴ

博物館のまわりの樹林地やそのフェンス沿いで、ナワシロイチゴの花が咲きだしました。

ナワシロイチゴの花

遠目に見るとぼんやりした印象なのですが、近くで見るととても美しい花です。ノイチゴの仲間の花は白色が多いのですが、ナワシロイチゴは紅梅色と言えばよいでしょうか、なんとも繊細な色合いです。開いた花も良いのですが、閉じた花もまた美しい造形です。

花弁を閉じた状態のナワシロイチゴ

梅雨の頃に実って真っ赤な果実をつけます。ジャムなどに利用されますが、果実の粒が小さく、しかもアリなどがたくさんついていたりして、収穫するのは少々難儀なノイチゴです。
近くではガマズミも咲いていました。

ガマズミの花

林内で純白の花がボウッと灯(ともしび)のように浮き上がって見えました。この花もよく見ると雄しべがツンツンと飛び出していて、かわいらしい花です。

ガマズミの花

連休終盤の雨のせいか、植物が生き生きとしているように見えました。
(生物担当学芸員)

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今日から愛鳥週間

毎年5月10日~16日の1週間は、愛鳥週間(バードウィーク)です。
戦後間もない1947年、アメリカ人鳥類学者のオリバー・L・オースチンの提唱により、4月10日をバードデーと定めました。しかしこの時期、北日本ではまだ積雪もあるという理由で、1950年からは1か月遅らせた5月10日~16日を愛鳥週間と定めました。以来、野鳥保護思想の普及に努めることを目的とした様々なイベントが行われてきました。
さて、このブログでも愛鳥週間にちなんで、相模原市の鳥であるヒバリを紹介します。

ヒバリ(オス)

ヒバリは畑地や河原、草原などを主な生息場所とする野鳥です。相模原台地はかつて広大な桑畑や畑、カヤ場(ススキ原)が広がっていたことから、この地域はヒバリの密度が非常に高かったと推測されます。市の鳥の選定理由は「元気良くさえずる声が躍進する市の姿を象徴している」(1974年)なので、生息環境や生息密度は理由に含まれていません。しかし、ヒバリの囀りがとても身近だったことは選定の背景にあったと思われます。

飛びながらさえずるヒバリのオス

せっかくなので、2006年~2007年にかけて相模原市と合併した旧津久井郡四町の鳥も紹介します。
旧城山町の鳥はメジロです。

メジロのつがい

旧津久井町の鳥はウグイスです。

ウグイス

旧相模湖町の鳥はオシドリです。

オシドリのメス(左)とオス(右)

旧藤野町の鳥はヤマセミです。

ヤマセミ(オス)

いずれも地域の環境に見合った鳥が選定されていました。
この時期は野鳥の繁殖活動が最も盛んな季節です。巣立ったヒナがおぼつかない足取り、危なっかしい飛び方でウロウロしていてハラハラしますが、近づかずにそっと見守ってください。
「ヒナを拾わないで」キャンペーンも実施中です。詳しくはこちらをご覧ください。
野鳥たちの生活を、一歩下がって、温かい目で見守る意識を高めるための愛鳥週間としたいですね。
(生物担当学芸員)

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石の顕微鏡写真、専門雑誌の口絵を飾る!

現在、相模原市立博物館にて企画展「石のステンドグラス2〜偏光顕微鏡の世界〜」が開催されています。6月25日(日)までです。

このポスターとチラシに使った写真が専門雑誌「博物館研究」2023年第5号のカラー口絵ページに掲載されました。

「博物館研究」に掲載された写真

「博物館研究」はA4サイズの月刊誌で、美術館・博物館に関わる論文や全国の展覧会情報などが掲載されている専門的な雑誌です。カラー口絵ページには美術作品が掲載されることが多く、岩石の偏光顕微鏡写真が掲載されるのは初めてのことではないかと思われます。

「博物館研究」はインターネットでは公開されておりませんが、相模原市立博物館2階 市民研究室でご覧いただけます。

「博物館研究」に掲載された写真は企画展会場奥の「石のステンドグラスコーナ」に展示してあります。

他にも岩石の美しい偏光顕微鏡写真が展示してありますので、ぜひご来館いただき、一味違った岩石の世界をお楽しみ下さい。

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フデリンドウのその後

4月初旬から中旬にかけて博物館周辺で花を楽しませてくれたフデリンドウも、花期が終わり、周りの植物の背が高くなってすっかり埋もれてしまいました。今、どうなっているのでしょうか。
注意深く探さないと見つからないのですが、このような姿です。

現在のフデリンドウ 若い果実がふくらみつつあります

フデリンドウは越年草(えつねんそう)で、春の終わりに結実して株の周辺に種子が散ると、あっさりと枯れてしまいます。ほかの植物の成長が旺盛な夏は種子のまま休眠し、秋の終わりに芽生えます。

フデリンドウの芽生え 真冬の1月に撮影したもの

小さな芽生えのまま冬を越し、早春に花径が伸びて花を咲かせます。一生のサイクルとしては一年草ですが、秋に芽生えて年を越すこのような草花を、越年草と呼びます。

フデリンドウの花 2023年4月撮影

フデリンドウの種子が実る様子もなかなか面白いので、今月末頃、このブログでそんな姿もお伝えできればと思います。
(生物担当学芸員)

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ヤマトシロアリの飛び立ち

5月4日、博物館お隣の樹林地を歩いていると、朽ちかけた木柵の表面が動いているように見えました。近づいて見ると、ヤマトシロアリの有翅虫(ゆうしちゅう)がうごめいているのでした。

木柵の上にたまるヤマトシロアリ

シロアリと言うと家屋害虫(主にイエシロアリ)ですが、ヤマトシロアリは野外で普通に見られるシロアリで、湿った場所の朽ち木をすみかにしています。乾いた木柵から出てくるのはちょっと意外でしたが、有翅虫が飛び立つところはタイミングが良くないと見る事ができないため、動画も撮影してみました。

家屋内では害虫のシロアリですが、自然の中では枯れ木を効率よく分解させるための前処理(ボロボロに崩す)をするため、生態系の中で重要な役割を担っています。
春が進み、生きものの動きが活発になっています。近くの地面では、ムクドリが一心不乱に何かをついばんでいます。

オオヒラタシデムシを捕まえたムクドリ

オオヒラタシデムシを捕まえたようです。おそらくオオヒラタシデムシは抵抗して強烈な臭いを出しているはずですが、ムクドリはお構いなしです。さらに、別のムクドリが草むらへ首を突っ込んだかと思うと、ニホンカナヘビをつまみ出しました。

カナヘビを捕まえたムクドリ

尾を自切して抵抗したものの、ムクドリには通用しなかったようです。
食べる-食べられるの関係は生態系の重要な要素ですが、生々しいシーンを目にすることが多い季節になりました。
(生物担当学芸員)

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賑やかな春の河原

市内緑区の相模川の河川敷は、春真っ盛りです。早春から繁殖期が始まるエナガは、すでに巣立ち雛が元気に飛び回っています。

エナガの巣立ち雛

一方、親鳥はこちらです。1回の繁殖で10羽前後のヒナを育てるため、ちょっとやつれ気味ですね。

エナガの親鳥

湧水が染み出た場所の近くでは地面にモンキアゲハが集っていました。

吸水中のモンキアゲハ

関東地方では最大級のチョウです。もともと南方系の種で西日本に分布していましたが、近年は東北まで分布を広げています。

飛び交うモンキアゲハ

今年は春の花の多くが早めに開花していて、例年、連休後に咲き始めるジャケツイバラがもう咲いていました。

ジャケツイバラの花

新緑も日に日に濃くなって、河原は春から初夏の様相へと変化しています。
(生物担当学芸員)

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