2023年度博物館実習・歴史分野~展示制作・解説~

皆さん、こんにちは!相模原市立博物館の歴史分野実習生です。
9月8日、10日、そして16日の3日間で、実習生展示の制作と解説を行いました。

今回の展示タイトルは「関東大震災と相模原」で、私たち歴史分野は「紙に残された記録」というコーナーの一部を担当し、相模原市の指定有形文化財である『相澤日記』という資料を取り上げました。

まず、分担して『相澤日記』から関東大震災に関する記述を調べました。その中で、関東大震災当日の記述を詳しく解説すること、当日から1年間の出来事を年表にすることにしました。

展示パネル制作の様子

次に、資料の概要や震災当日の記述などを展示するために、パネル化する作業を行いました。印刷した用紙をスチレンボードに貼り、それをカッティングしていきます。カッターで切る際に刃を斜めにすることで、正面から見たときに切断面を目立たなくすることを学びました。はじめはとても難しい作業でしたが、回数を重ねていくごとに慣れ、最後の方は綺麗に切ることができました。

展示資料の設置

パネルが完成したら、今度はそれを展示する作業を行います。展示ケースの中に入って作業する人と、外から指示を出す人に分かれ、展示位置を調整しました。並んでいる他のパネルと高さを合わせることや、水平器を用いて平らにすることを意識しながら壁にピン留めします。

完成した展示がこちら!

そして9月16日、会期初日に展示解説を行いました。クイズなども交えながら、話す速さや分かりやすく解説することを意識しました。
解説を聞いてくださった来館者の皆さま、ありがとうございました。

展示解説中

また、今回のミニ展示「関東大震災と相模原」では、歴史分野実習生が担当した展示の他にも、地質・民俗の実習生展示や、関東大震災に関する様々な資料を展示しています。
9月16日から11月30日まで(10月11日~20日は休室)開催していますので、是非ご来館ください!心よりお待ちしております。

そして、私たち歴史分野の実習は本日で最終日です。資料の保存や管理、活用の仕方だけでなく、出張講座や探訪、ブログ制作、実習生展示など、実習を通して様々なことを学ばせていただきました。ここで得た貴重な経験を、今後の私たちの活動に活かしていけるよう頑張っていこうと思います。
私たちのブログを読んでいただき、ありがとうございました。

(歴史分野実習生)

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セセリチョウの仲間の秘められたパワー

博物館のまわりでも、イチモンジセセリが目立つようになってきました。

イチモンジセセリ

幼虫の食草がススキなどのイネ科なので、ススキのイメージと相まって秋の印象が強いチョウです。しかし実際は、春から羽化をしていて、秋だけに見られるわけではありません。ではなぜ秋の印象が強いかと言うと、この仲間のチョウは「渡り」をするからなのです。春から夏にかけて、羽化をした成虫が北へと移動しながら分布を広げ、秋の終わりころになるとまた南下するそうです。そのため、秋は南から渡ってきた個体が多くなるため、目立つようになるというわけです。
博物館周辺では、同じ仲間のキマダラセセリも見られます。

キマダラセセリ

直線的に飛んで、ススキの葉の上などにピタッと止まる様子を見ていると、「渡り」のような長距離を飛ぶイメージが沸きません。身近なチョウですが、なんともすごいパワーを秘めているんですね。
(生物担当学芸員)

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オナモミを探して

日本のひっつきむしを象徴する存在と言えるのは、キク科のオナモミです。果実全体に、先端が鈎(かぎ)状に曲がったトゲを持ち、衣類などにしっかりとひっつきます。しかし、「オナモミ」という種名の在来植物は現在、非常に少なくなっています。神奈川県内では現在のところ安定した自生地はほとんど無く、絶滅危惧ⅠB類にランクされています。相模原市内などで現在よく見られるのは、外来種のオオオナモミです。

オオオナモミ 市内では休耕地や造成地のような少し荒れた場所に多く見られます

 

また、県内の沿岸部では、オオオナモミよりも果実がさらに大きなイガオナモミ(外来種)も見られます。

イガオナモミ 県内の海岸沿いで稀に見られます

トゲにはさらに下向きの毛があり、念入りにデザインされたひっつきむしです。
さて、在来種のオナモミが、隣県のある場所に生えていると相模原植物調査会の会員から連絡があり、9月13日に早速行ってみました。

在来種のオナモミ

周辺地域でもここにしか無いようですが、この場所には株数も多くありました。上記2種よりも果実が小さく、トゲも全体的に短いのが特徴です。

オナモミ 刺の数が少なく、短い

形も生育環境もよく似ているのに、なぜ減ったり増えたりしているのか、よくわかっていません。ちなみに、オナモミの地方名には「バカ」というものがあり、ひっつきむしを総称する場合と、明確にオナモミを指す場合があります。高度経済成長期くらいまではこのオナモミが普通に見られていたので、真の「バカ」とは、このオナモミのことを指していたと思われます。
(生物担当学芸員)

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紛らわしい植物名

植物の名前には、ススキやヒガンバナなど、なじみ深いものも多いのですが、なにしろ神奈川県内に分布する植物だけでも3000種以上あります。中には混乱してしまいそうな紛らわしい名前も多く、今回はそんな中の2種類の植物を紹介します。今、ちょうど博物館の敷地内や周辺の樹林地でたくさん咲いています。
まずこちらは、キツネノマゴです。

キツネノマゴ(狐の孫)名前の由来はよくわかっていません

そして、隣り合うように咲いていたのが、カラスノゴマです。

カラスノゴマ(烏の胡麻)鞘の中に実る黒い種子を、カラスが食べるゴマに見立てたのが由来だそうです

「孫」と「胡麻」。漢字で書けばわかりやすいのですが、生物の種名は、学術的に表記する場合はカタカナで表記するのが慣例です。
いずれにしても、同じ時期に同じような環境に咲くので「狐の胡麻」か、「烏の孫」か?混乱してしまいそうです。でも、そんな紛らわしさも、毎年この季節の頭の体操だと思って記憶をたどれば楽しいかもしれませんね。
(生物担当学芸員)

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地質分野実習 ~展示制作編~

 こんにちは。

 地質分野実習生です。今回は先日の野外調査に基づいて展示を制作した様子を書いていきたいと思います。

 展示準備の初日は展示の概要を話し合いました。展示する資料の選定や文章の作成を行い、レイアウトを考えました。

 適切な言葉や写真を選ぶのに苦戦しました。

 二日目は文章を推敲し、展示パネルを制作しました。

 実際に展示パネルを作ってみると完成が近づいているようでワクワクしてきました。

 最終日は資料を展示ケース内に配置しました。

 展示ケースの中に入って資料を配置しました。

 展示パネルを固定するために金槌(かなづち)を使って虫ピンを打ち込みました。

 みんなで遠くから見たり長さを測ったりして慎重に作業を行いました。

 こちらは展示の一部です。

 様々な工夫を施しました。

 9月16日から公開される予定なので、ぜひ足を運んでみてくださいね!

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9月9日(土)オープン! わぉ!な生きものフォトコンテスト写真展

毎年恒例となりました、「わぉ!な生きものフォトコンテスト写真展」、今年は第8回目を迎えました。

今年のポスター

オープン前日の9月8日、列品作業があり「わぉ!わぉ!生物多様性プロジェクト」を主催するソニー株式会社と、公益財団法人日本自然保護協会から、そして、実習が終了したのに!生物分野の実習生が作業に来てくれました。

列品作業中

ワイヤーの吊り下げや、作品の取り付けなど、手際よく作業してくれました。

列品完了!でもまだ照明の演出が残っています

今年は今までで一番広いスペースを使って展示します。大きなパネルも一枚一枚、じっくりゆったりとご覧いただけます。

照明も当てて、完了です!

会期は9月9日(土)~10月9日(月・祝)です。見ると思わず「わぉ!」と声をあげてしまう、楽しくて素敵な写真を24点ご覧いただけます。また、当館学芸員がこのコンテストの特別審査員に加わっているのですが、実はある賞のコメントの、中の人も務めています!!そちらも併せてお楽しみください。
(生物担当学芸員)

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アレチヌスビトハギ

先日、可憐だけどちょっと迷惑な花として、ヌスビトハギを紹介しました。ヌスビトハギはそれでも在来種なので、迷惑と言ってもそれは人間の勝手な都合です。しかし、博物館の駐車場の一画で、さらに嬉しくない存在のヌスビトハギが咲いています。

アレチヌスビトハギの花

花はヌスビトハギより大きくて美しいのですが、こちらは外来種のアレチヌスビトハギです。ここ数年、お隣の樹林地の日当たりが良い場所などに生育してきていたので、とうとう博物館の敷地内にも入ってきたというわけです。見分け方は、アレチヌスビトハギの果実は3つから4つが1組になっていることです。

アレチヌスビトハギの果実

ヌスビトハギは、2つセットです。

ヌスビトハギの果実

アレチヌスビトハギも人間の活動が原因で持ち込まれ、定着しているので、それ自身が何か悪いことをするわけではありません。でも、大柄で目立つ植物なので、あまり増えて欲しくないな、というのが正直なところです。
(生物担当学芸員)

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蛸の足?

9月5日、なかなか秋らしい気温にならない中、緑区の相模川へ植物の調査に行きました。目的はこちら、タコノアシです。

タコノアシ

「蛸(タコ)の足」という奇妙な名前の由来は、この特徴的な花の付き方を、吸盤のついたタコの足に見立てたものです。ただし、さすがに8本もついているものは無く、だいたい3~4本ですが・・。特徴的な姿から想像がつくように、最新の植物分類ではタコノアシ科という独立した科となっています(かつてはユキノシタ科に無理やり?入れられていました)。

タコノアシの花

絶滅危惧種ではありませんが、自然度の高い河原や休耕田など、やや不安定な立地を好むため、市内でも分布が限られています。
すぐ近くには、ゴキヅルが咲いていました。こちらは絶滅危惧1B類(神奈川県レッドデータブック)です。

ゴキヅルの花

以前このブログでも紹介しましたが、重要な自生地なので、毎年生育状況を確認しています。タコノアシもゴキヅルも果実が特徴的なので、秋も深まってきた頃にまた訪ねてみようと思います。
(生物担当学芸員)

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2023年度博物館実習・歴史分野~資料保存・整理~

皆さん、こんにちは!相模原市立博物館の歴史分野実習生です。
本日の実習では、博物館に新たに寄贈された資料の整理を経験豊富な資料整理員の方と一緒に行いました。

資料を封筒に入れる様子

中性紙箱を組み立てる様子

まず、使用した道具類について紹介します。中性紙封筒と中性紙箱、鉛筆とカッターを主に使いました。紙資料を安全に保存するために中性紙が用いられ、中性紙箱は組み立てから行いました。

カッターは資料が中性紙封筒に入りきらない場合に使用し、一辺を切り開いてファイル状にします。また、鉛筆はペンと異なり、資料をインクで汚損する危険性が少ないため使用することが多いです。

資料整理は以下の手順で行いました。

①受入時に資料が入っていた箱に、どのような形で置かれていたのかを写真で記録する。
②受入時の状態を複数人でスケッチする。
③中性紙封筒に仮番号をふる。
④資料を中性紙封筒の中に入れていく。
⑤封筒に入れ終わったら、仮番号1番から順に資料の情報を書いていく。
⑥情報記入が終わったら、PCの目録に資料の情報を入力する。
⑦中性紙箱を組み立て、PCへ入力し終わった資料を中に入れていく。
⑧収蔵庫にしまう。

資料を中性紙箱に入れる様子

資料整理の手順は、資料の状態や性質によりこの限りではありませんが、本日は初心者向けにわかりやすく、丁寧に教えていただきました。実物の資料を触りながら整理していると、興味深い記述が多く見つかり、大変貴重な経験を積むことができました。しかし、ベテランの資料整理員の方は、今回私たちが資料整理した倍の量を短時間で整理することが可能だということを聞き、とても尊敬するとともに、私たち歴史分野実習生ももっと精進していきたいと改めて思いました。

今回の資料整理の経験を通して、受け入れた資料を活用できる状態にするには、大変な労力を必要とすることを実感しました。目録作成を行うことで、展示や博物館資料として幅広く利用されることに役立つと分かり、資料整理の重要性を学びました。

(歴史分野実習生)

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センニンソウとコボタンヅル

博物館の駐車場はフェンスで囲まれています。そのフェンス沿いは、つる植物の宝庫です。夏の終わりになると、そこに白い花がたくさん咲きだします。そのうちの1つが、センニンソウです。

センニンソウ

キンポウゲ科のつる植物で、クレマチスの仲間です。真上を向いた純白の花が群れて咲く姿はなかなか見ごたえがあります。
そして、花だけ見ると同じように見えてしまいますが、こちらはコボタンヅルです。

コボタンヅル

これだけ花がそっくりな近縁種が、同じ季節に隣り合うように(時にお互い絡み合いながら)咲くのもちょっと不思議ですね。どのような種分化の歴史があるのでしょうか。
両種は、実は葉の形が異なるので見分けるのは簡単です。センニンソウは葉に鋸歯(縁のギザギザ)がありません。

センニンソウの葉

一方、コボタンヅルははっきりとした鋸歯があります。

コボタンヅルの葉

日中の暑さからは秋の訪れをまったく感じることができませんが、植物の世界は着実に秋へと向かっています。
(生物担当学芸員)

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