「エターナル・リターン」 上映中!

今、当館のプラネタリウムで上映している全天周映画「ETERNAL RETURN ーいのちを継ぐものー」
大変良い作品なのですが、券売機の前で観ようかどうしようか躊躇している方を時々見かけます。
もしかして、内容が分からないので迷っているのかもしれません。
でも、どんな作品か説明しようとすると、これがなかなか難しいのです。
そこで、紹介文を書いてみる事にしました。
始めは自分の考えを整理するために書きはじめたのですが、どうせなら、と思い、このブログに掲載する事にしました。
既にご覧になった方には蛇足かも知れませんし、未だの方には少々ネタバレになってしまうかも知れません。それでも、せっかく上映するからには少しでも多くの方にご覧いただきたいと思います。以下は、私が感じたままの作品紹介です。よろしければお読み下さい。そして、作品に興味を持ったら、ぜひ、ご覧になってください。当館では今年度いっぱい上映する予定です。(学芸班 木村)

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少し説明を加えたポスターをつくってみました。これを読んで、券売機のボタンを押してくれる方が増えると良いと思います。

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「ETERNAL RETURN ーいのちを継ぐものー」紹介

宇宙の誕生と「私」はつながっている…一見、説明するのが難しそうなこの事を、わずか40分弱の時間でこの作品は描いています。
ストーリーは、主人公「はるか」が子どもの頃一緒に星を見上げ、いつも星の話をしてくれた「おじいちゃん」の語りによって進んでいきます。この、おじいちゃんの死をきっかけに、「はるか」は生命の意味について、考え、問いかけ始めるのですが…
宇宙や星の誕生を描くCG映像は今までにもたくさんありましたが、この作品の映像は極めて質が高いものです。圧巻は、原始地球に天体が衝突し、月が誕生するシーン。ドーム映像ならではの、のしかかってくるような映像に、思わず我を忘れて見入ってしまいます。
また、深海の熱水噴出孔の映像は、大変リアルに描かれていると同時に、原始生命が誕生した時代の熱水の色を最新の学説に基づいて再現するというこだわりようです。
宇宙、恒星、さまざまな元素、惑星系、地球、そして原始生命へと連綿とつながる歴史を、出来得る限りの正確さと美しさで描き切っているのが、この作品の最大の魅力と言えるでしょう。
終盤、はるかは、ある事に気づき、問いかけの答えを見つけます。そして、宇宙から生まれた命が「私」というものに受け継がれ繋がっていく事を暗示して、物語は終わります。
科学的説明と、祖父と孫の心のつながりという2つの要素が入り混じるため、難解な作品に見えるかもしれません。しかし、「宇宙と自分が一体であり、そのつながりには終わりがない」という事を科学的に、かつ情感豊かに描いた類いまれな作品だと思います。何より、映像と音楽がとても心地よいので、難しい事は考えず、まずその世界に身をゆだねる気持ちで見るのが良いと思います。(文責:木村)

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ヤブランが満開

博物館の前庭では、ヤブランが満開です。

この花は「ラン」と名前がつくものの、ラン科ではありません。ユリ科、あるいは最新の分類法ではキジカクシ科の植物です。花を拡大すると・・

ちょっとランには見えませんね。6枚の花被片がユリに近いなかまであることを示しています。林床の暗いところ=やぶに生えていて葉がランのようだから、というのが語源でしょう。でも、淡いあやめ色のかわいらしい花は、拡大してもじゅうぶん鑑賞に堪えます。

ほかにも、葉が似ているというだけでランとつく植物があります。タケシマラン(ユリ科)やタヌキラン(カヤツリグサ科)などいろいろ。でも、ハゼラン(スベリヒユ科)などはなにをもってランとつくのかよくわかりません。

ハゼラン

ところで、ランというと、美しく高貴な花の象徴のように感じられますし、実際、花屋さんにおけるランは高嶺ならぬ「高値の花」。野生ランも、生きもの好きにとって「出会えるだけで嬉しい」宝石のような存在です。ランの英名は、Orchid(オーキッド)。これはギリシャ語のOrchisが語源と言われています。さてこのOrchis がなにを意味するかは・・ここでは堂々と書けません。植物の分野では有名な話なので、ネット上でも簡単に見つけられます。ぜひ調べてみてください。

(生物担当学芸員 秋山)

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イソウロウの卵(クモ)

以前もご紹介したチリイソウロウグモ。卵のうとメスが一緒にいるところを写真に撮りました。

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画面左がクモで右側手前の糸にぶら下がったタマネギみたいなのが、卵のうです。

本来の網の主はいません。もしかして、食べられてしまったのでしょうか?
卵のうの形はクモによって様々です。同じように他のクモを襲うクモであるヤリグモの卵のうと子グモをお見せします。

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卵のうは細長い紡錘形で、その周りを親そっくりに尖った形の子グモが取り巻いてます。

こんな風にいろいろな造形を見ているだけで、生き物の多様さが想像できて楽しいものです。(学芸班 木村)

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夏の虫

朝通勤途中に見つけた昆虫を2つ。

カナブンです。あまりにもふつうに見られる甲虫ですが、やっぱりきれいですね。

先日、犬越路峠近くで見たアオカナブンと比べると、ずんぐりしていてそこもなんだかかわいらしいです。そういえば、そのアオカナブンの写真はあまり大きく載せなかったので、改めて犬越路峠で撮影した写真を・・美しい!

今、アオカナブンは平地ではほとんど見られないようです。

もう1つ。イチモンジセセリです。このチョウを見ると、なんだか夏も終わりが近づいてきたような気がします。実際は初夏から発生しているはずなのですが、お盆過ぎから目立つように感じられます。

博物館は今日もたくさんのお客様がいらしています。猛暑ですが、館内は涼しいです。ぜひ、クールシェアにおいでくだい。

(生物担当学芸員 秋山)

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今年も?JAXA実物初公開!

今日の夕方、JAXA相模原キャンパスから、大きな荷物が届きました。
とにかく重いらしく、3人がかりで台車に載せて運ぶのがやっとだったとの事。

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見た目はただの金属の箱です。

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何やらものものしいステッカーが貼ってあります。

苦労して展示室に運び込み、カバーを取ると…

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??やはり金属の塊が??

実はこれ、宇宙での人工オーロラ実験に使われた電源装置で、実際にスペースシャトルに搭載されて実験を行い、地球に帰還した装置(そういったものを「フライト品」というそうです)なのです。
しかも、つい最近見つかった(?)ものなので、なんとこれが「世界初公開」。
昨年度の夏季企画展ではJAXA阪本先生のご尽力により「蔵出し初公開」みたいな事が頻発したのですが、今年もやっぱりありました!という感じで持ってきてくださいました。
研究機関が所有する貴重な資料をこんなスピードで展示できるのは実に得難い事。博物館としても機会は逃がしたくないものです。また、展示する事で価値ある資料の発見に弾みがつけば、とも思います。
というわけで明日、8月17日(土)から、この電源装置を特別展示室で見る事ができます。ぜひこの機会に「宇宙に行ってきた本物」を、その目でご覧ください。企画展は9月1日(日)までです。(学芸班 木村)

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きれいになった植え込み

いつも通勤で通る歩道。先日、そこの植え込みがきれいに剪定されました。

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すっきりとして、風通しも良くなりました。

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剪定前の様子。ぼさぼさです。

ただちょっとだけ残念な事。
この場所は通勤途中に生き物の取材をするのにとても良い場所だったのです。今はほとんど生き物の気配がありません。
野外調査などをしていると、こういう事はしょっちゅうあります。ましてや街中ですから、当然といえば当然の出来事です。
人が利用する空間ですから、きちんと管理するのは当たり前です。
朝っぱらから道端にしゃがみ込んで写真を撮ったり、1人でぶつぶつと呟きながらその辺を覗きまわっている方が、よほど変です。
こうなる事は承知していました。
それでもちょっぴりさびしさが残ります。
草木はいくらでも伸びます。またすぐにこの場所で観察をしながら通勤できるようになるでしょう。そう思いながら毎日同じ道を歩いています。(学芸班 木村)

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炎上する大スギ

8/11の14時45分頃の落雷により炎上、焼失した津久井城址城山の大スギの、炎上中の写真を掲載します。この写真は消防団員でもある市職員が現地で撮影したものです。すでに新聞などに提供されているため、このブログに掲載するかどうか迷ったのですが、落雷による巨木の炎上中の写真は非常に貴重な記録です。また、新聞報道も地域版がほとんどですし、ここに改めて掲載する意義は大きいと判断しました。

上の写真は16時25分の撮影で、まだ上部が残っている状態です。下は、上部がすでに燃え落ちている写真で、17時04分の撮影です。

浸食されて洞状になった内部に火が入り、生きていた樹皮側を残して釜と煙突のような状態で燃えていたことがわかります。現場が山頂近くの稜線上で消火栓などもちろん無く、雷雲により消防ヘリも飛べませんでした。消防団と地元消防隊がポンプとホースをかついで懸命に登り、中継しながらようやく現場に到着したのが落雷から5時間ほど経った頃だったそうです。放水された時、すでに上半分以上が崩れ落ちていました。

私たちの身近にある巨樹・巨木の多くも、このように基部が大きな洞となり、空洞化しています。その場合、落雷に遭うと内部から燃えていき、結果、上部が崩れ落ちるように倒れる可能性があるということになります。城山の大スギは斜面側に落ちて、なおかつ雷雨により付近に登山者がいなかったため大きな被害は免れました。しかし、立地の状況によって巨樹・巨木がこうした潜在的な危険を有するということを痛感させられる結果となりました。

巨樹・巨木は地域のシンボル、あるいは心のよりどころとなり、信仰の対象ともなっています。そうした存在に文字通り大なたをふるうのは非常に難しいと思います。しかし、その潜在的な危険性を認識することの大切さを、この大スギの遺骸が訴えかけているように思えてなりません。

(生物担当学芸員 秋山)

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あきごのはじまり

先日、浸酸処理をして休眠打破をはかったカイコの卵は、予定のふ化日になってもいっこうにふ化せず、やきもきしていました。もしかして、浸酸した時の水温が高すぎたかな、などとあきらめかけていました。

しかし、今朝、ふ化が始まりました。どういう理由で遅れたのかよくわかりませんが、ともかくほっとしました。ふ化した毛蚕(けご)は、卵のそばでじっとしています。しかし、近くにクワの葉を持ってくると・・・。

やおらもぞもぞと動きはじめ、一直線にクワの葉へ向かいます。

においでしょうか。3ミリほどの小さな昆虫が生きて動いていること自体、不思議な気がしますが、それがこうして誰に教わるでもなくまっすぐ葉に向かい、食べては穴をあけていくのですから、驚きです。

この時期、7月下旬以降に育てるカイコを秋蚕(しゅうさん、またはあきご)と呼びます。気温が高くて成長が早いため、どうしても繭の大きさが小さくなりますが、もりもりと食べるスピードは変わりません。これからまた、カイコの日々が始まります。

(生物担当学芸員 秋山)

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大スギ、雷神に屈す

すでに新聞などで報道されていますが、市内緑区の津久井城址城山(標高375m)のシンボルツリーとして君臨してきた大スギが8月11日午後2時45分頃、落雷により焼失しました。麓の城山ダムなど東側の津久井地域玄関口から城山を望むと、台形状の山塊の上辺にぴょこんと突き出て見えていた大スギは、正真正銘、津久井地域のシンボルでした。

在りし日の大スギです(2005年4月撮影)。

今日撮影した焼け跡です。

さらに、2010年撮影の、樹冠部を見上げたところ。

今日のようす。

木の上半分は北側斜面の曲輪跡に焼け落ちていました。

麓からも見えるくらいに突出した存在だったからには、これまで幾度も落雷に遭ってきたはずです。でも、幹が健康であれば樹冠を吹き飛ばされたりしたくらいで木全体が炎に包まれることもなかったのでしょう。しかし、今回の落雷は事情が違いました。老齢に達したこのスギは、すでに幹内が空洞だったようです。内側から空を見上げたところ。

消火作業により燃え残った下の部分も、樹幹は虫や病気により激しく浸食されてほぼ空洞だったことがうかがえます。

私は巨樹巨木に特別な思い入れがあるわけではないのですが、樹齢の推定もままならないようなこの巨木の最後は、じつに潔かったと、いとおしく思いました。ポンプとホースを足で担ぎ上げた消防のみなさんの懸命な消火活動もありますが、山火事を起こすこともなく、人的被害も出さず、そもそもここまで弱りながらも、土砂崩れとともに根こそぎ倒れることもなく、天寿を全うしたといえるのではないでしょうか。もし、生き残った根から萌芽することがあっても、それは遺伝子が一致していようとも大スギという存在とは別物です。大スギは、確かに今、巨木としての任を降りたわけです。お疲れ様でした。

これからしばらく、この大スギは雷という不可避の自然現象の無慈悲で圧倒的な威力を私たちに知らしむべく、ここに遺骸をさらし続けることでしょう。

(生物担当学芸員 秋山)

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イワツバメの巣にやってきたのは…

先日、市内の施設でイワツバメの巣が複数あるのを発見しました。
「ああ、イワツバメの巣だなあ…結構あるなあ」と、ぼんやり眺めていましたが、ふと、おかしな事に気づきました。
わらくずのようなものが、はみ出しているのです。


これが、その写真。まあ、はみ出してるかな?位ですが…


別な巣からはだらーん、と非常にだらしない感じにぶら下がっています。

やがて、小さな鳥が飛んできて、巣にとりつきました。ん?子育て?
すぐに飛び去ってしまったので、確認できなかったのですが、どうやら茶色っぽくてイワツバメではない様子。

そこで、エサを運んでいるならまた来るだろうと待ち伏せすることに。
案の定、しばらくすると、またやってきました。その正体は…


これです。巣の右側にとりついています。


なんと、スズメでした。

警戒しているのか、カメラを向けている間、じっとしていましたが、あきらかに巣に顔をつっこんで何かをやっているようでした。
博物館に戻ってから、鳥にくわしいAさんにたずねると「ああ、乗っ取りですね」と教えてくれました。
スズメはよく屋根瓦や雨戸の戸袋などの隙間に巣を作って子育てをしますが、最近の建物は隙間がないため、スズメも困っているのだという話もあるようです。
いずれにしても、他人の巣を乗っ取るとは、スズメという鳥のしたたかな一面を見た気がします。(学芸班 木村)

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