威嚇??

通勤途中に博物館お隣の樹林地を通ると、何かしらこのブログのネタがみつかります。今朝は、先日アップしたアオバハゴロモの幼虫を撮影したのと同じクズの葉の上に、マメコガネがとまっていました。

緑光沢に茶色の翅、写真ではほとんど見えていませんが、脇腹の白黒縞々模様がとても美しい甲虫です。そして、いつも笑ってしまうのが、カメラを近づけたり、あるいは風で葉が揺れたりするだけで、こうしてピンっと後ろ脚を上げるのです。

なんだか体操選手が平均台でキメのポーズをとっているみたいですが、ずんぐりしたマメコガネがやると、パロディにしか見えません。それにしてもどうしてこんなポーズをするのでしょう。シチュエーションから想像すると、威嚇?・・。しかし、少なくとも人間にはまるで効果がありません。鳥や肉食昆虫にはなにがしかの効果があるのかな。それとも威嚇ではない何か意味があるのか・・。うーん、今朝もはてなマークを背負い込みながらの出勤となりました。

ちなみにこのマメコガネ、北米では「ジャパニーズ・ビートル」と呼ばれています。20世紀初めに日本から北米へ入り込んで爆発的に分布を広げ、トウモロコシなどを食害する典型的な外来害虫となってしまいました。クズも同様に、日本から入り込んだ外来雑草として北米に広く分布しています。上の写真も日本では自然な生物風景ですが、ところ変わればインベーダーの組み合わせということになります。

(生物担当学芸員 秋山)

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はやぶさ2応援企画展始まりました!

昨日からはやぶさ2応援企画展「片道から往復へ 新たな宇宙時代の到来」が始まりました。外には新しいのぼり旗がはためいています。

展示室では ビオンカプセルがお出迎えです。でも入り口から中を見ると、ちょっと暗め。

なぜかと言うと・・・

3カ所に映像コーナーがあるため、室内を暗くしているのです。小惑星探査機「はやぶさ」の熱防御システムの紹介や成果をふりかえるもの、「はやぶさ2」のミッションを紹介するもの、そして、今年初めにロシアに落下したチャリャビンスク隕石の落下した瞬間の市街のようすをとらえた映像です。

もちろん、実物も。チャリャビンスク隕石を2つ、展示しています。小さいですが、正真正銘、宇宙から落ちてきたものです。

お向かいのJAXAの研究室からお借りしてきたインフレータブルエアロシェルもつり下げられ、ぽっかり浮かんでいます。これは、回収カプセルなどの大気圏再突入の際に、減速させて摩擦熱を下げようという実験に使われる小型模型です。

そして来週、7月17日から28日まで、いよいよ「はやぶさ」が持ち帰った小惑星イトカワの微粒子を公開します!お楽しみに!

※微粒子の観覧方法について詳しくは博物館ホームページをご覧いただくか、相模原市コールセンター(042-770-7777)へお問い合わせください。

(生物担当学芸員 秋山)

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シロブチサラグモの交接

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この頃こんな風に、ペアになっているシロブチサラグモをよく見ます。
この写真では黒っぽい方がオスで、オスメスとも、腹を上に向けています。
オスは触肢をメスの腹部にある生殖口にあてがって、精子を送り込みます。オスの触肢の先端は非常に複雑な形をしていて、同じ種のメスとだけ形が合うようになっています。また、スポイトのような構造があって、一度体外に出した精子を吸い上げて「持って」歩いているのです。
クモの場合「交尾」と言わず「交接」という事が多いのですが、こういう事情を反映しているのかも知れません。

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少しアップの写真。この写真では触肢はメスの腹部から離れています。

ところで、今回写真を撮っていて気づいた事。同じ網にオスメスが同居している場合、オスが網の中心にいて、メスがその上の方にいる事が多いように思えます。
という事は、メスがオスの網を訪ねてきている?大抵のクモはオスがメスの網にやってくるのですが、このクモは逆なのでしょうか。もっとよく観察する必要がありそうです。(学芸班 木村)

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こんな風にオスの方が網の中心部にいる事が多い?

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クズのつるにつく白いもの

通勤途中に通る博物館お隣の樹林地では、このごろクズのつるが旺盛に伸びてきて、とめどない生命力を感じます。

ところが、よく目をこらしてみると、つるの先の方に白いものがたくさんついています。

なんじゃこりゃ。あ、そういえば、クワの木につくクワキジラミに似ています。クローズアップしてみると、果たしてロウ物質を身にまとった昆虫の姿が。

持っていたフィルムケースに入れて博物館に持ち込むと、中でロウ物質がはずれてこんな姿が現れました。

アオバハゴロモの幼虫のようです。成虫になると、淡緑色のきれいな三角形の翅をもつカメムシ目の昆虫です。バナナ虫と呼ばれるツマグロオオヨコバイやウンカなどに近いなかまです。

怖いものなしでぐんぐん伸びていくように見えるクズも、こうした昆虫に水分を取られながら苦労して伸びていくんですね。

(生物担当学芸員 秋山)

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地質調査日誌7/10 道志村室久保川

7月10日水曜日。晴れ。

関東地方の梅雨も明けて、連日30度を超える暑い日が続く中、野外調査に出かけました。昨日は昨年も訪れた道志川の支流、室久保川に出かけました。

普段は長靴を履いて川沿いの調査を行いますが、夏場は靴のまま川に入って調査をします。写真は滝の上で撮ったもので、滝上のギリギリのところを歩いているように見えますが、実際には距離があるので、それほど危険ではありません。

上の写真ではわかりにくいのですが、河床の岩盤には地元で「的様」と呼ばれている“的”の様な模様があります。昨年よりも川の水量が少なかったので、ハッキリと模様が見えます。

“的”の周囲は閃緑岩のなかまです。

「的様」は周囲の閃緑岩をつくったマグマと“的”の白い部分を作ったマグマが完全に混じらずにできた模様です。マーブルケーキのマーブル模様のようなものです。

「的様」から下流に向かって調査をしました。

転石には、地元で「イボ石」と呼ばれている接触変成岩がありました。

“イボ”の部分は変成作用によりできた鉱物です。

川沿いはほとんど日陰で、川の水も気持ちよく、熱射病の心配もなく快適に調査をすることができました。

(地質担当学芸員 河尻)

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企画展準備中

夏の企画展の開会まであと3日。準備もいよいよ佳境に入ってきました。

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博物館の前にある看板は、既に企画展のものと張り替え済みです。

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展示室にも横断幕が…

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そして、昨日はお向かいのJAXA相模原キャンパスから、あの先生が来て、自ら展示作業をしていきました。これ、今回の目玉かも知れません。

7月13日(土)に企画展が開会すると間も無く、7月17日(水)からは「イトカワ」微粒子の公開です。こちらも全館をあげて準備を進めています。あと少しの間、お待ちください。(学芸班 木村)

企画展のご案内:http://www.remus.dti.ne.jp/~sagami/30-02tenjiannai-tokubetu.htm#kikaku-hayabusa2

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今日のおかいこさま(7/10 お疲れさまでした)

産卵から3日経ち、メスは今朝、世代を卵に託して命尽きていました。

一方で、丸坊主にした駐車場前のヤマグワの木ですが、すでに新芽が出ています。

小さくても、すでにクワの葉です。次のカイコへ向けた歩みが始まっています。

(生物担当学芸員 秋山)

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JAXAからぞくぞく・・!

休館日の今日は、今週末から始まる夏季企画展の大物展示資料の搬入が行われました。

ほんとうにサイズの大きなものが来る前に、お向かいのJAXAから“あの”探査機の模型とか、“あの”実験モデルとか、JAXAファンのみなさまにはたまらない資料を運び入れました。

そして、JAXA筑波宇宙センターを午前中に出発したホントに大物である「ビオンカプセル」が午後1時30分に到着!重量物の専門運搬業者さんが慎重に搬入します。

まだがらんどうの特別展示室をしずしずと行進。

設置してみると、やっぱり大きい!担当者によると、2度の大気圏突入を経験しているとか。アルミ合金の焼け焦げた跡がなまなましいです。ビオンカプセルについて詳しくは、こちらの説明をご覧ください。

やっぱり実物資料の存在感はすごい!企画展は7/13(土)オープンです。

(生物担当学芸員 秋山)

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今日のおかいこさま(7/8 産卵)

土曜日に交尾をさせたメスを、その日の夕方、たね紙の上に乗せておきました。

そして今日、月曜日。きれいに並んだ卵がずらり。メスもおなかがすっきりしています。

なぜこんなふうにきれいに並んで産むのかというと・・・

ビーカーをかぶせておくからです。カイコの卵は、ふ化のタイミングをコントロールするために浸酸処理などすることから、こうして産ませると作業しやすいのです。

大変お疲れさまでした。

ちなみにカイコの成虫は、食べるための口を持ちません。繭から出るときに、繊維を固めているのりを溶かす酵素を出す口があるだけです。成虫になったら、オスもメスもまさしく飲まず食わず。このまま衰弱して数日後には死んでしまいます。過酷な運命のように感じられますが、そんな感傷は人間の勝手で無意味な同情にすぎません。それがカイコの命のありようなのです。

こうして真珠のような卵によって世代を重ね、次の養蚕へとつながっていくのです。

(生物担当学芸員 秋山)

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ネコハグモ大発生

昨日、通勤途上で見かけた風景。

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フェンスに「これでもか!」という位ネコハグモの網がついていました。数えてみると、20メートルほどの距離に77頭。ほとんどが幼体です。

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1週間ほど前の写真てす。中央やや右奥に写っているのが母グモ。下の方の白くて丸いものが卵のうです。赤くて小さな子グモが数頭見えます。

このクモの卵のう1個当たりの卵数はせいぜい数個です。複数の卵のうをつくりますが、普通は何日かずつずれて孵化するので、これほど集中して現れるのは珍しいと思います。急に暑くなったのと同時くらいなので、それを待っていたのかもしれませんね。

もう1種類、最近よく見かけるクモ。

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ナガコガネグモの幼体です。ここ3年の間ではそれほど見かけませんでした。こちらは1つの卵のうの中に数百(800から1500という記述があります)の卵を産む種なので、たまたま近くに卵のうがあったという事なのかも知れません。
これだけたくさんの個体も、季節が進むにつれて、数が減っていきます。理屈の上では、1腹からオスメス各1頭が残れば種は存続できるわけですが、毎日見ていると、どこへ消えたのか不思議な気がします。(学芸班 木村)

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