遠方より

愛知学院大学大学院の院生さんが修士論文作成のためわざわざ名古屋から来られました。
淵野辺駅近くに宿をとり、3日間、朝から夕方まで博物館に通われました。
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相模原市内の中村遺跡の遺物を丁寧に観察しています。
中村遺跡は南区上鶴間本町に所在する旧石器時代の遺跡です。
30年ほど前に道路建設に伴って大規模な発掘調査がなされました。
おおむね2.5~1.5万年前ころにかけて繰り返し利用されたと考えられており、この間の旧石器の移り変わりを知る上で重要な遺跡です。
中村遺跡の位置
中村遺跡の位置
日本の旧石器時代(現在のところ確実にいえるのは4万年前ころ~)は関東地方で富士や箱根などの火山活動により火山灰が多く堆積し、関東ローム層が形作られた時代にあたります。
ロームが特に厚く堆積した相模原台地(相模野台地)は、旧石器の移り変わりを層位的に捉えることができる遺跡に恵まれており、市内には中村遺跡をはじめ旧石器時代の遺跡が多く存在します。
旧石器時代にはもちろん土器はなく、また有機物は酸性の土壌でとけてしまうため、観察しうる遺物は石器や礫などしかありません。そのため、旧石器時代の研究には一点一点の石器を注意深く観察し、作成技法や使用痕などを詳しく確認する過程が必要となります。
博物館は考古資料を展示するだけではなく、このように後世の研究に資するよう、考古資料を整理して保管するという大事な役割も担っています。(考古担当:正)

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ヤマビルにも厳しい自然界

先日行った丹沢の山中で、2度、クガビルに出会いました。
大型のヒルで、何と言ってもこの生物の特色は、ミミズを丸呑みしてしまうこと。
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残念ながらミミズの捕食シーンの写真はありませんが、文字通り、タテに飲み込んでしまいます。
そして、丹沢なので、もちろんヤマビルくんもいました。
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近年、ヤマビルは急激に増えたということで大きな問題になっています。ヒルが嫌だから丹沢には登りたくない、という人もいます。確かに体温や炭酸ガスを感知して人に寄ってきますし、潰しても死なないし、冬を除く3シーズン活動してるしと、手強い相手です。
でも、意外と弱い一面もあります。それは、乾燥です。
この日も山頂で、ザックについていたと思われるヤマビルがぽろりと木製のベンチの上に落ちました。
よく晴れた山頂の直射日光にあたり、急速に体表の水分が抜けていくのでしょう。身もだえながら徐々に弱り、ヤマビルは5分ほどで死んでしまいました。
野生の世界は厳しいものです。
(生物担当学芸員 秋山

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ギンメッキゴミグモ

ギンメッキゴミグモは、体長が、メス 4-7mm、オス 3-4mmと、小さなクモです。林の縁などで、目の細かい垂直の円網を張っています。その名の通り、腹部背面が銀色をしています。似た仲間が何種かいますが、住宅地や平地ではこの種がもっとも普通に見られます。
ギンメッキゴミ
ギンメッキゴミグモのメス。銀色と黒の比率に結構バリエーションがあるのですが、これは典型的なタイプ。網に「かくれ帯」もちょびっとついてます。
さて、以前マルゴミグモについてのブログで「水平円網を張るクモは普通、網の下にぶら下がる」と書きましたが、垂直円網を張るクモの場合は何か規則性があるでしょうか?
実は、ほとんどのクモは頭を下にしています。それに対し、ギンメッキゴミグモの仲間は、頭を上にしています。この事は、網の形にも関係があって、頭の向いている側の方が、お尻を向けている側よりやや長い、という研究結果もあります。
今度クモの網を見かけたら、そんな事を気にしてみても面白いのではないでしょうか。
マルゴミたて
ところで、これは「水平円網を張って、網の上に乗っている」はずのマルゴミグモ。なんと、ほとんど垂直に網を張っています。面白いので写真を撮りました。こんなふうに、生き物を見ていると「何にでも例外がある」事をしょっちゅう思い知らされます。
因みに、どちらかというと網の「上に乗って」いますし、頭は下向きです。そこは例外的でなかったようです。(学芸班 木村)

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植物の野外調査、ちょっと遠征

今日は丹沢のとある場所へ、神奈川が誇る県固有種の撮影に行きました。自生地は市内ではありませんが、県内の植物相を把握するうえで、欠かせない1種なのです。
今回も、相模原植物調査会の有志健脚組と一緒です。
まずは沢筋から一気に尾根へ上がる荒れた急斜面を登ります。
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途中、じつにいい顔をしたアズマヒキガエルが出迎えてくれます。なんという渋さ!いぶし銀の表情です!
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尾根に上がると今度は鎖場。丹沢らしいハードな行程です。
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そして、今日の目的である、サガミジョウロウホトトギス。今年はものすごく花付きの良い年で、小さな株から大株まで、まんべんなく開花していました。きらびやかで高貴な花です。
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稜線近くでは、ビランジも花盛り。すばらしい色合いです。
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そしてやっぱり、高所で見る雲はすばらしい!雲の誕生から成長を、手の届きそうな位置で見られるのが登山の楽しみのひとつでもあります!
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(生物担当学芸員 秋山)

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生物分野の実習(9/5)

博物館実習の生物分野は、今日いよいよ展示の仕上げの日。
先週、地質分野が午後10時までかかったということで、生物分野はそこまでかからずにできればとがんばりました。
パネルを切ってキャプションをつくり…
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展示室に解説パネルを打ち付けて、
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資料も並べて細かい配置などチェックします。やっぱりここはキャプションが必要だった、ここに写真がもう1枚欲しい…。現場でわき出るアイデアや改善点も、妥協せずに取り入れていきます。
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その結果、やっぱり完成は午後10時となりました。疲れ切った中にも、充実感あふれるこの表情!
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ゼロからスタートして、3人で賞味3日で仕上げたとは思えない充実した展示ができました。
公開は9/16からとなります。若い感性を存分に発揮した展示です。ぜひご覧ください!
(生物担当学芸員 秋山)

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生物分野の実習(9/4)

今日は生物分野の実習の7日目。展示制作も追い込みに入ってます。
展示パネルの文章の作文や展示タイトルの検討など、いちいち担当学芸員からダメ出しをもらってやり直し…。
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とにかく考えて話し合っての繰り返しです。
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それでも少しずつ確定して、パネル制作の本番に入ります。
明日には完成させなくてはいけません。どんな展示になるでしょうか。職員も楽しみにしています。
(生物担当学芸員 秋山)

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JAXA連携企画展 撤収終了

7月14日(土)から開催してきたJAXA連携企画展「宇宙科学の先駆者たち~糸川英夫と小田稔~」が9月2日(日)に終了し、昨日閉館後に3時間ほど、そして本日ほぼ1日をかけて資料の撤収作業を行いました。
作業自体は1日半で終わりましたが、後日、借用資料を返却することになります。
次第に展示資料が撤収されていきます。
撤収2日目
ペンシルロケットランチャー解体   阪本教授もm(_ _)m
ランチャー解体
ラインチャー解体②
まるで、廃線になった路線のレールのようでしょうか?
衛星模型
昨日、さがぽんがつぶやいてくれていましたが、人工衛星の模型は非常に繊細なパーツがあるため梱包ができず、1台1台手持ちで運搬しました。歩いて運搬できるってJAXAのお隣だからこそですよね。感謝感謝
資料撤収
残るは展示ケースだけ。
無事に終わった安堵感とともに、撤収を早く進めて次の展示準備へバトンタッチする使命感、でも、やっぱり担当する企画展が終わるのは少し寂しい気もします。
次の展示へ
閉店
会期中には、JAXA相模原キャンパス特別公開もあり、延べ21,063人ものたくさんのお客さまに貴重な資料の数々をご覧いただくことができました。
資料をご提供くださったみなさま、展示作業、撤収作業に様々な形でご協力いただいたみなさま、そして阪本教授をはじめ、JAXA宇宙科学研究所のみなさま、ありがとうございました。
さてさて、来年の連携企画展はどんなテーマか?
きっとまた、お宝ゾクゾクなお蔵出しの企画になることでしょう。
お楽しみに、、、
(天文担当 有本)
追伸
今回の企画展で展示した資料の一部(「おおすみ」第4段モーターなど)はJAXA相模原キャンパスの展示室に展示されることになりましたので、見逃した方は、ぜひ足をお運びください。
JAXA相模原キャンパス見学

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今日の雲(9/2)

いつも青空に浮かぶ雲の写真が多いので、そういう空が好きかと思われてしまうかもしれないので…
雲好きは、意外と雨雲も好きだったりします。
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今日は一日中、断続的なにわか雨。下層の層積雲のオンパレードのような空でした。
層状雲、不透明雲、乳房雲、降水雲、そしてすきま雲の上に、高積雲のひつじ雲ができた二重雲…。
写真の雲は…ちょっと分類しずらいですね。変化の途上でよくわかりません。ちなみにこの後、ふたたび雨が強く降り出しました。
昨日からのひさしぶりの雨模様に、植物たちは元気をとりもどしたようでした。
(生物担当学芸員 秋山)

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さがみはら地盤ツアー

今日は相模原市シティセールス推進課の主催で「さがみはら地盤ツアー」が開催されました。
博物館も見学コースの一つです。
博物館では、地盤を知る上での基礎となる地形や地質について学ぶのが目的です。
展示室で、地形模型や地層の剥ぎ取り標本を使って、相模原の地形や地質の成り立ちについて解説しました。

皆さん、熱心に聞いていただき、解説が終わった後はたくさんの質問を受けました。
今回のツアーのために開発したスイーツ「地層ミルフィーユ」の試食もあったそうです。私も一ついただきましたが、おいしかったです。ただ、地質担当としては、一番上は黒ボクをイメージして、黒色にしてほしかったところです。
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これをきっかけにして、地形や地質について興味を持っていただければと思います。
(地質担当学芸員 河尻)

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ススキのちまきにご用心!

ちまき
この写真、まるで「ちまき」みたいに見えますが、実はクモが卵を産む産室です。「コマチグモ」というクモの仲間がこのような産室をつくり、中で卵や子グモをガードします。
もし、そのような時にうかつに「ちまき」を開いたらどうなるか?そう、子どもを守ろうとした母グモに指先を咬まれることになります。
中でも「カバキコマチグモ」は、毒性が比較的強いクモで、咬まれると相当の痛みと腫れが引き起こされるそうです。「肘まで腫れた」という話も聞いた事があります。
ですから、もし野外でこういうものを見かけても、やたらに開いて見るのはやめましょう。
さらに、このカバキコマチグモ、子どもがふ化すると、母親を食べてしまいます。母親は、子グモたちにかみつかれても、抵抗しないそうです。究極の子育てなどと言われる事もありますが、あまりに合理的すぎて少し恐ろしい気もしますね。
産室の中の様子を、ちょっと見てみました。もちろん、母グモがいる事を想定して、ピンセットを使って慎重に…
ちまきちょっと開く
葉をはがしても、中はシートで守られています。
ちまきひらく
シートをはがすと、子グモの脱皮殻が…
カバキ頭胸部
どうやら子グモは巣立った跡のよう。脱皮殻に混じって母グモの頭胸部がありました。合掌。
(学芸班 木村)

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