生物分野 実習最終日(9/1)

こんにちは。博物館実習生(生物分野)の大川・武田・林部です。
本日は実習最終日、展示制作も大詰めです。と、その前に、専門分野初日に採集した植物標本を台紙に貼り付ける作業を行いました。

標本を台紙に貼り付けます

そのうちの一枚は、実習の記念として持ち帰れるように、ラミネートしました。思い思いの植物標本を作ることができました。

実習記念!持ち帰り用押し葉標本

次に、展示制作です。私たちは、相模原を代表する絶滅危惧種、カワラノギクについての展示を制作することにしました。
まず午前中に、タイトルとレイアウトとキャップションの最終調整をしました。特に、タイトル決めは難航しました。多くの人の目に留まるようなタイトルにするのは難しい・・・。限界ギリギリで絞り出したタイトルに決定しました。また、レイアウトを決めると、キャプションの足りないところが見えてきました。 大急ぎでキャプションを作りました。

何度も見直しながらキャプションや解説パネルを製作

午後から展示パネルの印刷と切り出しを行いました。切り出しは3回に分けて切るのがポイントです。実習生全員集中して作業にあたります。

怪我をしないように慎重にパネル切り

最後にいよいよ、特別展示室で展示を完成させます。資料を標本をケースに並べ、壁にキャプションを配置しました。何もない展示室に入るのはワクワクしました。

資料の列品

標本をケースに入れると一気に展示らしくなりました。
壁に解説パネルを打ち付けました。傾きやズレがないよう慎重に進めます。

水準器などを使って傾きを調整し、壁打ちします

無事完成することができました。展示を見渡して見ると、とても感慨深いです。
9月中旬から実習生展示が始まるので、是非見に来て下さい。

最後に記念撮影!

合計9日間をとおして、地域博物館の意義や役割について実感することができました。標本の作製、生きものミニサロン、実習生展示など学芸員の多岐にわたる仕事を経験し、学びの多い充実した実習になりました。ありがとうございました。

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コヒルガオとイチモンジセセリ

博物館お隣の樹林地は、四方をフェンスに囲まれています。そのフェンスには様々なつる植物がからみついていて、見ていて飽きません。初夏からぽつりぽつりと毎日咲いて目を楽しませてくれているのが、コヒルガオです。8月31日の朝、フェンスの脇を通りながら花に目をやると、何かがとまっています。

コヒルガオの花の中になにかが・・

セセリチョウの仲間の、イチモンジセセリでした。頭を頂点とした鋭角三角形のフォルムが、コヒルガオのラッパ状の花にフィットしていて、ちょっとおもしろかったので写真を撮りました。
よく見ると、口吻(ストロー状の口)を花の奥へ入れて密を吸っていました。

コヒルガオの花にイチモンジセセリの形がフィット

そういえば、その前日の夜に同じ場所を通った時、おっ!と思わず声が出てしまうような、見事な目玉模様を見ました。

ハグルマトモエ

ハグルマトモエという蛾のようです。大きさは翅(はね)を広げて10センチ程度でしたが、見とれてしまうようなデザインでした。しかし、見とれていると蚊の総攻撃にあってしまうので、素早く撮影してその場を去りました。

 

 

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博物館収蔵資料紹介~炭と炭焼き

前回まで行火(あんか)や火鉢などの、暖房に使う道具を取り上げてきました。こうした道具の熱源としたのは木を焼いて作った炭で、炭はこのほかにも調理をはじめ、蚕を飼う養蚕の際に部屋を暖めるなど、さまざまな用途に使われていました。

次の写真の左側は前回も取り上げた「火のし」(収集地・緑区二本松)で、丸い鉄の部分に炭を入れ、アイロンのように熱で布のしわを伸ばすのに使いました。右側の「こて」(中央区清新)は、炭火の中に先の金属部分を差し入れて熱くするもので、裁縫などの際にやはり布に当ててしわを伸ばしました。                  

 

次の写真は「炭火アイロン」(緑区上九沢)で、電気ではなく焼けている炭を直接中に入れて使いました。明治時代に外国から入って来たものですが、煙突(えんとつ)が付いているのが日本独特の形とされています。                   

 

博物館では燃料として炭も保管しており、写真は中央区宮下本町の方からいただいた炭の一部で、養蚕に使うために炭を俵で買ったのではないかとのことです。なお、炭は使う道具の大きさに合わせて割って使いました。                  

 

次の写真は何だと思いますか。市内では津久井地域をはじめ、相模原地域でも各地で炭焼きが行われており、南区大沼地区では、炭を焼くための土窯(どがま)を作る際に唄った「土窯つき唄」が伝えられています。

写真は左側が「つくぼう」、右側は「きね」(南区東大沼)で、いずれも土窯を作る際に土窯用の粘土(ねんど)を叩くのに使います。二枚目の写真はきねのアップで、右側の先端に叩いた粘土の跡が見えます。                                       

市教育委員会では昭和61年(1986)度に、大沼地区で実に33年振りに再現された土窯作りと炭焼きの様子を記録した文化財記録映画「相模原の炭焼き」を制作しており、この時に実際に使われた「つくぼう」と「きね」も、窯作りを示す大切な資料としてそのまま収集しました。

最後の写真は、この映画において「きね」を使っているところですが、本職員ブログの「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」「炭焼き」及び「炭焼きの窯作り」

でも、映画制作時に撮影した写真を紹介していますので、あわせてご覧いただければ幸いです。                 

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生物分野実習5日目(8/30)

こんにちは。博物館実習生(生物分野)の大川・武田・林部です。
本日は実習生展示に向けた準備を進めました。午前中は展示テーマや展示内容について話合いました。和気あいあいとした雰囲気で進んでいきます。

和気あいあいと進む展示企画の検討

午後からは、収蔵庫に足を運んで展示に使う標本を選びました。なかなか展示する標本が決まらず、最後は「せーの」で指さし。見事揃いました。

公平な選出方法です!

その後、解説パネルの作製を行いました。ニホンゴ、ムズカシイ…

今回の展示の主役、カワラノギクです!

学芸員実習の集大成である実習生展示は、9月の中旬から始まります!ぜひ見に来てくださいね!

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博物館収蔵資料紹介~火鉢などで使う道具

これまで取り上げてきたように、行火(あんか)や火鉢にはいろいろな形のものがあります。

次の写真は、博物館の五テーマ「地域の変貌」に展示してある資料で、手前の右側が行火(収集地・緑区下九沢)、その左側が角火鉢(中央区上溝)です。そして、奥に引き出しも付いた大型の長火鉢(中央区田名)が見えています。                 

なお、写真で手前の角火鉢の左にあるのは、丸い金属の部分に炭を入れ、布のしわを伸ばすために使った「ひのし」(中央区)で、後ろの長火鉢の右に見えるのはラジオ(中央区淵野辺)と扇風機(中央区上溝)です。

 

次の写真は、左側は金属製(緑区橋本)、右側は陶器(緑区宮下本町)の火鉢です。特に陶器の火鉢は、かつて結婚式などを自宅で行っていた頃に、訪れる多くのお客さんの暖房用として数多く必要で、個人の家ではなく地区で共同で保管していたものです。                 

 

火鉢には灰を入れ、その上に炭を置いて使いますが、火鉢の必需品とされていたものが、写真右の炭をつかむ「火箸・ひばし」(緑区上九沢)、写真中の灰をきれいにならす「灰ならし」(中央区上溝)、写真左の火鉢の中に置く台である「五徳(ごとく)」(南区当麻)です。五徳は足の部分を下にして立たせるようにして使うものもありました。                  

 

次の写真は、火鉢に五徳を据え、湯を沸かす「鉄瓶・てつびん」(南区当麻)を乗せたもので、火箸と灰ならしも置いてみました。このように火鉢は手をかざして温めるだけでなく、鉄瓶やヤカンでいつも湯を沸かしていました。                   

 

また、火鉢に限らず焼けた炭などを運ぶものに「十能(じゅうのう)」がありまず。写真の右側(緑区上九沢)はスコップのような形をしており、左側(南区相南)は運ぶだけでなく、丸い鉄の部分に炭を入れて直接火にかければ炭に火が付きます。                  

 

このように、一口に火鉢と言っても、関連するさまざまな道具とともに使われていたことが分かります。博物館には、このほかにもかつての生活で使われていたさまざまな道具を展示しており、皆様のご来館・ご見学をお待ち申し上げます。

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生物分野実習4日目(8/27)

こんにちは。博物館実習生(生物分野)の大川・武田・林部です。
本日は、実習生が企画した生きものミニサロン開催日です。
午前中は本番を想定した予行演習。話す内容や段取りの問題がボロボロと...
本番で手間取るわけにはいかない、少ない時間だけど確認。練習。確認。練習。

室内で予行演習と確認

12時になり本日1回目の開催。毎月、生きものミニサロンが行われている時間帯ということもあって、20人以上が参加してくれました。しかし、こんなにいてうまくできるのだろうか...

たくさんの参加者でミニサロン開始!

不安は的中。反省点だらけの1回目でした。時間配分・年齢層の見誤り、参加者が多くて全員に声が届かない。etc….

実習生は反省しかなかったのですが、ある参加者の方に
「参加してよかった」
と言ってもらえたのは救いになりました。

終わってから反省点の共有。2回目の開催である15時まで時間の許す限り確認。練習。確認。練習。
2回目は普段開催されていない時間帯にもかかわらず、呼び込みの甲斐あって13人が集まってくれました。

2回目はだいぶ進行もスムーズに・・

生きものミニサロンの中で見つけたニホンカナヘビです。解説したい生きものだったので、無事見つけられてよかった・・。

ニホンカナヘビ 参加者から「かわいい~」と声が!

1回目の反省点を踏まえて2回目は大きな滞りはなく進行できたような気はするけれど、まだ反省点は出てくる。けど、最後に自然に拍手が起こったのは印象が良かったからだ、と担当学芸員の方に言ってもらえて少し自信になりました。
2回目に出てきた反省点はもし次があったときのために忘れずにいたいと思います。

参加してくださった方、拙いところがたくさんあったと思いますが来てくだり、ありがとうございました。

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夜の生きものを撮影

博物館周辺の樹林地で、夜の生きものの様子を写真資料にするため、調査を行いました。
出だしから大物が登場です。

オオミズアオ

オオミズアオです。幅15センチメートル以上もある大型の蛾で、青白色の翅(はね)にえんじ色の縁取りがとてもオシャレですね。
8月も下旬になりましたが、セミはまだまだ羽化が続いています。アブラゼミの羽化をじっくり観察しながら撮影しました。

ヤブランの花につかまって羽化中のアブラゼミ

ヤブランの花につかまっていたので、ライトを当てると鮮やかな色合いが浮かび上がりました。
夜の調査は安全のため、一人では行いません。この日は生物分野の博物館実習生も立ち会ってくれました。

みんなで撮影

宇宙人!?と思ったら・・

宇宙人発見!

オオカマキリでした。昼間は体と同じ色をしている眼が、真っ黒く見えています。

オオカマキリ

これは、光を取り入れやすくするため、とされています。でも、カマキリの眼は複眼です。哺乳類のように瞳孔を広げたりするわけではないので、どんな仕組みになっているのか、不思議ですね。
こちらはニホンカナヘビです。ススキの葉をよく探すと、あちらこちらでこんなふうに寝ています。

ニホンカナヘビ

不安定な葉の上で寝るなんて無防備に見えます。でも、考えてみると、地上で寝ていたら、夜活動することが多いタヌキやアライグマの餌食になってしまいます。少し高くて、少し不安定な場所で寝ている方が安全なのかもしれません。
夜の花、カラスウリもまだかろうじて1輪だけ咲いていました。

カラスウリ

こちらも夜の花、メマツヨイグサです。昼間は閉じている花も夜はしっかり開いています。

メマツヨイグサの花

こちらは夜だけ咲くわけではありませんが、センニンソウの花です。昼間とはまったく異なる美しさがあります。

センニンソウ

博物館へ戻ると、壁にニホンヤモリがいました。

壁にいたニホンヤモリ

夜間照明の近くにいたので、集まって来る昆虫を狙っているのでしょう。
夜は身近な生きものたちの、別の表情を見ることができます。身近だからこそ面白い、夜の自然観察でした。

 

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生物分野実習3日目(8/26)

こんにちは。博物館実習生(生物分野)の大川・武田・林部です。
今日は、明日(8月27日)開催の生きものミニサロンの企画について話し合いました。前回の実習で決めた方向性を軸にして、まずは室内で必要な道具の用意と、タイムスケジュールの作成です。

企画を考えています

その後に外で予行演習を行いました。

進行を確認

そんな私たちが企画した明日の生きものミニサロンは、「夏の生きものビンゴ」です。五感をつかって夏の生きものを感じてもらいたいです。

こんな生きものが見つかるかな?

開催時間は12時と15時の2回(各30分)で、申し込み不要・参加無料となっています。

こんな生きものも見つかるかも

どんな生きものが見つけられるでしょうか。ご参加お待ちしております!

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アシダカグモ

博物館内の階段を下りていると、壁面を素早く動くものがいます。刺激しないようにそっと離れ、カメラを取りに行きました。戻ると、壁面に静止していました。

壁にいるのは・・

アシダカグモです。家屋内に生息するクモの中では最大種で、写真の個体も足を広げた大きさは10センチメートル近くありました。このクモは、相模原市内ではここ20年ほどの間に進出してきた外来種です。国内では、19世紀末に九州で発見されてから、徐々に分布を広げたと言われています。

アシダカグモ

こんな大きなクモが家の中にいるとなると、恐怖を感じる方も多いと思います。実際、博物館には時々、「家の中にでっかい毒グモが入ってきた!」と問い合わせがあります。同様に毒グモと思われて、殺虫剤をかけられ、ビンなどに厳重に封入された状態で持ち込まれたことも1度や2度ではありません。
しかし、このクモが家の中にいるのは理由があります。それは、ゴキブリを食べるからです。家の中のゴキブリの最大種である、クロゴキブリを主食と言ってもよいくらい食べてくれます。

照明器具の裏側へ隠れてもらいました

アシダカグモは、クモが嫌いな人にとって、いわゆる「不快害虫」なのですが、一方で、クロゴキブリを捕食してくれる益虫でもあります。ちなみに、人に害を与えるような毒はありませんし、網を張らないクモなので、お掃除の手間を増やすこともありません。
博物館でも、ゴキブリは資料に直接的に害を及ぼす「文化財害虫」です。それを食べてくれる存在ということで、アシダカグモは大切に見守っています。清掃担当の方にも、どうかこのクモを、はたいたりしないようにとお願いしています。この写真のアシダカグモも、お客様が驚かないよう、照明器具の後ろの方へ追いやって隠れてもらいました。

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ミズキの果実を食べるカラス

8月21日、お昼休みを取りながらふと窓の外へ目をやると、今年生まれの若いハシブトガラスが、ミズキの木の枝上でなにやらゴソゴソやっていました。

ミズキの枝にとまるハシブトガラス

ミズキの果実を食べているようなのですが、ほとんどがまだ未熟で、そんなものを食べて美味しいのか?と疑問に思っていました。しかし、撮影してよくよく画像を確認すると・・

窓ガラスごしの撮影なのでちょっと画像が不鮮明ですが・・

ちゃんと黒紫色に熟したものを選んでつまんでいたのです。

小さな果実を器用につまみとっています

ハシブトガラスは雑食性で、果実を食べるのも珍しくはありません。ただ、動物性の食物が豊富なこの季節にわざわざこんなに小さな果実を食べるのは、このハシブトガラスがまだ幼くて、動物性の食物を獲るのが上手ではないからかもしれません。それにしても、体の大きなハシブトガラスが枝先にとまると、枝が大きく揺れて食べにくそうです。そんな不安定な体勢でも、熟した果実を選んでつまむ食への執念を垣間見た気がします。

ミズキの果実 熟すと黒紫色になり、緑色の果実はまだ未熟です

博物館の駐車場付近では、若いカラスがいつも5、6羽から10羽近くで群れています。時には朝、前夜に羽化して動きのまだ鈍いセミを探して食べたりもしています。若いカラス同士、知恵を出し合って生き抜こうとしているようです。

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