博物館収蔵資料紹介~菓子作り道具②

本ブログ「博物館収蔵資料紹介」の初回に当たる前回では、南区磯部にあった和菓子店・吉川屋の菓子作り道具を取り上げました。当家の資料にはそのほかにも興味深いものがあり、引き続き今回も紹介します。

最初の写真は何だと思いますか。和菓子というとアンコがつきものですが、その餡(アン)にするために茹でた小豆の水分を抜くのに使った絞り機です。高さが約90cmあり、一連の菓子作り道具の中では比較的大きいものです。                

 

次のものは何だかすぐお分かりでしょうか。吉川屋では和菓子の製造・販売のほか、夏場には店頭でかき氷も売っていて、その氷削り器です。下側にあるのは、かき氷を入れるのに使っていたガラス皿と食べるためのスプーンです。                  

 

最後の写真は重さを量る台秤(だいばかり)です。実は和菓子屋として営業しながら砂糖などを売っていたそうで、それらを量るために使われました。確かに和菓子屋には砂糖があり、小売りをする商店としての性格も持っていたことが分かります。                

 

当家からは、このほかにも各種の菓子製造用具や菓子を運搬する木箱、つめ合わせる紙箱、看板、書類など、さまざま資料を寄贈いただきました。このような資料を見ることでかつての地域の生活の状況をうかがうことができます。

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カイコは眠、そして脱皮、2齢へ

カイコ飼育展示5日目。6月1日から給桑を開始したカイコは、4日目にほとんどが眠(みん)に入りました。眠とは、脱皮前、内側に新しい皮膚ができるのを待つために、食べず動かず、丸1日ほど過ごす状態のことです。

眠(みん)に入っているカイコ。上体を少し持ち上げて、頭を下げた姿勢をとります

そして、6月5日朝、一部のカイコが脱皮をしていました。

脱皮したてのカイコ 葉脈の上に、脱皮殻が見えます

黒光りした大きな頭が、脱皮した印です。2齢まではこのように頭が黒く、3齢以降はベージュ色になります。

脱皮した2齢のカイコ

脱皮したカイコはお腹を空かせて新鮮なクワを探していますが、まだ給桑は再開しません。順次クワを与えてしまうと、成長がばらついてしまうからです。ふ化の時と同様、大方のカイコの脱皮が終了するまで、しばしの間おあずけとなります。

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津久井城市民協働調査の講習会を開催しました。

5月18日に今年度の津久井城市民協働調査の講習会を津久井湖城山公園で開催し、15名の参加がありました。

午前中の様子

この日は講座を行ったのちに、津久井城を登り、根小屋周辺や山頂付近の本城曲輪などを見学しました。

講座は2本立てでした。はじめは文化財保護課学芸員による「津久井城市民協働調査の概要」です。

これまでの調査成果などを発表

2010年から始まった「津久井城市民協働調査」の歴史や、見つかった遺構などから分かった津久井城の特徴について説明がありました。

次に、神奈川県公園協会職員による「津久井城の概要」です。

どのようなお城か、その特徴は。

津久井城が内藤氏により整備され「根小屋式山城」として著名であることや、旧石器時代から現代までの城山地区における歴史的概観が説明されました。

その後、津久井城の現地見学を行いました。津久井城での曲輪(くるわ)などの位置は以下のとおりです。(図の出典:『市民協働調査10年の歩み みんなで堀った津久井城』令和3年(公財)神奈川県公園協会発行)

麓と山頂に曲輪がつくられています。

はじめに、根小屋地区の解説が行われ、市民協働で現地調査を実施している城坂曲輪群を見学しました。

今年度の調査予定地である城坂曲輪群7号曲輪

 

手前の日陰が6号曲輪、奥が5号曲輪

 

続いて、御屋敷曲輪へ移動しました。当日は大変天気が良く、蛭ヶ岳もよく見えました。

御屋敷曲輪は城主の内藤氏の居館があったとされています。

お昼は山頂で休憩しました。午後からは本城曲輪、飯縄(いいづな)曲輪などを回りました。

本城曲輪の様子

飯縄曲輪。天狗山とも呼ばれ、戦勝の神である飯縄権現が祀られています。

今回は津久井城の主な場所を巡り、本格的な登山さながらでした。

今年も皆さんと一緒に津久井城がどのような城だったのか、いろいろな観点から考えていきたく思います。

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今年も始まります!カイコのシーズン

6月1日、博物館では今年もカイコの飼育を始めました。一昨日、業者さんから届いた蚕種(さんしゅ:カイコの卵)は、昨日からふ化が始まりました。

ふ化したてのカイコ 体長2.5ミリメートルほどです

ふ化した順にクワの葉をあげてしまうと、成長がばらついてしまうため、9割がたふ化するまで待ちます。

ふ化したばかりのカイコは、毛が生えているため、毛蚕(けご)と呼ばれます

そして、今日(6月1日)のお昼までにほぼ全数がふ化したため、クワを与えることにしました。下の写真は、クワを与える前です。

クワを与える前

クワを横に置くと、一斉にわらわらとクワの方へ歩き出します。

クワを与えると・・

数分で、このとおり!

葉の左の縁に食いついています

写真ではわかりやすいように、小さめの葉を丸ごと与えていますが、実際は、短冊状に切り、小さなカイコが取り付きやすくします。ルーペで見ると、もう頭を上下に動かしながらしっかり食べています。

そして、博物館から蚕種を提供した学校へ、今日から出張授業も始まりました。

大沢小学校(市内緑区)での出張授業の様子

今日は小学3年生に授業をしましたが、とても集中して聴いてくれて、たくさんの質問が出ました。
博物館では、6月2日から、繭になる6月下旬にかけて、飼育の様子を展示します。1階エントランス内に設置しますので、どうぞお楽しみに!
※カイコの状態に応じて展示を休止する場合がありますのでご了承ください。

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博物館収蔵資料紹介~菓子作り道具①

職員ブログでは、これまで「写真に見る昭和・平成の相模原」として、博物館が建設準備の期間から撮影した、民俗分野のさまざまな写真を掲載してきました。

博物館では常設展示室「川と台地と人々のくらし」で、それぞれのテーマのもとで資料を展示していますが、実はそうした資料以外にも多くの資料を保管しています。このブログでは、そのような資料の中から、特に民俗分野に関わる資料を中心に毎回二~三点ずつ紹介します。いろいろなものを取り上げたいと思いますのでお楽しみに。

第一回目の今回は、南区磯部にあった吉川屋という和菓子屋の資料で、明治27年(1897)生まれの方が始めたそうです。なお、現在は営まれていません。

最初の写真は菓子型の木型です。落雁(らくがん)など粉菓子は花などのきれいな形に仕上げますが、こうした木型に米粉などをつめて型抜きします。                 

 

次の写真は一枚目のものと似ていますが、地域のそれぞれの家の家紋(かもん)の木型です。かつては結婚式や葬式の時に客に配るための贈答用として、近隣の家々から菓子の注文を受けることが多く、葬式のまんじゅうにはその家の家紋を押しました。このように菓子屋は地域の生活にとって欠かせない存在でした。                 

 

また、粉菓子のほかにせんべいなども作っており、写真はせんべいを焼く金型です。                 

 

昭和58年(1982)度に実施した相模原地域の調査では、各地に和菓子製造の職人がいたことが分かっているものの、博物館で保管する菓子製造等に関する資料は当家だけです。そうした点からも興味深い資料と言えます。

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残りあと1週間!がろあむし展 トークショーもあります!

3月26日から始まった舘野鴻絵本原画展「がろあむし 描かれた相模原の自然」も、残りの会期があと1週間(6月5日まで)となりました。“舘野さんの絵の世界に入り込むコーナー”は今日も大人気です!

撮影ポイントになっています

会期最終日には、舘野鴻さんのトークショー第二弾も実施します!

トークショーのポスター

そして本日5月29日は、舘野さんが在室されています。

シャッター係も務めています!

作者による展示解説に聞き入っています。

展示解説中

アトリエ再現コーナーいつもにぎやか。

絵の描き方、観察のしかたを解説中

最終日もトークショー終了後、午後2時頃から舘野さんが在室されます。ぜひご来場ください!

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生きものミニサロン「木や草についてるヘンなもの」を実施しました!

5月28日(土)、毎月恒例の生きものミニサロンを実施しました。今回のテーマは、「木や草についてるヘンなもの」として、博物館駐車場入り口近くのクワの木についている、ちょっと不思議なものをじっくり観察しました。

クワの木のまわりで観察会!

ヘンなものってなんのこと?と開始前から興味津々のお子さんもいました。ここでは、二つのヘンなものとして「アワアワ」と「白いもじゃもじゃ」というキーワードで探してもらいました。

これのことかな?

参加者同士でも、あれかな?これかな?と議論しています。
そして、いよいよ手に取って観察です。まずは、「アワアワ」。

せっけん?いえいえ、違います

これを、紙でふき取ります。そこから出てきたのは・・

黒い小さな虫が出てきました

お尻が赤く光ったように見える、アワフキムシの仲間の幼虫でした。おしりからアワの成分を出して、アワの中に守られながら、樹液を吸って成長します。
続いて「白いもじゃもじゃ」。

クワの葉を裏返すと・・

こちらは、ルーペ付きのビンに取ってみます。するとほこりかゴミがくっついているように見えたものが、モゾモゾと動いています!

よく見ると、足や頭が見えます

さらに見ると、足や顔もはっきりと見えました。これは、クワキジラミという、クワの葉の汁を吸って成長する昆虫の幼虫でした。お尻からロウ状の物質を出して、それがこのようにもじゃもじゃに見えるのです。いったいなぜこのようなもじゃもじゃになるのか、よくわかりません。
そして、せっかくこの季節のクワの木を観察したので、クワの果実を味見しました。

クワの果実

「おいしい!」「うぇぇ・・」などいろいろな感想が聞こえてきます。

熟したクワの果実を食べてみると・・

紫いろになった指先で服を触らないように!とお願いしつつ、終了しました。
次回は6月25日(土)の実施となります。

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高校生とホタル観察会

5月27日、市内の県立上溝南高校のホタル観察会にお招きいただきました。まず、校内で事前学習会です。

まずは校内で事前学習

「ホタルを見ながら生物多様性について考えよう」と題して、1時間ほどお話ししました。これから観察するゲンジボタルは、外から持ち込まれたものではなく、正真正銘、地元産の個体群です。それが生物多様性の観点からどれほど重要なことか、解説しました。同じ内容ではありませんが、ゲンジボタルについても触れた、さがみはら生物多様性ネットワークでお話しした動画があるので、よろしければご覧ください。
そして、生徒さんたちは40分ほどかけてゲンジボタルの生息地まで歩きます。ほどよく日も暮れて、歩き始める直前に早速、明滅飛行するゲンジボタルが出迎えてくれました。生徒さんたちは、カウンターを持って光っているゲンジボタルの個体数を数えながら歩きます。

ゲンジボタル(終了後に居残って撮影した写真です)

 

光るゲンジボタル

まだシーズンの初めなので、数は50個体ほどで多くはありませんでした。しかし、生まれて初めてホタルを見るという生徒さんも多く、とても盛り上がりました。

元気な生徒さんや先生方、OBなど約70名が参加しました!

途中、ニホンアマガエルが鳴嚢(めいのう)を膨らませて鳴いている姿を観察したりしました。

ニホンアマガエル

夜の校外活動ができる学校、素敵ですね。ゲンジボタルを地域学習の思い出の一つとして、記憶に刻んでもらえたら嬉しいです。

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春のダム湖の野鳥調査

5月26日、毎年春と冬に行っている市内緑区にあるダム湖の調査を実施しました。前回の冬の調査では、たくさんのオシドリがカウントされたことをこのブログでも紹介しました。しかし今回は、冬鳥のカモ類が去った後のため、とても静かな調査となりました。ダム湖内にいたカモ類は、カルガモのみでした。

カルガモの親子

そのうちの一組は、親子のカルガモでした。通常は1回に10個以上の卵を産むのですが、残念ながらヒナは2羽しかいませんでした。すでにほとんどのヒナが外敵に襲われてしまったのでしょう。湖岸には、ジャケツイバラの黄色い花がよく目立っていました。

ジャケツイバラ

とても美しい花ですが、その名のとおり、とても鋭いトゲを持つ、つる植物です。うっかり服などにひっかけてしまうと、服が破けてしまうばかりか、ケガをしてしまいます。
この日はずっと薄雲がかかっていたせいか、ずっとハロ(暈:かさ)が出ていました。

太陽のまわりにハロが出ています

こちらは、今回の調査で最も密度高く鳥を見ることになった、カワウのコロニー(集団繁殖地)です。巣の数は80個以上ありました。

カワウのコロニー

近づくと中からヒナの声が聞こえていました。
調査を終えて集計をした後、ふと近くの公園の水路を見ると、アオダイショウが泳いでいました。

泳ぐアオダイショウ

他にも途中、アナグマに出会ったりして、鳥以外の動物が印象に残る調査になりました。

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がろあむし展関連イベント「土壌動物観察会」を実施しました

5月22日、舘野鴻絵本原画展「がろあむし 描かれた相模原の自然」の関連イベントとして、土壌動物観察会を実施しました。舘野鴻さんと、絵本の解説ページに土壌動物のたくさんの美しい写真が紹介されている写真家の吉田譲さんを講師にお迎えした、とても贅沢な観察会です。大会議室で簡単な説明を行った後、すぐに博物館お隣の樹林地へ向かいます。そこで、「ふるい」を使って土の中にいる生きものを探します。

足元にもたくさんの生きものがいます!

あちらこちらから、「いたいた!」「なにこれ~」などと歓声が上がります。

「ふるい」が活躍します!

参加者の中には土壌動物を専門に研究している学生さんなどもいて、かなりマニアックな会話が飛び交っていました。舘野さんは、いろいろな土壌動物のにおいをみなさんに嗅いでもらっていました。

あの強烈なにおいで有名な胃腸薬のにおいが!などと、においも観察

室内に戻り、採集した土壌動物を実体顕微鏡で観察します。

熱気むんむんです

自分が見つけたものもですが、他の人が見つけたものにも興味津々です。これだけたくさんの人が探すと、中にはかなり珍しいものや、変わった性質を持つものも含まれています。

実体顕微鏡で観察

こちらはタカクワヤスデというヤスデの仲間です。

タカクワヤスデ

室内の光で観察すると黒っぽい普通のヤスデですが、ちょっとまわりを暗くしてブラックライトを当てると・・

ブラックライトを当てると、蛍光発色します

蛍光発色します!
みなさんの熱心な観察が続いたため、終了時間を30分延長しました。普段見る機会の少ない土壌動物ですが、想像以上に多様で魅力的な生き物がたくさん登場し、大いに盛り上がりました。

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