サツキの自生地

5月21日、市内緑区の渓谷へ、サツキの自生地の現況確認に行きました。サツキは街路樹や庭木としてごく普通に見られる植栽樹ですが、本来の生育環境はなんと、渓谷の岩場です。つまり、岩場の過酷な土壌条件で生育可能なので、コンクリートジャングルの市街地でも生育できる、というわけです。

人を寄せ付け難い風景の渓谷

この場所は、令和元年東日本台風(台風19号)で大きな被害のあった場所だったものの、その後訪れていませんでした。自生地がどうなっているか心配でしたが、無事に開花を確認できました。

流れの水面から1.5メートルほどの高さに咲いています

まだ花期のピークではなかったのですが、ざっと周辺を探したところ、株自体はかなり残っているものの、つぼみを付けている株が少ないように感じられました。若干、まだ台風によるダメージが残っているのかもしれません。

近づける岩場に咲いていたサツキ

一方、同じく渓谷を代表するシダ植物であるヤシャゼンマイは、元気に茂っていました。

ヤシャゼンマイ

渓谷の植物らしく、スッキリとしたフォルムと色合いが美しいシダです。
ほかにも、渓谷特有というわけではないのですが、カナウツギが開花していました。

カナウツギ

シラキも花穂がたくさんついていました。

シラキ

サツキは、相模原市のこの場所が、分布の東限と言われています。株が残っているのを確認できて、ひとまず安心しました。
(生物担当学芸員)

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稲城市で自然観察会-(おもに)植物編

5月19日、東京都の稲城市iプラザからの講師派遣要請で、当館学芸員が「街なか植物・鳥ウォッチング」の講師を務めてきました。2回連続の講座の1回目は、「(おもに)植物編」です。まず室内で、身近な自然観察を楽しむようになると、365日毎日楽しくなりますよ、というお話しから始めました。なにしろ、私たちが通常行く可能性のある地球上のあらゆる場所に、植物、または野鳥がいるからです。

最初は室内の講義から

15分ほどのお話しの後、早速野外へ出ました。普段通り過ぎている歩道の植込みなどにも、じっくり観察すれば楽しい植物がたくさん生えています。視点を落として、小さなかわいらしい野草の姿をみなさんで楽しんでいます。

視点を落とすと見えてくる、小さな植物を観察

そして、こんな植物の紹介も。ネズミムギの開花の様子です。花のようには見えませんが、雄しべが垂れているこの状態が、開花です。イネ科の植物なので、花びらはありません。

ネズミムギの花

ただし、ネズミムギは花粉症の原因植物です。取り扱いに注意しながら観察しました。
最近目立つようになった外来植物や、タイトルにあるように植物だけでなく、花を訪れている昆虫、さらには姿を見せてくれた野鳥(翌週はおもに野鳥を観察する予定ですが・・)などにも目を向けながら、再びiプラザの前まで戻って来ました。最後は、街路樹として植えられているカツラについてお話ししました。

カツラの木の下で終了

カツラは落葉の頃、甘い匂いを発します。若葉には無い匂いなので、秋の落葉も楽しみですよ、と予告して終了となりました。来週も身近な自然をみなさんと楽しもうと思います。
(生物担当学芸員)

※この観察会は申し込み制で、すでに締め切られています。

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生きものミニサロン「桑の木でくらす生き物観察」を実施しました!

5月18日の国際博物館の日に合わせて、毎月恒例の生きものミニサロンを実施しました。今回は「桑(くわ)の木でくらす生き物観察」というテーマです。桑の木はカイコの幼虫の餌として有名ですが、野外でも実は様々な生き物の生活の場となっています。そこで、博物館の敷地に生えている桑の木を舞台に小さな虫たちを観察しました。

本番の桑の木の観察のまえに、まずは肩慣らし。コナラの樹になぜかたくさん集まっている小さなアリたちを観察します。

葉の上にアリがたくさん

虫めがねでよく見ると、緑色の小さなアブラムシがいるのが分かりました。アリたちはどうやらアブラムシに蜜をもらっていたようです。

アリとアブラムシ

観察を続けると、皆さんも小さな虫たちの世界に目が慣れてきたようです。

小さい虫たちを観察

 

次は本番。桑の木の生きものを探してもらいます。
白いふわふわとしたものを背負った不思議な生き物が葉っぱの裏に隠れています。

白いふわふわ

これは、クワキジラミという昆虫の幼虫です。

クワキジラミの幼虫

シラミと名前につきますが、じつはアブラムシに近い仲間の昆虫です。白いふわふわはロウ状の物質で、幼虫だけが背負います。成虫は茶色っぽく、小さいセミのような見た目をしています。

クワキジラミを観察中…

 

つづいて観察したのは、枝先の茶色い生き物。

クワコの幼虫

クワコという蛾の幼虫です。
下見では1頭しか見つからなかったのですが、参加者の皆さんと探したところ、3頭を観察することができました。

そして、参加者の方がなんとクワコの繭(まゆ)を見つけてくれました!

クワコの繭

黄色くてとてもきれいな繭です。
じつはクワコは、カイコととても近い仲間です。
カイコは繭から糸をとるための品種改良によりもっと大きい繭を作りますが、繭の形じたいはクワコととてもよく似ています。
繭からも、同じなかまだということが見てとれます。

たくさんの目で観察すると、より多くの発見があることを実感した1日でした。

(動物担当学芸員)

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大学生の実習

相模原市立博物館では毎年夏に大学生の博物館実習を行っています。しかしそれ以外にも、大学の学芸員課程の授業の一環として当館を利用した見学や実習も受け入れています。5月18日午後、その一つとして、博物館から最も近い場所にある大学、青山学院大学から学生が実習のために来館しました。「博物館実習Ⅰ」という、上記のような本格的な学外実習の前に、必要最低限の知識とスキルを得るための講座です。
まずは、掛け軸の取り扱いです。

掛軸の取り扱い

当館の歴史担当学芸員から、掛け軸を広げて、掛けて、外して、収納するまでの手ほどきを受けます。
使用するのは本物の掛軸なので、やや緊張しながらの作業です。

丁寧な取り扱いが求められます

そして、こちらは梱包実習です。資料を安全に運搬するために必要不可欠な技術です。

過不足のない梱包を考えながら取り組んでいます

梱包方法は、ただ一つの正解があるわけではなく、資料の形状や状態に合わせた梱包を行う必要があります。資料をよく観察した上で、方法を考えながら作業します。
こちらでは、展示の際の資料の固定方法を紹介しています。

虫ピンとチューブを使った固定

不自然ではない形で、なおかつ資料へダメージが無いように固定する工夫について解説しました。
最後に、収蔵庫の見学です。

動植物資料収蔵庫を見学

博物館の収蔵庫の様子だけでなく、資料を保管する上での方針や意義についても説明しました。
事前にこうした博物館の専門技術やバックヤードを見ておくことで、実習先の博物館でどのような立ち振る舞いをすべきか、イメージしやすくなることでしょう。
(生物担当学芸員)

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相模原ふるさといろはかるた展、れんげの里あらいそのお次は…

5月15日(水)、南区新戸のれんげの里あらいそで開催していた出張展示「相模原ふるさといろはかるた」展の撤収作業を市民学芸員かるたチーム有志で行いました。

テキパキと片付けています。

本市の伝統、相模の大凧でお馴染みの「7間凧(ななけんだこ)」の下、約1ヶ月間たくさんの方にご覧いただき、「相模原ふるさといろはかるた」と市民学芸員の取組について知っていただけたと思います。

また、相模の大凧揚げといえば、市政70周年にちなんだ「稀風(きふう)」の題字が大空高く舞い上がった姿が記憶に新しいですね。

令和6年「相模の大凧まつり」(撮影:当館生物担当学芸員)

名残惜しくも、れんげの里あらいそでの展示はこれにて終了しましたが、市民学芸員かるたチームでは早くも次の出張展示に向けて着々と計画中です。
近日中に当館ホームページ等でお知らせしますので、お楽しみにお待ちください。

(歴史担当学芸員)

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キビタキの水浴び場

毎年、博物館お隣の樹林地では夏鳥のキビタキがやってくることはこのブログでも度々紹介しています。今年は博物館の建物近くでさえずっていることが多いのですが、先日(5月10日)、やけに近いところで「ヒッ、ヒッ」という地鳴き(じなき:さえずりではない、ふだんの鳴き声)が聞こえると思って探して見ると、思いがけず博物館のフェンスにとまって鳴いていました。

フェンスにとまるキビタキ

このフェンスは博物館の裏手の、排水路に沿っている場所です。この排水路は、4メートルほど掘りこまれており、上に金網が張られています。時折、排水が流れるため、ところどころに水たまりもできています。金網は、ヒヨドリくらいのサイズまでしか通り抜けられないため、小鳥にとっては安全この上ない水場となっています。そんな様子を一昨年、このブログでも紹介しました。
キビタキもまた、この水場を利用していたのでした。

金網にとまるキビタキ

この直後に金網の下へスッと入ったところは見たのですが、残念ながら、見失ってしまい、水浴びをしている現場は撮影できませんでした。それでも、キビタキが人工物にとまるところをあまり見たことが無いので、フェンスや金網にとまる様子など、ちょっと面白い写真を撮ることができました。
(生物担当学芸員)

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令和6年度地質学講座 1回目

5月12日(日)に令和6年度の地質学講座の第1回目を開催しました.地質学講座は2年ぶりの開催です.

今年度のテーマは「神奈川県最古の地層」で陣馬山や道志川下流に分布する約1億年前の地層を観察します.連続4回の講座で,1,4回目は博物館での講義,2,3回目は野外に出かけて地層の観察をします.

1回目は博物館での基礎的な事項の講義で,神奈川県最古の地層である小仏層群とそのでき方を理解するのに欠かせないプレートテクトニクスについて解説しました.

2日目は5月26日(日),相模原市緑区の陣馬山麓で小仏層群の地層を観察する予定です.

2年前の地質学講座は全回博物館での講義でした.それ以前は新型コロナウィルスの影響で地質学講座自体が開催できなかったので,野外観察を組み込んだ地質学講座は2019年以来,5年ぶりです.久しぶりの野外での地質学講座ですので,荒天とならないよう祈るばかりです.

(地質担当学芸員)

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最近活発な太陽活動と低緯度オーロラ?!

5月8日~11日かけて、太陽表面の大きな爆発現象である「太陽フレア」が何度も起こり、ニュースでも取り上げられるほど、話題になりました。当館の2F屋上にある太陽専用の望遠鏡が捉えた、太陽の様子をご紹介します。

当館の天文展示室では、晴れていればリアルタイムの太陽の姿を大きな丸いスクリーン(120cm)に映し出して見ることができます。

丸いスクリーン内の白く明るい円がリアルタイムの太陽[白色光]
(当館展示「8分19秒の彼方から」)

太陽フレアは、大きな黒点のまわりに起こることが多いのですが、この時、太陽の中心部下の南西側(右下)に2つの黒点群が合わさるように大きく広がっている様子がスクリーンで確認することができました。
(※これらの黒点群は太陽の自転により、いずれ太陽裏側にまわって見えなくなります。)

大きく広がっている黒点群
(左画像:白色光、右画像:Hα像)

この黒点群のまわりで、大規模なXクラスのフレアが短期間に5回以上起きています。
そのいくつかを当館で捉えたものがこちらです。(※太陽フレアはX線強度によって、5段階[低い←A,B,C,M,X→高い]に分けられています。)

明るく輝く太陽フレア[Hα像]
(左画像:5/10夕方  X3.9、右画像:5/11午前中  X5.8)

さらに5月11日には、これら太陽の爆発現象によって吹き出された太陽風(プラズマ)が地球の磁場に大きな影響を与えたことにより、「磁気嵐」が発生しました。磁場が乱れたことによって、人工衛星を使った全地球測位システム「GPS」に異常が発生し、地球のオーロラが非常に活発になりました。普段は地球の極域にしか見られないオーロラが、見ることがほとんどできない地域でも確認され、日本でも赤やピンク、紫色に見える「低緯度オーロラ」が観測されました。

通常の低緯度オーロラは、日本では極地方に近い北海道で確認されることが稀にありますが、今回のオーロラは大規模に発達したため、東北や北陸などの地域でも観測に成功しているようです。

もしかすると、相模原でも見ることができるかもしれないと思い、神奈川県相模原市緑区と東京都八王子市の境界にある標高約855mの陣馬山(じんばさん)の山頂で北の空の撮影にチャレンジしてみました。その結果は…

陣馬山の山頂から見た北の空 [↑クリックで拡大]
(2024/5/11撮影:当館職員)

11日深夜は北の低空に厚い雲があり、空全体にも薄雲があったため、肉眼では全く低緯度オーロラを確認することはできませんでした。

自宅に帰り、撮影した画像を改めて見ると、周りの夜空とは色が違う薄っすら紫色をした部分があることに気づきました。確証が持てませんが、もしかすると北の極域で活発に出ていたオーロラの上層部分(紫色)が写っていた可能性があります。

色を強調した陣馬山の山頂から見た北の空 [↑クリックで拡大]
(2024/5/11撮影:当館職員)

ちなみに、陣馬山の山頂から西側を向くと富士山が見えます。

陣馬山の山頂から見た西の空 [↑クリックで拡大]
(2024/5/12撮影:当館職員)

ここ数年(2024~2026年)は、太陽の活動周期(約11年)が極大期を迎えていることもあり、このような大規模な太陽活動や、オーロラが見られるチャンスとなっています。
ぜひ注目してみてください。

※太陽を直接目で見ることは、絶対にしてはいけません。必ず遮光板等の専用の道具を使い、安全に観察しましょう。
(天文担当学芸員)

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少年院跡地でタンポポ観察会!

5月11日、相模原市緑区小山の神奈川医療少年院跡地で自然観察会「黄色い花の見分けをしよう」を実施し、生物担当の学芸員が講師の一人として参加しました。この観察会は少年院を管轄する法務省矯正局などが主催し、同じ場所に建設予定の新しい少年院と地域の結びつきを強めることを目的として実施したものです。
じつは、70年以上の歴史に幕を閉じた神奈川医療少年院内には、在来種のカントウタンポポが多数自生していて、その一部は現在も跡地で元気に生育しています。それを観察するのですが、その前に、お隣の小原公園でウォーミングアップです。

小原公園でスタート

黄色い花を探して、タンポポか、タンポポではないかを確かめます。配布したテキストにならい、葉がどこから生えているか、花は1本の茎にいくつついているかで、タンポポを見分けます。

これ、タンポポかな?

花以外の部分もしっかり観察しています

そして、タンポポを見つけたら、次に花粉を採集して観察します。現在、横浜国立大学の倉田薫子教授の研究室が、少年院の敷地内にあったカントウタンポポを、取り壊し前に一時避難させ、それを新しい少年院に戻す計画を進めています。そんな縁で、研究室の学生さんたちがサポートしてくれました。携帯式の顕微鏡を操作して、花粉を確かめています。

顕微鏡で花粉を観察中

花粉のつぶの大きさが揃っていたらカントウタンポポなのですが、小原公園内のタンポポはすべて外来種のタンポポとの雑種でした。

大きさが揃っていないので・・雑種!

それでは!ということで、ふだんは立ち入り禁止となっている少年院跡地へ特別に入ります。広い跡地は、広大な草原になっていました。

神奈川医療少年院跡地

カントウタンポポの花の季節は過ぎようとしていましたが、わずかに咲いている株もあったので、花粉を確認します。

倉田教授から、カントウタンポポの葉に住み着いている昆虫の説明を受けています

こちらではしっかりと花粉のつぶが揃ったカントウタンポポを確認できました!
ほかにも、虫がいなくては生きていくことができない植物のために、虫の居場所づくりを創出する取り組みの一つである「虫ホテル」について、倉田教授から説明を受けました。

早速「入居」している虫に興味津々

2時間ほどの自然観察会でしたが、こちらがびっくりするくらい、植物に関心の高い小学生や中学生が参加してくれていて、とても盛り上がって楽しい時間となりました。これからも地域のみなさんと、この場所のタンポポの様子を見守っていきたいと思います。
(生物担当学芸員)

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ハエトリグモ

5月10日、事務仕事をしていると、目の前に積んでいた書類の上を黒いものが走っていました。

八つの眼が鋭く光ります

ハエトリグモの仲間です。室内にいることが多い種類だと思いますが、まだ成体になっていないようで、種類はよくわかりません。
よく見ていると、走っては止まり、前足を上下させてバンザイをしているようです。

バンザイをしているみたい!

ちょっと動きが早くて見づらいのですが、動画もあります。

ハエトリグモの動画

この動作の意味はわかりませんが、ちょっとユーモラスな動きでした。この仲間の主食はコバエなどの昆虫です。人間にとって良いことしかしない生きものなので、これからもすくすく育ってたくさんコバエなどを捕ってもらおうと思います。
(生物担当学芸員)

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