3月星空情報①

3月5日は、二十四節季のひとつ「啓蟄(けいちつ)」です。
啓蟄とは、土の中で冬ごもりしていた生き物が目覚める頃のことです。
いよいよ春らしさを実感できる季節になってきましたね。

今年はちょうど啓蟄の頃(6日)、太陽のそばにあって見えづらかった水星が、
わずかですが高度を上げ、普段より見やすくなる
「西方最大離角(地球から見て内惑星が太陽の西側に最も離れるとき)」となります。
ぜひ、この日の前後の日の出前に、南東の方角が開けていて、
高い建物がないところで水星を探してみてください。

細い月と並んだ水星 (2020/11/14 相模原市緑区撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またこの頃は、水星のそばに木星と土星も見えています。
さらに10日から11日にかけては、細い月も加わり、
明け方の南東の空がとても賑やかです。
ご覧になるときは、くれぐれも太陽を直接見ないように注意してくださいね。

 

これから活躍が期待される探査機についてもご紹介しましょう。
現在、水星には、水星磁気圏探査機「みお」が向かっています。
「みお」は、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した探査機です。
2018年10月20日に打ち上げられました。昨年4月10日に1回目の地球スイングバイ、
10月15日には、2回目の金星スイングバイが行われ、
惑星の重力を利用して軌道と速度を変えました。
今後「みお」は、金星で1回、水星では6回もスイングバイ(※)を行う予定です。
(※)天体の引力を利用して探査機の軌道制御や加速/減速を行うこと

2025年12月に水星を周回する軌道に到着した後は、
水星の磁場や磁気圏について観測します。
「みお」は、同時に打ち上げられたヨーロッパ宇宙機関(ESA)の
水星表面探査機「MPO」と協力して、
地球型惑星の起源と進化について迫ります。
これからの「みお」の観測が、どのような新たな知見をもたらしてくれるのか
楽しみですね。

図:水星磁気圏探査機「みお」(MMO)の観測イメージ

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白いカルガモ

先月(2月)、市内南区の相模川に白いカルガモがいる、という情報がありました。すぐに2度ほど確認に行ったのですが出会えず、どこかへ移動してしまったのかと思っていたのですが、数日前に再び同じ場所にいると連絡が入りました。
3月1日に確認に行くと、他のカルガモと一緒にコンクリートブロックの上で休んでいました。

カルガモのリューシスティック個体

全身ほぼ真っ白で、よく観察すると、腰から尾にかけてと、翼の次列風切羽(じれつかざきりばね)、そして頭部にうっすらと色が入っています。また、足や嘴は他のカルガモと同じ色です。

腰から尾羽にかけて少し色がついています

そして、目も他のカルガモと同じ色で、黒い色素(メラニン色素)はあるようです。

瞳は他のカルガモと同じ色です

従って、この個体はアルビノ(メラニン色素を持たない)個体ではなく、リューシスティック(白色変異)個体です。
他のカルガモは、カルガモ親子などでおなじみのこのような色合いです。

カルガモ(別の場所で撮影)

リューシスティック個体はいろいろな鳥で知られていますが、どうしても目立ってしまうため、天敵に襲われやすいと言われています。
相模川のように開けた場所ではそれほど影響は無いのかもしれませんが、ハヤブサやオオタカが飛び回っている場所です。無事に冬を越し、春を迎えられたようなので、このまま繁殖期を迎えられるとよいなと思いました。

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シリーズ「相模原ふるさといろはかるた」で見る名所紹介㉚ 的祭

的祭の 豊作占う 田名八幡宮

(まとまちの ほうさくうらなう たなはちまんぐう)

中央区田名の鎮守である田名八幡宮では、毎年1月6日に的祭(まとまち)が行われます。
この祭は、境内に設置された大きな的に3歳~5歳の4人の男児が矢を射て、その当たり具合で吉凶を占い、邪気を祓って豊年に導く神事とされています。起源は、源頼朝の時代とも、元禄時代であるともいわれ、わかっていません。相模原市の無形民俗文化財に指定され、初春に実施される行事として見学者が多く集まります。

平成23年1月6日撮影

的祭で使用する的と弓矢は近隣の酒井家が代々作っています。
的つくりのことを的踏みといい、的は葦(あし)で網代(あみしろ)風に編み、中央の黒丸は焼いたナスの茎の灰を混ぜた墨で描きます。葦はかつては緑区葉山島のものを使っていましたが、現在は他所のものを使っています。

平成17年1月4日撮影
網代に編む

弓は5張で、かつては緑区葉山島の桃の木を使いましたが、今はないので榎を使います。矢は酒井家の篠竹で、6本ほど作り、矢羽は半紙で作ります。
6日の午前中は、あらかじめ境内に作られた竹でできた枠組みに鉤(かぎ)を掛け、そこに的を取り付けます。
午後になると神事が開始され、くじ引きで矢を射る順番を決めます。

射手(いて)の男児は3歳~5歳までの長男4人で、前年に不幸のなかった家から選ばれます。
4人は裃(かみしも)を着け、父親の介添えで社殿を3周します。

平成20年1月6日撮影
社殿を3周する

そして、4人が交替で3回ずつ計12本、的に向かって矢を射ります。
一の矢は天下泰平の神の矢、二の矢は領地安全の地頭の矢、三の矢は五穀豊穣の百姓の矢という伝承がありますが、現在では地域や人々の発展を願って射ると読み替えられています。
矢が中央に当たると良いとされ、最後に総代長が今年の世相を占います。

平成24年1月6日撮影

かつては神事が終わると、的・矢・鉤を奪い合って家へ持ち帰り、無病息災、一家繫栄の縁起物としました。特に、鉤を取ると蚕が当たるとされてきましたが、けが人が出たこともあり、現在ではその奪い合いは行われていません。

この的祭のように、弓で大きな的を射ることによって、神意を占う神事は一般に御歩射(おびしゃ)と呼ばれます。
全国的にありますが、特に関東地方で多く行われています。神奈川県では、相模原市以外に川崎市や大磯町に分布していることが知られています。
その中でいくつもの共通点がある一方、的の作り方や弓の素材、矢を射る所作など細部については、各地域の生活様式と深く結びついており、大きな違いが見られます。

令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の影響を配慮し、的祭は開催見合わせになりました。再開した際には、細かい部分にも注目してみてください。

 

 

・このかるたは、当館のボランティア市民学芸員が2017年に制作したものです。
・このかるたは、博物館にて貸出し可能です(現在は当面の間、貸出しを休止しております)。
・貸出しの詳細やその他このかるたに関心のある方は、博物館までお問い合わせください。(042-750-8030)
・貸出し使用時には感染症予防のため、事前・事後の手洗い・消毒などを必ず行ってください。

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色々な石展④ 「黒色の石」コーナー

閉会した開館25周年企画「色々な石展」について、今回は、4「黒色の石」コーナーを紹介します。

前回までの記事はこちらから。
1「色々な石」コーナー
2「透明な石」コーナー
3「白色の石」コーナー

4「黒色の石」コーナーの展示の様子です。

「黒色の石」コーナー

「黒色の石」コーナー

「黒色の石」コーナー

水晶には黒っぽい色をしたものもあります。

黒い水晶

黒曜岩(こくようがん)は一般的には黒曜石と呼ばれています。岩石学的には流紋岩(りゅうもんがん)のなかまです。

安山岩(あんざんがん)と玄武岩(げんぶがん)は、教科書などではより黒い方が玄武岩と説明されることが多いのですが、実際に色だけで見分けることは難しいです。

安山岩(左)と玄武岩(右)

電気石(でんきせき)はほとんどのものは黒色です。「トルマリン」と呼ばれることもありますが、英語では「トーマリン」ないしは「ターマリン」に近い発音です。

電気石

火山から噴出される穴のいっぱい空いた溶岩の破片のうち、黒っぽい色をしたものをスコリアと呼んでいます。

阿蘇山から噴出されたスコリア

次回は、5「青色の石」コーナーを紹介します。

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2月星空情報③

先日(2月13日夜)の地震、びっくりしましたね。
相模原市内では停電が発生した所がありました。
皆さまは大丈夫でしたか。
博物館は、おかげさまで特に被害はありませんでした。
翌日、プラネタリウムの機器点検をしましたが、こちらも問題なし。
来たるべき投影再開を目指して、機器の調整や投影の研修を続けています。
さて話は変わりますが、北アメリカ大陸に住む先住民は、
年が明けてから2回目に見える満月のことを「スノームーン」と呼んだそうです。
雪が多く降る時期と重なることからそのように名づけられたようです。。
今年(2021年)のその日は、今月27日(土)。
最近は寒さが緩む日も多いですが、夜はまだまだ寒いです。
さすがに雪はない・・・と思いますが、油断はできません。
暖かくして月を見上げてくださいね。

昨年(2020)のスノームーン
(撮影:当館プラネタリウム解説員)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、去年の2月の満月は9日でした。全然日にちが違いますね。
月が形を変えるリズムは約29日。
ですから、毎年毎月同じ日に同じ形の月が見えるわけではありません。
でも、そこがよいのです!
だからこそ、月と地上の花々との、毎年違ったコラボが楽しめるからです。
これからは梅とのコラボになりそうですね。
3月の満月は29日。桜とのコラボに期待大です!

 

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冬と春の交錯

2月22日は日中の気温がぐっと上がり、4月並みとなりました。そんな中、相模川の河原でヤマアカガエルの卵塊(らんかい)を見つけました。

ヤマアカガエルの卵塊

ただし、ヤマアカガエルはもともと1月下旬から2月にかけて最初の産卵をするカエルなので、今回の気温上昇はあまり関係ありません。この卵塊も、産卵から2日程度経っているものと思われます。
近くには冬鳥のカシラダカが群れていました。

カシラダカ

こちらのチョウは暖かさにつられて飛んでいたいたのでしょう。キタテハでしょうか。成虫越冬する種類なので、気温の高い日は飛び回りますが、チョウにとってはまだ寒いのか、すぐに石の上で日向ぼっこをしていました。

キタテハ

そして、こちらは博物館お隣の樹林地で2月23日の朝に見つけたレンジャク類の群(キレンジャクとヒレンジャクの混群)です。2月19日の記事で、ヤドリギもレンジャクを待っているのでは、ということを書いたのですが、その直後に地域の方から目撃情報が寄せられていました。

ヒレンジャク(左)とキレンジャク(右)

ヤドリギも少し食べていたのですが、今朝は地上でヤブランの果実を食べていました。
冬鳥はこうして群で食物を探しながら移動していき、冬をじっとこらえてきた生きものたちはそろそろと活動を始めています。冬と春が交錯するこの季節は、毎日フィールドから目が離せません。

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「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No48・三月節供)

3月3日は三月節供で、女児の誕生と成長を祝うひな祭りが行われ、女の子が生まれると初節供としてひな人形などが親戚から贈られます。これらの人形は、2月中の縁起の良い日に座敷に飾り、3日を過ぎるとすぐに片付けることが普通でした。

写真は、文化財記録映画第9作「続・相模原の年中行事」制作の際に緑区大島で撮影(平成2年[1990]3月)されたもので、記録用のためモノクロ写真ですが、たくさんの段飾りのひな人形やガラスケースに入った人形が飾られています。

 

人形には、ひし形に切って重ねた菱餅や赤飯・アラレの他にハマグリも供えられ、右手手前に見えています。人形などを贈ってきた家へは、こうした菱餅やハマグリなどをお返しとしました。

 

そして、特に初節供の時には、盛大に親戚や近所の人を招いてお祝いをしました。

また、三月節供のひな人形には移り変わりもありました。次の写真は南区下溝の旧家で昭和10年(1935)に飾られたもので、御殿の中に人形が見えます。昭和初期にはこうした御殿飾りが出てきて、その後、現在のような段飾りが主流となりました。

最後の人形は女の子誕生に伴うのではなく、結婚して初めて三月節供を迎えた際に、お嫁さんの実家から贈られたオクリビナです。これは約50㎝ほどの大きさ(台座含む)で、大正5年(1916)に中央区上溝から同区田名に嫁入りした方のものです。

オクリビナは、ほかに例えば南区当麻や上鶴間からも報告されており、あまり有名ではないものですが博物館で保管している資料から紹介しました。今後とも機会をとらえて館蔵資料の紹介をしていきたいと思います。

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色々な石展③ 「白色の石」コーナー

閉会した開館25周年企画「色々な石展」について、今回は、3「白色の石」コーナーを紹介します。

前回までの記事はこちらから。
1「色々な石」コーナー
2「透明な石」コーナー

3「白色の石」コーナーの展示の様子です。

「白色の石」コーナー

「白色の石」コーナー

「白色の石」コーナー

石英(せきえい)や長石(ちょうせき)のなかまは多くの岩石に含まれています。特に長石のなかまはほとんどの岩石に含まれています。石英のうち、きれいななものが水晶と呼ばれています。

石英

長石のなかま

オパールやヒスイはほとんどのものは白色です。

オパール

ヒスイ

火山から噴出される穴のいっぱい空いた溶岩の破片のうち、白っぽい色をしたものを軽石(かるいし)と呼んでいます。

軽石

石灰岩(せっかいがん)と大理石(だいりせき)は炭酸カルシウムでできています。石灰岩が地下深くで高い熱や圧力を受けてできたものが大理石です。

大理石と石灰岩

次回は、4「黒色の石」コーナーを紹介します。

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展示室のちょっと珍しい風景

常設展示「人と自然のかかわり」のコーナーにて

この写真、今日の常設展示室(自然・歴史展示室)の一角の風景ですが、ちょっと不思議な感じですね。
段丘崖のジオラマの前に立つドレス姿の女性、はく製の並んだ展示ケースの前でカメラを操作する男性。

実はこれ、東京音楽大学の学生の方が、相模原市文化振興PR動画を制作している風景で、市内の文化施設を回って、バイオリンを演奏しているところを撮影しているのだそうです。
博物館は残念ながらまだ休館が続いていますが、こういった形で施設が紹介されるのは大変有難いことです。
一体どんな映像が出来上がるのか楽しみですね。 (2021.2.20.記)

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エナガは巣作り真っ最中

2月19日、緑区のある緑地で調査を行っていると、エナガが目の前に飛んできました。口に何かを加えています。

コケ類をくわえたエナガ

これは、巣材です。樹皮などに着いていたコケ類などを運んでいます。エナガはほかの野鳥に比べて繁殖期が早く始まります。そして、小さな体のわりに大きめの巣(ソフトボール大の楕円形の巣)を作ります。飛んでいく先を見ていたら、木の股になったところに巣を作っていました。

巣材を積み上げている途中の巣

ちょうど半分ほど積み上がったくらいです。
邪魔をしてはいけないので、すぐに立ち去って別の場所で調査をしていると、またさっきのエナガが頭の上に飛んできました。今度は蛾の繭(まゆ)でしょうか。枝先の綿状のものを引っ張っています。

繭のようなものを引っ張っています

繭の繊維は外装のコケ類などをつなぎとめる重要な巣材なので、よほど欲しかったのでしょう。人間におかまいなしに、夢中で引っ張ります。小さい体(10グラムほどしかありません)ながら体重をかけています。

体重をかけています

なんとかちぎれそうです

なんとかちぎり取って、すぐに巣の方へ飛んでいきました。
これからしばらく、大忙しの子育て期間に入ります。がんばれ!と心の中で応援しました。

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