エナガは巣作り真っ最中

2月19日、緑区のある緑地で調査を行っていると、エナガが目の前に飛んできました。口に何かを加えています。

コケ類をくわえたエナガ

これは、巣材です。樹皮などに着いていたコケ類などを運んでいます。エナガはほかの野鳥に比べて繁殖期が早く始まります。そして、小さな体のわりに大きめの巣(ソフトボール大の楕円形の巣)を作ります。飛んでいく先を見ていたら、木の股になったところに巣を作っていました。

巣材を積み上げている途中の巣

ちょうど半分ほど積み上がったくらいです。
邪魔をしてはいけないので、すぐに立ち去って別の場所で調査をしていると、またさっきのエナガが頭の上に飛んできました。今度は蛾の繭(まゆ)でしょうか。枝先の綿状のものを引っ張っています。

繭のようなものを引っ張っています

繭の繊維は外装のコケ類などをつなぎとめる重要な巣材なので、よほど欲しかったのでしょう。人間におかまいなしに、夢中で引っ張ります。小さい体(10グラムほどしかありません)ながら体重をかけています。

体重をかけています

なんとかちぎれそうです

なんとかちぎり取って、すぐに巣の方へ飛んでいきました。
これからしばらく、大忙しの子育て期間に入ります。がんばれ!と心の中で応援しました。

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樹名板の裏のクモ

博物館敷地内にあるクマノミズキの樹名板


樹木の名前を表示した「樹名板」。冬にはこれをめくって裏側を見るのがちょっとした楽しみになります。

樹名板をめくってみたところ。白いもやもやがついています。


一面についている白いものは越冬中のクモが紡ぎだした糸。中にいるのは大抵フクログモの仲間やアリグモなどです。

薄いシートの下に隠れているものもいます


薄いシートの下に潜んでいるのはエビグモの仲間。

キンイロエビグモの幼体


これはキンイロエビグモの幼体。暖かい日に樹木の表面で活動しています。
越冬といってもずっと隠れているというわけではないようです。

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ヤドリギも待っています!

博物館お隣の樹林地にはエノキが多くあります。その1本に、こんなこんもりとした植物が取り付いています。

ヤドリギは今が果実の熟す季節

ヤドリギです。「宿り木」と漢字があてられるとおり、寄生植物です(生物名に「やどり」と付く場合はたいてい寄生生物です)。ただし、ヤドリギは宿主(しゅくしゅ)であるケヤキやエノキの枝に根を食いこませますが、宿主から奪った水分や養分だけで成長するわけではなく、自ら光合成も行います。そのため、半寄生植物と呼ばれています。
さて、このヤドリギは今が果実の熟す季節です。黄金色に光る果実がたわわに実っています。

ヤドリギの果実

ヤドリギの果肉は強い粘性を持っていて、潰すとねっとりと糸を引きます。そのためか、こんなにたくさんの果実をつけるわりに、ある野鳥以外にはあまり好まれません。その野鳥とは、レンジャク類(ヒレンジャクとキレンジャク)です。独特の美しい色合いと冠羽(かんう)がオシャレな鳥です。

ヒレンジャク(昨年、市内緑区で撮影)

レンジャク類はヤドリギの果実が大好物で、ヤドリギを食べると、フンもこうして糸を引きます。そうしてフンと一緒に排泄された種子が別の枝に張り付き、そこで芽生えるというわけです。

フンをするヒレンジャク(昨年、神奈川県南部で撮影)

レンジャク類は冬鳥として日本に渡来しますが、その数は年によって大きく増減します。北方の食物が少なくて枯渇(こかつ)すると南下してきますが、ほとんど姿の見られない年もあります。今年はすでに神奈川県内でも観察されているので、相模原市内ではいつ見られるか、心待ちにしています。ただ、市内ではヤドリギがまとまって生えている場所があまり多くありません。周辺地域でヤドリギを食べつくして、他の果実(例えばヤブランやピラカンサなど)をしかたなく?食べるころ、市内でも見られます。3枚目の写真も、昨年の3月に相模川沿いで見られたヒレンジャクです。
博物館周辺のヤドリギもきっと、仲間を増やすチャンスとなるレンジャク類の飛来を心待ちにしているはずです。

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春を待つシロカネイソウロウグモ

立春を過ぎたのを見計らったかのように、2月だというのに時々暖かい日があります。
この日(2月6日)もそういう日で、草木の間をよーく見ると、クモの糸が張り渡されているのがかすかに見えます。おそらく徘徊性の種が移動した後でしょう。
網を張っているものもいます。

オニグモの仲間(幼体)

ジャノヒゲの間の低いところに、何かの幼体がいます。オニグモの仲間ですが、種はわかりません。

アオキの葉陰に簡易な網を張って潜んでいるクモ

そして、アオキの葉陰には特徴的な形のクモが…

シロカネイソウロウグモ

シロカネイソウロウグモです。まだ成体ではないようですが、十分な大きさ(体長2mm弱)です。普通はジョロウグモやクサグモ等の網に居候して、獲物をかすめ取って暮らしているのですが、冬に宿主になる種はいません。自分で張った網には、おそらく餌捕獲能力はないでしょう。鳥などに狙われる危険もあるでしょうに、一体、何をしているのでしょう。
実は、私自身シロカネイソウロウグモが成体直前の大きさで越冬していることも、こうして温かい日に活動している事も知りませんでした。図鑑などを調べても書いてありません。
こういった意外に身近な種の生態は意外にわかっていないものです。冬とはいえじっくり観察していると、意外な発見があります。

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色々な石展② 「透明な石」コーナー

閉会した開館25周年企画「色々な石展」について、今回は、2「透明な石」コーナーを紹介します。

前回の記事はこちら

2「透明な石」コーナーでは、天然の鉱物以外にも、人工水晶や博物館で育成したミョウバンの結晶も展示しました。

「透明な石」コーナー

「透明な石」

「透明な石」

透明な石の代表はやはり水晶でしょうか。水晶は鉱物学的には石英(せきえい)という名前です。石英のうち透明度の高いものや、きれいな形をしたものを水晶と呼んでいます。人工水晶は工業製品に利用されています。

左:天然の水晶、右:人工水晶

相模川水系でも水晶が見られます。ただし、爪楊枝(つまようじ)ぐらいのとても小さなものです。

相模川水系で見られる水晶。一緒に写っているシャープペンシルと大きさを比べてみてください。

蛍石(ほたるいし)は緑色紫色黄色などがありますが、多くのものは透明や白色です。

この火山灰は見た目には透明ではありませんが、顕微鏡で見ると透明な火山ガラスをたくさん含んでいることがわかります。火山灰は岩石や鉱物の細かい破片からできています。

鬼界葛原(とずらはら)火山灰。葛原は相模原市緑区にある地名です。

鬼界葛原火山灰の顕微鏡写真。

博物館で育成したミョウバンの結晶です。ミョウバンの結晶を作るのには時間と手間がかかり、まさに育てている感じがします。大きなものは育成するのに1年半近くかかりました。

博物館で育成したミョウバン結晶

次回は、3「白色の石」コーナーを紹介します。

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シリーズ「相模原ふるさといろはかるた」で見る名所紹介㉙ かたくりの里

山肌に 花咲き競う かたくりの里

(やまはだに はなさききそう かたくりのはな)

絵札に描かれるのは「城山かたくりの里」

絵札に描かれる「城山かたくりの里」(緑区川尻)など、相模原市内には一般に公開されているカタクリの名所がいくつかあります。どれも地域で保全・育成活動が行われていて、毎年、桜の咲く季節の少し前あたりに見ごろを迎え、散策におとずれる人の目を楽しませてくれます。
山野草としても人気のあるカタクリですが、野生のカタクリはどのような場所に咲くのでしょうか。それは、少し明るい山林の斜面です。

山林の斜面に咲くカタクリ(自生)

この写真は、神奈川県内では極めて貴重な自生地(相模原市緑区)に咲く様子です。少し標高の高い場所なので、4月下旬に咲きます。
こちらも緑区の沢沿いの山林内にある自生の群落です。斜面が好きな植物で、花はまるで崖下に向かってうつむくように咲きます。

カタクリの花(自生)

カタクリはユリ科の植物で、かつて(といっても相当むかしの江戸時代以前)この鱗茎(りんけい=球根)から片栗粉(かたくりこ)を製造していましたが、現在はジャガイモの馬鈴薯(ばれいしょ)でんぷんから作られます。カタクリは絶滅危惧種なので、今は根を掘り取るなんてとてもできません。

葉も特徴的なカタクリ(自生)

カタクリは春に開花、結実すると、初夏までに葉も枯れてしまいます。そうして地下の鱗茎の状態で冬を越し、春が近づくとゆっくり葉と花径を伸ばします。こうした植物をスプリング・エフェメラル(春のかげろう=はかないもの)と呼びます。
カタクリの自生地には、他にもキクザキイチゲやヤマエンゴサクなどのスプリング・エフェメラルもあり、早春らしい花色を楽しむことができます。

キクザキイチゲ

ヤマエンゴサク

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シリーズ「相模原ふるさといろはかるた」で見る名所紹介 ㉘ く

暗闇に 蛍飛び交う 道保川公園

ホタルというと「きれいな水」というイメージがありますが、それだけがホタルに必要な条件ではありません。
例えばゲンジボタルに必要なのは、幼虫の餌となる巻き貝(主にカワニナを食べる)、土でできた岸辺(潜ってサナギになるために必要)、暗くて飛翔しやすい空間(成虫が発光して配偶行動をするために必要)、などです。こういった複数の条件が揃わないと、ゲンジボタルは生息できません。ホタルと「きれいな水」は、それらを含んだ象徴的なイメージと言えます。

発光するゲンジボタル

道保川公園

道保川公園は、相模横山・相模川特別保全地区の一角にあり、ホタルが観察できる公園として知られています。湧水を水源とする道保川と段丘崖の斜面林を利用して整備された公園で、様々な植物や野鳥の観察にも適しています。

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色々な石展① 「色々な石」コーナー

昨年の12月5日から開催していた開館25周年企画「色々な石展」は、博物館の休館に伴い、そのまま閉会となってしまいました。

そこで、今回から数回にわたって展示の様子をお伝えしたいと思います。全てを紹介することはできませんが、少しでも展示の雰囲気を味わっていただければ幸いです。

今回の企画展は石を色ごとに分けて展示することにより、普段、気がつかなかった石の魅力を発見していただければと思い、企画しました。
展示は次の10のコーナーで構成しました。
1「色々な石」、2「透明な石」、3「白色の石」、4「黒色の石」、5「青色の石」、6「黄色い石」、7「赤色の石」、8「緑色の石」、9「金色の石」、10「この石何色?」

「色々な石展」会場風景

「色々な石展」会場風景

今回は、1「色々な石」コーナーを紹介します。

このコーナーでは、いろいろなメノウ、チャート、そして、相模川の川原の石を展示し、そんなに珍しくない石でも、カラフルであることを紹介しました。

メノウとチャートはどちらも二酸化珪素(にさんかけいそ)を主成分とする石です。でき方や含まれている粒子に違いがあります。

メノウの綺麗なものは装飾品として利用されていますが、多くのものは地味な色合いです。

メノウ

この写真のメノウは宝飾品として利用できそうです。

珪化木(けいかぼく)は木の幹などにメノウの成分が染み込んでできた木の化石です。

珪化木

チャートは神奈川県内ではほとんど見られませんが、日本では珍しくない岩石です。この辺りでは奥多摩地域に広く分布しています。

チャート

相模川の川原の石もよく見ると意外とカラフルです。

相模川の川原の石

相模川の川原の石

相模川の川原でもメノウは見られます。親指くらいの大きさのものはたまに見かけますが、下の写真のように握りこぶしくらいの大きさのものは滅多にお目にかかれません。

白い部分がメノウです。握りこぶしくらいの大きさです。

次回は、2「透明な石」コーナーを紹介します。

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「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No47・藁仕事)

 節分や初午、職員ブログNo.37で紹介したヨウカゾウが終了すると、2月には特に目立った行事はなく、農業でも麦踏みなどがある程度で農閑期に当たります。

 冬場の主な作業は、これも職員ブログNo.34で触れた山仕事とともに、特に縄ないなどの藁仕事がありました。

 かつての農業や生活では縄をはじめ、俵や養蚕に使用するものなど、さまざまな藁製品が必要で、それらはほとんど自分の家で作ラれていました。そのため、この頃にはどの家でも藁を叩く音がして、暇があると藁仕事をしているような感じだったと言います。

 今回取り上げる写真は、昭和62年(1987)12月に南区下溝で、何人かの方に集まっていただいて各種の藁細工をした際の撮影です。

 最初の写真は、藁すぐりと呼ばれる道具に藁束を差し込み、引き抜いて藁の茎(くき)を被うハカマを取り除いているところで、二枚目ではハカマを取り除いた藁を叩いて柔らかくしています。藁細工にはこうした用意が必要でした。

 

 藁細工の基本は縄ないで、使われる作業によって縄にもいくつかの種類がありました。両手を広げた長さを一尋(ヒトヒロ)として、それが二〇尋でイチボ、二〇ボが一把(イチワ)で、一人が一日で一把なうのが一人前とされていました。また、俵は一日で一〇俵編みました。

 次の写真は、養蚕で使う縄網(なわあみ)を編んでいるところです。ある程度成長した蚕に桑葉を与える時に使うもので、網に桑を乗せると蚕が食べに上がってくるほか、下の食べ残しの葉や枝を取り除きました。縄網は売っているものを買う家もありました。

 

 田畑に行く際に履くための藁草履(ぞうり)なども作られました。写真は、草履の半分の大きさの足半(アシナカ)を作っているところで、踏ん張ったりするのによい履物です。こうした履物は、足の指に縄を引っかけて編んでいきました。

 最後に、藁細工ではありませんが、冬場に屋敷の庭などが寒さで霜が降りてしまい、その後の日光でドロドロにぬかるむのを防ぐために、藁を撒いておくことがありました。写真は昭和60年(1985)1月・南区古淵での撮影で、こうした何気ない写真にもかつての地域の生活の様子をうかがうことができます。

 

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はやぶさ2マンホールが設置されました!

2月12日(金)博物館はいまだ新型コロナウィルスの影響で休館中ですが、午後2時ころから人が集まりはじめました。その目的は・・・博物館前の歩道脇に「はやぶさ2マンホール」が設置されるのを見に来たお客様でした。

博物館前の歩道脇に設置されたはやぶさ2マンホール

はやぶさ2マンホールの設置は、市下水道部の若手メンバーによる「さがみはら下水道PRプロジェクト(SGPP)」が企画した事業で、2つの図柄の異なるマンホールが製作され、JAXAに関連する場所として一つが淵野辺駅南口前に、もう一つが当館入口付近の歩道脇に設置されることになりました。

はやぶさ2マンホール蓋お披露目式 市発表資料

午後2時過ぎにマンホール蓋(ぶた)が到着しました。この日は事前に市役所で完成式典も行われており、到着したマンホールの裏側には、はやぶさ2プロジェクトマネージャー、市長、淵野辺商店会長のサインも入っていました。

マンホールの到着です!

蓋の裏側のサイン…設置されたら見られません

そして、いよいよマンホールが市下水道部の職員により設置され、お披露目されました。図柄はJAXAのキャラクター「はやツ―くん」と市キャラクター「さがみん」が宇宙遊泳をしている姿が描かれた可愛らしいデザインです。

下水道部職員による設置…実は重量は40キロもります!

設置完了!

集まった市民の皆さんらは、一様にカメラを構え、食い入るように撮影していました。
中には、マンホールマニアの方もいらっしゃったようです。

食い入るように写真撮影

午後2時半過ぎに市長らが訪れ、集まったていただいた方々に下水道部職員よりマンホール設置経過の説明後、記念撮影を行いました。

経過説明…実は蓋だけで下水機能はありません

市長らによる記念撮影…当館館長も入らせていただきました

博物館のそばにお越しの際は、ぜひこのマンホールもご覧いただけると幸いです。
また、3月中旬から当館にてマンホール関連のミニ展示も予定しておりますので、あわせてご覧いただけると幸いです。

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